哀しみのその輪に終止符を僕の好きな人は、格好いい。
これだけが、唯一胸を張って言える真実だった。
目の前で机に突っ伏して寝ているその人を見る。
今、僕は一体どんな顔をしているだろう。
きっと醜く歪んでいるんだろうな、と自嘲した、その呼吸すら夜の闇に溶けた。
「さにー、さにー?ベッドで寝よう?からだ、痛くなっちゃうよー、」
シロップのように甘く、媚びたような自分の声に呆れながら、目の前の大きな体を揺すった。
また、少し痩せた気がする。ちゃんと食べさせなくちゃな。
運のいいことに人並みな筈の僕の料理は、何故かこの人に気に入られている。
教えてくれ、と頼まれたこともあった。
いつもより緊張した様子でされたその頼み事の先には、きっと彼がいるんだなとすぐに察し、凍りつく心を隠して笑顔でいいよ、と言った。
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