Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    @t_utumiiiii

    @t_utumiiiii

    ・オタクの二次
    ・文章の無断転載・引用・無許可の翻訳を禁じています。
    ・Don't use, repost or translate my Fanfiction Novel without my permission. If you do so, I ask for payment.

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🍰 🎈 🎁 🍮
    POIPOI 127

    @t_utumiiiii

    ☆quiet follow

    ※謎時空探偵パロ(1990年代を想定)
    Mr.ミステリーが男やもめのレオ・ベイカーの依頼を受けて失踪した娘の行方を探す二次妄想です(還…パロ)

    リサの行方を調査するMr.ミステリーがリサの実母からの証言を聞く為、フレディ・ライリー弁護士事務所を訪れる回です。

    7 現状の容疑者の一人でもあるレオの元妻・マーシャに話を聞くため、Mr.ミステリーが照会情報を元に彼女の現住所(隣の州だ)の電話番号に掛けてみたところ、誰かしらが電話口に出はしたのだが、名乗りもしない。
     沈黙に耐えかねる、というよりはこのまま黙り込んでいたずら電話とされても困るという心地から、Mr.ミステリーが「こちら、マーシャ・レミントンさんのお電話で間違いないですか」と当たり障りのない文句を唱えてみると、聞き良い程度にハリのある男の声が、しかし不躾な調子で「誰だ?」と言う。
     問われてしまっては仕方がない。Mr.ミステリーが渋々、「……こちらMr.ミステリーの探偵事務所」と続けるや否や、「しつこくかけてくるようであれば、通報を検討する」という旨を早口に告げられた後、にべもなく電話を切られた。向こうは受話器を叩きつけたに違いなく、ガチャン!と轟くような終話音に、Mr.ミステリーは顔を顰める。
     とはいえ、探偵業に対して協力的な態度を取るものばかりではない(むしろ、探偵に進んで協力するような者は相当のゴシップ中毒か、そうでなくとも“物好き”の区分に入る)、取り付く島もない態度を取られることは彼にとって何も珍しいことではなかった。そんな彼が顔を顰めたのはむしろ、自分の名乗りの方だ。もう少しまともな名前にするべきだった。夜中にこんなふざけた名を名乗られれば、にべもなく電話を切るだろう。


     彼が、マーシャの再婚相手であるフレディ・ライリーの事務所にまで向かったのには、一種の焦りも働いていた。
     用件も聞かずにべもなく電話を切るような、言ってしまえば冷徹なタイプで、しかも法曹関係となると、Mr.ミステリーのように後ろ暗い“本業”を持つものとしては、できる限り距離を置いておきたい相手ではある。しかし、レオの依頼を巡る状況は、早くも詰みに入りつつあった。
     警察の伝手から提供されるデータベースによると、「リサ・ベイカー」について検索したところで、事件なり事故なりの芳しい結果を得られなかったのだ。しかも、肝心のレオ自身の記憶が曖昧なことこの上ない。状況は、その他の関係者の証言を集めるためならば、多少の労力は辞さない段階である。

