金木犀とイチョウの葉「ひーらーのーさん」
前を歩くその人を呼ぶと、くるりと振り返る。今朝結った髪が、ぴょこんと揺れた。カメラを構えて、即座に一枚。不意打ちされた彼は、びっくり目を見開いてからじとりと睨みつけて来た。
「何だよ鍵くん。撮るなら撮るって言えよ。つか俺撮ってどうすんだ、紅葉撮るコンテストだろ」
「えー。人物込みで撮っていいって書いてあったし、撮った写真は持ち帰れるし、俺は平野さん撮りたいの!」
何でだよ、とわがままに手を焼くように呟いて、平野もカメラ越しに紅葉を眺めた。
ある秋の晴れた日。勉強の息抜きにと平野を誘って紅葉を見に出掛けた。立ち寄った公園で秋の写真コンテストを行っており、カメラ貸出あり、撮った写真は持ち帰れるとのことで二人も参加を申し込んだ。
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