落花流水満開 落花流水
蒼穹山派で内々に開かれた、ちいさな春遊の宴。此度の定例会議は、ちょうど桃の花が見頃であるならとちょっとした宴の体裁を調えて開催された。
各峰主がそれぞれに数人の弟子を連れてきただけのごくごく穏やかな身内の集まり――であったはず、なのだが。八重に綻んだ桃色が華やかな視界に突如ありえないものが写り込み、その場にいた面々は目を白黒させた。
「――清秋」
一気に静まり返った場の空気を打ち破るように、岳清源の低く深みのある声が響いた。それにのんびりと、周りの空気になど気づいていないかのような様子で沈清秋が応える。
「ああ、掌門師兄。お久しぶりです。――皆さんも、お元気そうで何より」
いつも通り若竹色の衣を怜悧に着こなした男は、ゆったりと扇を広げながら近づいてくる。と、周囲を見回してその視線の先に気がついたのだろう。半歩後ろにぴったりと控えている男へ顎をしゃくった。
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