     青地のインバネスコートに鹿撃ち帽、片眼鏡という「いかにも」な出で立ちで事務所に現れたMr.ミステリーを前に、フレディ・ライリーは表情を引き攣らせもしなかった。いくらか鈍い性質か、或いは流石の「仕事柄」もあり、多少のことには動じないという事だろう。
     見たところ誠実そうな――前歯が覗いている分整いすぎない容姿が、かえってその「誠実らしさ」を引き立てている――その男は、感じの良い程度の笑顔を口元に「ナワーブ・サベターさんですね」と言う。それは傭兵としてのMr.ミステリーの名前である。Mr.ミステリーは「そうだ」と首肯した。
    「興信所ビジネスの拡大に当たり、専門弁護士を雇いたいとのことでしたね?」
     Mr.ミステリーがフレディ・ライリー弁護士事務所の問い合わせフォームから送ったアポイントメントの内容を確かめるライリーに、Mr.ミステリーは眉一つ動かさず、視界に入った羽毛を払う程度に中空で手を払って言葉を遮ると、改めて用件を伝えた。
    「レオ……いや、リサ・ベイカーの名前に聞き覚えはあるか。マーシャ・ベイカーの実子だ。……こっちも仕事でな、娘の行方を探している。」
     ライリーの顔が露骨に歪むのを察したMr.ミステリーは、すかさず――この手の人間に会話の主導権を握られてしまうと、頭を撃ち抜きでもしないと黙りはしないだろう。しかし、戦場ではない場所で問題なく通る穏健な手立てを考えていれば、その内に追い出されるに違いない――いささか唐突の感があるほどの強い語調で、「俺は、あんたたちの暮らしをどうこうしたいわけではない!」と、はっきりと主張をした。
    「……ただ、もし知っているのならば、レオの娘がいなくなったのはいつか、その行き先に心当たりはないかを知りたいだけだ……おたくで引き取っていると言うなら、まあ、話が早いんだが」

     フレディ・ライリーはMr.ミステリーからの質問に対して、何度か抵抗を試みた――例えば、脅すように声を荒らげたり、通報を仄めかしてみたり(しかし、なぜか電話線が切れており、これは上手く行かなかった。Mr.ミステリーも流石に前準備はしておいたということだ。)した。
     しかし、どうあっても、依頼人のソファにしっかり腰を下ろし、膝を肩幅に広げてどっかりと座って、応か否か、とにかく答えを得るまでは動く気のないことが目にも明らかな依頼人ナワーブ、もとい、Mr.ミステリーを退かしようがないことを悟ると、ライリーは苛立たしげにメガネのブリッジを押し上げ、「知ったことか」と吐き捨てた。
    「あの後は、私達も大変だったんだ。顔も知らないやつらが、略奪だなんだのと騒ぎ立てる始末で……」
    「いや、そこに興味はないから安心してくれていい。ただ自分の娘のことで、あんたの奥さんは、何か言ってきたりしなかったのか」
     Mr.ミステリーが顔色一つ変えず、まさしく能面のような様子のまま――アジア系の顔立ちの彼は、ヨーロッパ系に多い堀の深い顔立ちの中に居並ぶといっそう、「表情が読めない」と評されるところだが――話題を変えようとする様を、ライリーはかえって警戒するように、分厚い眼鏡の奥からいたって鋭く睨んだ後、「気にかけてはいたようだ」と、思いの他率直に、彼が知っていることを口にすることにした。探偵業が何だと言っていたが、得体が知れないこの手の人間には、下手に証言に細工をして再三確認を取られるよりは、さっさと知っていることを洗いざらい口にしてやったほうが、話が早いだろうと踏んだのである。

    「彼女は、私と一緒になってくれると同意してくれた後にも、あの男――間抜けなレオに連絡していたよ。リサの面倒をちゃんと見ているかと言ってね。彼女がそうしたいというなら、俺はレオの娘ぐらい養うつもりだったさ。だが……」
    「彼女の方が嫌がったんだ」と続けながら、ライリーは事務所に備えているコーヒーメーカーに視線をやるものの、コーヒーを入れるほどの長話にもならないだろうと思い直し、腰は上げずにそのまま続けた。
    「あの子はパパっ子だから、私の都合で引き離すのは可哀想だと……無論、裁判所での離婚調停を経ずに、言ってしまえば駆け落ちをして、親権をめぐっての裁判を起こされたら面倒になるだろうという思慮もあったんだろう」
     我が妻の思慮を思い、やや遠いところを見るライリーの顔色を窺うでもなく、Mr.ミステリーは「連絡というのは、最近まで?」とさらに問いかける。およそ人の心情というものに気を払わない様子のビジネスライクなその態度に、ライリーはただでさえ渋々話を受けているところ、一層気を悪くした風に眉間に薄いシワを寄せつつ「いや、」と、これもまた端的に返した。
    「しばらくごたごたと引っ越しを繰り返していた頃だからな、どれぐらい前になるだろうか。ここに越してから、は、もう七年になるから……」
     指を折って数えていたライリーはそこで、我が事ながらに驚くようにやや目を瞠ってから、自嘲めいた笑みを浮かべると、「14年前のことだ」と言った。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    @t_utumiiiii

