ノスタルジアと、青と愛。 ――怒らせた。その事実が重く心にのしかかって、体の芯が凍ってしまったように冷たい。必死に息を吸い込んだが、みっともなく喉が震えて、自分の不甲斐なさがひしひしと感じられるだけだった。
きっかけは午前のこと。
今日は俗に言うバレンタインデーで、生徒たちは皆多かれ少なかれ浮き足立っていた。楽しそうな彼らにつられて、俺もおどけて「靴箱見たけどスッカラカンやで!張り紙でも貼っとこかな」と言ってみせたりしていたが、正直他人からのチョコなんてどうでもよかった。貰えるとしたら、ただ1人、彼からのそれを期待していた。
同じ教室、友人と談笑する彼のふわふわした笑い声が、やけに鮮明に聞こえる。恋人である彼との関係はあけすけに言いふらしているわけではないので、あまり大っぴらに見せつけるようなことはしないけれど、でも2人仲がいいのは周知の事実だと思う。それはともかく、楽しそうな様子の彼がしている会話が純粋に気になって、それとなく話題に入ると、友人と恋人はどうやらバレンタインデーの話をしていたようで。
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