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    yz9m_

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    イヴァ×デモ

    真っ直ぐ見て。𓈒𓍯


    「彼」と友人になってから月日がどのくらい流れただろうか。未だに「彼」の事は俺にはよく分からないが、ただ、隣にいて心地好い〝玩具〟なのだから。1番お気に入りの〝玩具〟は彼ではあるものの、俺にはまだまだ換えがある。今のお気に入りの遊びは「彼を嫉妬させる事」。絶望と嫉妬に塗れた彼の表情が堪らなく大好きだから。嫉妬させて、俺の事しか考えなくなればいいのに。
    まぁ、ガタが来たら捨てればいい…なんてね。

    ――

    「おやおや、今日はご機嫌だね。何かいい事でもあったのかい、フォニ。」
    「んっとね〜、秘密!」
    「あは、なにそれ、俺拗ねちゃうな〜…。」

    草原でゆったりとひと時を過ごす彼女。頭にある大きく赤いリボンが特徴的な彼女は、俺に心酔してるらしい。その方が玩具として扱い易いのだが。

    「どうしてもって言うなら〜、…ん!」
    「ん?何したらいいの俺。」
    「んも〜っ!見たら分かるでしょ〜!」

    両手をばたばた広げてはぐを求める彼女。最初から分かっていたのだが、少しくらい焦らすのが乙女心とやらをくすぐるのだろう。

    「はいはい、いくらでもしてあげるのに。」
    「んへへ〜、フォニは甘えん坊なんだもーん!」

    たった1度のはぐを満足したのか、顔を赤らめてぴょんぴょんと跳ねる小さな玩具。これだから女は嫌いだ。少し男に優しくされるだけで悦ぶ。ただの馬鹿なのだろうか、いや、馬鹿なのだろう。

    「フォニは小さいね、俺に抱き着かれたら直ぐに潰れちゃいそう。」
    「あ、あたしは小さくない!こんなにも大きいっっ!!」
    「あれぇ、見えないな〜。」

    キョロキョロと探すふりをする俺と身振り手振りで存在証明する小さなリボン。やはりこの玩具も最高に面白くて弄りがいがある。なんといっても、俺に恋煩いしてくれているのが1番有難い。熱病に侵されている方が遊びがいがあるってものだから。

    「ねぇねぇ、これしてよ。」

    背伸びをして顔を俺に近付けてくる玩具。

    「んーと、今度はなにかな?」
    「わ、分かるでしょっ!」
    「……。」

    彼女もこうなってしまったのだろうか。口付け、それを求めてくる俺の1番嫌いな奴に。面白い玩具だったのに、残念で仕方ない。惚れた奴にしか俺の唇は奪わせないと誓ったのだから、お前みたいな醜女には容易に渡すものか…なんつって。

    「ん〜、それじゃ〜…。」

    口付けはしないが、顔を近付けて遊んでやろう そう思い待ち構える彼女の顔に手を差し伸べた。面倒で仕方ない、愛されていないとわかっていながら求めるなんて とんだ馬鹿だ。

    「ねぇ、イヴァン。」

    その場が一瞬凍りついた。聞き覚えのある、馴染みのある低い声。俺の1番の玩具。

    「えっ、イヴァン、どういうこと?誰こいつ。あたし以外の子とは今日は遊ばないって言ってたよね。」
    「フォニ、落ち着いて。あ〜…。デモン、いつから居たの?」
    「……、最初の方から。」

    フォニの元を離れて彼の元へ行く。その間も彼女はキーキーと甲高い声で何か言っていた。
    素顔を隠したままの登場。彼の顔は見なくても容易く想像がつく。きっと、瞳の中に渦巻くように何かが蠢いているのだろう。
    俺は彼に近づき、手を繋いで彼女に吐き捨てた。

    「ごめん、フォニとはもう今日話せないや。それと、俺が誰にでも口付けする尻軽男だと思うんじゃねぇわ。」

    絶望したかのようにこちらを見つめる1人の女の子。そいつから足早に離れるよう、俺は彼の手をしっかり繋いで飛び去った。
    2人きりになれる所へ。あぁ、でも彼にはバレてしまったのかな。俺が最低な奴だって事を。

    ――

    最初に出会った雨林、寂れた小屋。2人の秘密基地のような所に訪れた。無言の時間が過ぎる。雨音がやけにうるさく感じた。

    「で、デモン…?」
    「なんだよイヴァン。」
    「なんか、その。さっきはごめんね。」

    やけに彼はイラついているようだった。仮面を付けたまま、地面をずっと見つめている。

    「何が?別に、俺が行かなきゃ良かったんだよ。」
    「あんな所見せちゃってごめんね。俺の事、幻滅したでしょ。」
    「別に。」

    淡白な会話。彼の声は好きだが、今の落胆したような声は聞き苦しくて堪らない。全て俺が悪いのだが。

    「でもさ、どうしてあの子に俺が口付けしようとして止めてきたのさ。抱き合って居た時は何も言わなかったのに。」
    「ッ…!それは…気まぐれで…。」

    相変わらずこちらを見ない彼。そんな彼の態度に少々腹が立ったのは秘密。

    「ねぇ、こっち見てよ。なぁっ!」

    勢いよく仮面を外して無理矢理こちらへと顔を向かせる。案の定、瞳の中はぐるぐるとしていた。

    「い、イヴァン……。」

    焦った様子を見せるも、仮面を外された事に抵抗を感じて居ないのか、それに対しては言及してこなかった。目の前の彼の表情には、「嫉妬」「悲しみ」「焦り」のような感情が入り交じった歪な雰囲気を感じさせてきた。

    「俺さ、そのデモンの表情いっちばん大好き。嫉妬した?可愛いね、もっと嫉妬させてあげようか。そうだ、目の前で誰か犯して見せようか?どんな表情になるんだろう。見てみたいなぁ…。」
    「あっ、い、いやだ。俺、俺はっ…!」

    必死で訴えかける彼。玩具の中で1番可愛い、愛おしい。

    「俺……イヴァンが居ないと…生きて行けないから…。俺の隣はイヴァンしか考えられない。イヴァンが俺のモノにならないなら周りの奴らをどうにでもして手に入れてやる。」
    「そうだよね、俺もデモンの事を大事に大事にしてあげる。はぁ、可愛いなァ…。」

    片手で彼の顎を少しあげて、首筋に軽く口付ける。顔を赤くしてキョトンとする彼に、俺は一言。

    「首筋に口付ける意味って分かるかな?まぁ、知らなくて良いけど。いつか…こっちもしてあげる。」

    とんっと彼の柔らかな唇に人差し指を立てる。ここはまだお預け…だなんて。
    その瞬間、彼は俺に近づてきた。そして、唇に柔らかな感触を覚える。

    「あーあ、俺が唇奪っちゃった。あは…、イヴァンは惚れた人にしかしないんでしょ?だから、他人に1番盗られるのいやだから、奪ってやった。」
    「お、お前っ…!はぁ、本当っ…。」

    柄にもなく顔が熱くなる、こんな顔は見せられる訳がない…のにも関わらず、彼はにやにやしながらこちらを見つめていた。
    先程までの気まずい空気は無くなり、ただ二人でくすくすと笑っていた。
    俺はこいつを手放してはいけない だなんて、上から目線だがそんな風に思えた気がした。
    仮面を外しても怒らない、つまりは心を許してくれた…とでも勘違いしてもいいのかな。

    ――
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