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    hanamizukicandy

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    hanamizukicandy

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    自分の性癖にしか配慮してません。流血表現あり

    べったりと広がる赤が、橙真の受けた仕打ちを物語っている。
    ぐったり床に倒れ込んだ橙真を囲んでいるのは3人のマナマナだった。それぞれカードを掲げて、魔法で生み出した風の刃で橙真を傷つけては、笑っている。
    「所詮餌の癖に、蒼き狼の裏切りに協力するなんてなぁ!」
    「お前のせいで魔法界は大損害だ!蒼き狼を返せ!」
    「お前があいつをプリマジに誘ったって裏は取れてるんだぞ!」
    「……っ、ぐぅっ」
    橙真が気を失わないように、長く痛めつけられるようにわざと傷を浅くしているのだろう。脚の腱だけ傷が深いのは、逃げられないようにしたからだろうか。橙真は逃げ場もなく、風の刃を受けて傷ついていく。
    その様子を、俺はただ呆然と見つめていた。

    俺1人が裏切り者と罵られ、傷つけられるのならまだ良かった。俺は強い魔力を持ってるから、いくら傷つけられたところで治癒魔法を使えば良いだけだ。
    でも、橙真は違う。人間の傷は、そう簡単には治らない。それに、確かに橙真は俺をプリマジに誘ったけど、元はと言えば俺が河原で橙真とプリマジがしたかったと告げたせいだ。橙真は悪いことなんて、何もしてない。
    何もしてないのに。
    (蒼き狼の裏切りに手を貸した、危険なチュッピとして扱われている)
    これだけは、と身体の下に回されていた橙真の手のひら。それが引きずり出され、切り裂かれた瞬間、心の中に暗くて鈍い何かが広がっていくのを感じた。


    「マナマナ」
    カードを手に取り、魔法を呟く。その瞬間膨大な魔力が溢れ、相手のマナマナたちは一気に後方へ吹き飛んだ。
    「てめぇ……蒼き狼か!」
    「この裏切り者!お前のせいで魔法界が「うるさいよ」」
    相手は何かまくし立ててるようだった。でも、そんな言葉は俺には届かない。大切なものを踏みにじられた憎しみは、そう簡単に消えやしない。
    「橙真に なに してんの?」
    瞬間カードから魔法の縄が飛びてて、マナマナの方へ向かっていく。相手も慌ててて防御魔法を発動させているが、たった3人ごときに負ける魔法使いに二つ名が付けられるわけが無い。縄は難なく防御を突破し、3人をその場に縛り付けた。
    「ねえ 橙真に なにしたの」
    縛り付けられた3人は、まだ暴れたいのかギャンギャン泣きわめいている。まるで犬のようだと、どこか冷めた目でそれを見つめていた。
    「う……うるさい!魔法界を脅かしたんだから少しぐらい仕置したっていいじゃねえか!」
    「所詮チュッピだろ!」
    「裏切り者のお前らになんて屈しないからな!」
    「……そっか」
    必死に拘束を解こうとする3人を横目に、魔法のカードをかざす。今から呪文を唱えれば、風の魔法がこいつらを切り裂いていくだろう。橙真が受けた仕打ちと、同じように。
    人間体のままで魔法を使うのは、とても痛いし、苦しい。3人の縄を維持するだけでも身体が割れそうなほど痛む。でも、そんなこと気にしてる余裕もなかった。だって橙真はもっと痛かったはずなんだから。
    俺の様子に気づいたんだろう。3人は一気に顔を青ざめる。だけど、今更そんな表情をされても止められなかった。
    「マナマ……」
    その時、ぽすんと下腹部に何かが当たった。下を見れば、誰かの頭が目に入る。それは俺の一等大切な人のもので。
    「……ひゅ、い……」
    「とう……ま?」
    魔法で戦っている間に、マナマナたちの間からハイでてきたのだろうを血濡れの服で、橙真は俺を抱きしめていた。
    「おれ、は……だいじょ、ぅぶ、だ、から……」
    「橙真、下がってて」
    「ひゅ……いが、ひとを、き、ずつけるすがた、みたく……ない」
    腰に回る腕の力が、少し強くなる。 腰から伝わる微かな震えが、橙真がありったけの力を振り絞っていることを物語っていた。
    「ひゅー、い……や、め……とま、れ……」
    それだけ呟くと、不意に橙真の身体から力が抜けた。慌てて抱きかかえると、ただ気絶しているだけのようだった。
    「…………」
    橙真を襲っていたマナマナたちをみる。3人とも真っ青な顔で、震えながらこっちを見ていた。
    正直、怒りはおさまらない。橙真を守れなかった自分自身も、こんなやり方をしてきたマナマナたちも、同じ苦しみを味わえばいいのにと思ってしまう。でも、橙真が、ひとを傷つけない俺を望むなら。そう思ってしまった。
    「今すぐ俺たちの前から消えて。二度と橙真に近づかないって約束できたら、許してあげる」
    白い顔でコクコクと頷く3人を見てから、縄を解く。程なくして3人は魔法界へと消えていった。


    「マナマナ」
    魔法のカードから放たれた光が、橙真を優しく包み込んでいく。傷口に光が入り込み、ゆっくりと治していく。
    「橙真、ごめん」
    もっと強くならなきゃいけない。プリマジを守るためにも、橙真を守るためにも。
    「ごめんね」
    一緒に孤独を背負える仲間を知っちゃった俺は、もう一人には戻れない。
    橙真を危険に晒してしまった不甲斐なさと、それでも橙真の手を離せない罪悪感が、俺の心を支配していった。
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