    DOODLE弁護士の衣装が出ない話(探偵と弁護士) ※荘園設定に対する好き勝手な捏造
    No hatred, no emotion, no frolic, nothing.(探偵と弁護士) 行方不明となった依頼人の娘を探すため、その痕跡を追って――また、ある日を境にそれ以前の記憶を失った探偵が、過去に小説家として活動する際用いていたらしいペンネーム宛に届いた招待状に誘われたこともあり――その荘園へと到達したきり、フロアから出られなくなってしまった探偵は、どこからが夢境なのか境の判然としないままに、腹も空かず、眠気もなく、催しもしない、長い長い時間を、過去の参加者の日記――書き手によって言い分や場面の描写に食い違いがあり、それを単純に並べたところで、真実というひとつの一枚絵を描けるようには、到底思えないが――を、眺めるように読み進めている内に知った一人の先駆者の存在、つまり、ここで行われていた「ゲーム」が全て終わったあと、廃墟と化したこの荘園に残されたアイデンティティの痕跡からインスピレーションを得たと思われる芸術家(荘園の中に残されたサインによると、その名は「アーノルド・クレイバーグ」)に倣って、彼はいつしか、自らの内なるインスピレーションを捉え、それを発散させることに熱中し始めた(あまり現実的ではない時間感覚に陥っているだけに留まらず、悪魔的な事故のような偶然によって倒れた扉の向こうの板か何かによって、物理的にここに閉じ込められてもいる彼には最早、自分の内側に向かって手がかりを探ることしかできないという、かなり現実的な都合もそこにはあった。)。
    2791

    recommended works

    @t_utumiiiii

    DOODLE #不穏なお題30日チャレンジ 1(2).「お肉」(傭オフェ)
    ※あんまり気持ちよくない描写
    (傭オフェ) ウィリアム・ウェッブ・エリスは、同じく試合の招待客であるナワーブと共に、荘園の屋敷で試合開始の案内を待っていた。
     ここ数日の間、窓の外はいかにも12月らしい有様で吹雪いており、「試合が終わるまでの間、ここからは誰も出られない」という制約がなかろうが、とても外に出られる天候ではない。空は雪雲によって分厚く遮られ、薄暗い屋敷の中は昼間から薄暗く、日記を書くには蝋燭を灯かなければいけないほどだった。しかも、室内の空気は、窓を締め切っていても吐く息が白く染まる程に冷やされているため、招待客(サバイバー)自ら薪木を入れることのできるストーブのある台所に集まって寝泊まりをするようになっていた。
     果たして荘園主は、やがて行われるべき「試合」のことを――彼がウィリアムを招待し、ウィリアムが起死回生を掛けて挑む筈の試合のことを、覚えているのだろうか? という不安を、ウィリアムは、敢えてはっきりと口にしたことはない。(言ったところで仕方がない)と彼は鷹揚に振る舞うフリをするが、実のところ、その不安を口に出して、現実を改めて認識することが恐ろしいのだ。野人の“失踪”による欠員は速やかに補填されたにも関わらず、新しく誰かがここを訪れる気配もないどころか、屋敷に招かれたときには(姿は見えないのだが)使用人がやっていたのだろう館内のあらゆること――食事の提供や清掃、各部屋に暖気を行き渡らせる仕事等――の一切が滞り、屋敷からは、人の滞在しているらしい気配がまるで失せていた。
    3412