どろりとまとわりつくような暑さが苦々しくて目が覚める。扇風機での送風なんてまったく気休めにもなりはしない。ベタつく肌に二度寝する気にもなれなくてネロは体を起こした。
立てた片膝に頬を預けて、覚醒と微睡を行ったり来たりしながら、ふと、昼日中の光景が頭をよぎった。
ちいさな口にそっと迎えられる氷のかけら。どこか目の眩むような既視感。
だけど――いいな、と思った。あんなふうに、食べられたい。そうやって、あんな綺麗なだけのかけらよりよっぽど自分の方が、あの人の血肉になれるのになぁ、なんて。
そんな馬鹿な夢を見た。
「おいこら、ネロ。勉強しにきたんだろう」
「いや〜机、気持ちよくて」
冷房で冷やされた図書室の机は、炎天下で火照った頬に気持ちよくて、まだ朝には早い時間から目が覚めたのもあって、うっかりそのまま微睡んでしまったようだった。
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