前世様ナウシカパローーー魔族は滅ぼせーーー
それは民衆の一致した価値観だ。
どんなに小さくても、鋭い爪を持っていなくても、魔族は人に害をなす。
それに剣を立てることを生業とする自身もまた、同じく魔族は滅ぼすべきとは思っていた。
目の前で眠る、謎の木目の生き物に出会うまでは。
デクの樹と呼ばれる巨木の足元に転がっていたところを見付けたので、リンクはそれをでくと呼ぶことにした。
でくは喋らない。何も食べない。
ただ、日の光を浴びないと萎びるし、感情豊かに身振りで意志疎通をはかろうとする。
魔族なのだろうか。
これもいつかは大きくなり、民衆に牙を剥くのだろうか。そうなったとき、自分はこれに剣を立てることができるのだろうか。
そう思ったが、多分自分は迷いなく剣をふるえることに一抹の寂しさを感じた。民衆の期待に応えること。魔族から人々を守ること。そう運命付けられた自分の性。
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