❏設定❏
・とくになし
❏本文❏
彰人・志歩「あ……」
彰人・志歩:街中でバッタリと出くわす
志歩「えーっと……」
彰人「おい、ゾンビオオカミの話はもういいからな」
志歩「まだ何も言ってないのに」
志歩:先手を打ってきた彰人に苦笑しつつ、ふと小首をかしげる
志歩「今日は、こはねや白石さんとは一緒じゃないの?」
彰人「まあな、つーか、別にいつも一緒にいるわけじゃねえよ」
志歩「それはそうだろうけど、一緒にいるイメージが強いから」
彰人「確かに、お前と会う時はいつもあいつらと一緒にいる気がするな」
志歩「まあ、お互いにこはねや白石さんとの関わりがあるし、逆に言えば、あの二人と一緒じゃないと会うキッカケもないから不思議ではないけどね」
彰人「だな」
彰人・志歩:自然と会話がはずんでしまい、無意識に微笑みを浮かべる
志歩(文化祭の時は見た目によらず結構怖がりなんだって思ったけど、今回は見た目によらず普通に話しやすいなって感じがして、会うたびに意外に思ってる気がするな)
彰人「おい、なんか変なこと考えてねえか?」
彰人:話の途中で黙り込み何事かを考えている様子の志歩を見て、怪訝な表情を浮かべて問いかける
志歩「そうかも。でも、その話はさっき止められたけど、しても大丈夫なの?」
彰人「は? ……って、まさか文化祭の時のことか?」
志歩「うん」
彰人「……」
彰人:結局その話が出てくるのかよと思いながら、じとりと志歩を睨みつける
志歩:ふっと微笑みを浮かべる
志歩「大丈夫、確かに文化祭の時のことも考えてたけど、今回は見た目によらず普通に話しやすいなって思っただけだから」
彰人「見た目によらずは余計だ」
志歩:納得がいかない様子の彰人を尻目に、彰人が持っていた大きめの袋に視線を移すと、そのまま袋の中身に目を奪われる
志歩「……ねえ、今気がついたけど、まさか、その手に持ってるのって……」
彰人「ん? ああ、これか。これは、冬弥……じゃなくて、オレの相棒がクレーンゲームで取ってきたぬいぐるみだ……って、言っておくが、オレの趣味じゃねえぞ。絵名……じゃなくて、姉貴にやるために持って帰ってるだけだ」
彰人:二人の名前を出しても伝わらないだろうと思い、うっかりと名前を出してしまうたびに発言を修正していきながら言い訳をする
志歩「そ、そう、なんだ……」
彰人「……?」
志歩「……」
志歩(今日発売したばかりの、フェニーくんのアミューズメント限定のぬいぐるみ……か、かわいい……)
彰人「……」
彰人:何かを察したような表情を浮かべると、にやりと口角を上げる
彰人「見た目によらず、結構かわいいもの好きなんだな」
志歩「……っ! そ、そんなんじゃ……」
彰人:志歩の言葉を途中で遮りながら、手に持っていたぬいぐるみをズイッと差し出す
志歩「……!」
志歩:とっさに受け取ってしまうと同時に、驚いた表情を浮かべる
彰人「お前にやる」
志歩「え? でも、お姉さんにあげるものなんじゃ……」
彰人「別にそういうわけじゃねえよ。家に持って帰れもしねえくせに、冬弥がゲーセンの景品をバンバン取ってきちまうから、オレ経由で絵名にやるのが習慣になってるってだけで、絶対に絵名にやってくれって頼まれたわけじゃねえからな。それに、絵名はかわいいものは嫌いじゃねえだろうが、自撮り目的でもらってるみてえなとこあって、特別このぬいぐるみが欲しいってわけじゃねえだろうから、遠慮しなくていいぞ」
志歩「そ、それなら……ありがたく、もらっとく……」
志歩:普段は人に見せないほっこりとした笑顔を浮かべながら、無意識にぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる
彰人「おう。つっても、オレが取ってきたわけじゃねえから、感謝するなら冬弥にな」
志歩「うん、伝えておいてくれる? ありがとうって……」
彰人「ああ、それじゃまたな」
彰人:笑顔で挨拶をすると、その場を立ち去ろうとする
志歩「あ、ちょっと待って」
彰人「……?」
志歩「それでも、ありがとう……」
彰人「……」
彰人:一瞬きょとんとするも、すぐに笑顔を浮かべる
彰人「おう」
志歩「それじゃ、またね」
彰人・志歩:軽く挨拶を交わすと、別方向に向かって歩きだす
彰人「……」
志歩「……」
彰人・志歩:別方向に向かって歩きながら、今の出来事を思い返している
彰人(見た目によらないのは、一体どっちなんだか……)
志歩(今のは、結構見た目どおりだったかも……)
~終~