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    yz9m_

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    イヴァン×デモン

    崩落




    「あたしとあの子、どっちが大事なのよっ!!!」

    泣きそうになりながら俺に訴えかけてくる面倒な奴。こんなことを言うから俺が彼女の事を嫌いになるのが分からないのだろうか。

    「な、なんだよそれ〜…、2人とも大事なお友達だよ?」
    「嘘言わないでよっ!あたし見たもん。あんな根暗野郎と2人で一緒に居たところ…なんであたしだけしか見ないのよ!!!」
    「はァ…、めんど…。」
    「何が面倒よっ!あんなに好きだって言ってたのに…あれもこれも全て嘘だって言うわけ?!」

    ああ言えばこう言う。誰も彼も俺の愛を欲しがる。みんなみんな俺の外見ばかり、内面を見てくれない。

    「ウザイんだけど、フォニ。」
    「な…、何よ…。」
    「だからウザイってば。お前、俺の彼女か何か?」
    「違うけど…。」

    俺の特別な人でも無いくせに、いちいち文句をつけてくる。ただの玩具なのに、どうしてここまで心酔してくるのだろうか。ただただ愚か としか言い様がない。

    「でしょ?お前は俺の玩具なの。わかる?」
    「お、玩具ってなによ…私の心を弄ぶ事が…?」
    「あぁ!そうだよ面白いだろ!お前ら全員俺の玩具なんだよ。デモンもフォニも名前忘れたけど他の奴らも全員ね。俺の特別なんて居ねぇんだよ。」
    「っ…!!!」

    ぼたぼたと大粒の涙を流して膝から崩れ落ちるように地べたに座り込んだ彼女。ついつい口が滑ってしまい、本心を語ってしまっていたことを後悔する。全て後の祭りなのだが。周りには人の気配など見当たらなく、正直ほっとはしていたが気がかりなのは一つだけある。
    そう、デモン。彼は気配を消してこちらにいつも近付いてくるのだから。もし彼に聞かれていたのなら俺は……。

    「もうっ…イヴァンなんて大っ嫌いっ!死んじゃえ!死ね!!2度とあたしに関わるな!!!」
    「言われなくてもそうするよ醜女。さようなら。あ、そうだ。前にお前から貰ったお揃いのピアス。あまりに不格好だから貰ってすぐ捨てちゃった。ごめんね ♡」
    「っ……!!この屑野郎…。」
    「んは、俺にとっちゃァ褒めの言葉だね。」

    ふと誰かの視線を感じる。誰か とは断定は出来なかったが、間違いなくこの光景を誰かに見られたことになる。別に支障はないが、やはり何か引っかかる。いつもフォニと居る時は、距離が近付きすぎると「彼」が来ていたのに。まさか……なんてね。

    ――

    あの日以来、彼女は俺に近付いて来ることは無かった。別に俺は彼女がもう一度俺の元に帰ってくるのならば、別に俺は喜んで手を広げて受け入れるのだが。
    それと共に、近づいてこなくなった人物がもう1人。その人物とはデモン。いつもなら一日に1回は会話をして、たわいない事で笑っていたのに。数週間も会話をしていない。彼が居ないとなるとやはり落ち着きがなくなる。もし、あの発言を聞かれていたと思うと、背筋が凍るような気がした。
    フォニの前ではあんな風に吐き捨てたものの、実際俺の本心では無いような…そんな気がする。ただの玩具として彼を愛していたのか、はたまた違う意味で愛していたのか。
    わからなくて、苦しくて、ただただ1人で草原を散歩した。誰にも縛られないまま、行く宛ても無いのに辿り着くのはあの日彼と過ごした場所。
    どの景色を見ても、触れても、全て彼と過ごした思い出が蘇る。

    最後に行き着いたのは、初めて出会って彼の話を聞いた寂れた小屋。その中で何か浸りたい気分でいたのだがなにやら先客が居る気配を感じ、くるり と踵を返してその場を離れようとした所。聞き覚えのある声が聞こえてきた。

    「っ…はは。」
    「なんだよまじで〜、デモンってば可愛いの。」

    声のトーンと名前で誰かが分かった。だが、その隣には俺以外の誰かがいる。呼吸が荒くなり、体温が上昇するのがわかる。怒りというか情けなさというか 、言いようのできない複雑な感情に飲み込まれ、俺はその場を去ることが出来なかった。
    いや、まだ手遅れではない。まだ彼が仮面を外していなければ、それはまた大丈夫な証でもある。
    俺は恐る恐る小屋の扉に手を掛けて、その胸糞悪い空間へと足を進めた。

    「っ……!」
    「は…、お前誰だよ。」
    「い…、イヴァ…。」
    「は、あはは〜、雨宿りしようとしたら先客が居たんだね。失敬。どうぞ、その先をお楽しみください。俺はこれにて失礼するよ。」

    あと一歩 という所で唇を重ねていた所を邪魔してしまった。口付けをしようとしていた、 つまりは仮面を外しているということ。あのマッシュに俺は負けたのだ。もう、もう俺は捨てられた。全て俺が悪い、全てのツケが俺に回ってきたのだ。
    遊んでいたからこんな風になってしまった。俺が、俺たち2人の関係を壊してしまった。

    ――

    傘もささずに雨林を歩く。冷たい雨が俺に突き刺さり、身も心も全て冷やしていく。液体は痛くないのに、今日はいつもより痛く感じる。
    愛想を尽かされた、俺は、もう必要とされていない。
    幸せそうな奴らが憎い、壊しちゃおうか。

    ――

    壊しちゃえ( ♡ )

    「そうだ、憂さ晴らしにあそこ行けばいいんだ。」

    るんるん気分で生まれ落ちた捨てられた地へ。ただいま、暗黒竜。

    「あは、ただいま、変わってないなァ…。素敵だね、その嘶き。ほんとに子守唄みたい。」

    育ててくれた身なのに、俺の言うことを親身に聞いてくれる可愛い子たち。俺が気に入らない奴に攻撃してくれる、そんな優しい彼らが大好きだ。

    俺が誰にも愛されないのなら、誰かに愛される予備軍を消してしまった方が気が楽になる。みんなみんな独りになればいいんだ。
    みんなみんな孤立しちゃえ。

    ――



    「暗い空は怖いでしょう?俺が案内してあげる。こっちにおいで。」

    なんつって。優しい優しいイヴァン君が案内してあげる。そして誘おう。光を失う為の場所へ。
    優しく手を引いて、俺は高みの見物をするんだ。誰かが暗黒竜に襲われる様をね。
    昔の俺に成り代わるのは気に食わないが、あいつも俺の事を忘れて乗り換えた先で幸せになればいい。
    機会があれば、お前らのところも壊してあげちゃうから。

    この俺が。

    ――
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