Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    おーり

    ゲン/千とゲ/黒千と黒千/千、千/黒千が散らかってます。
    地雷踏み防止に冒頭にカプ名(攻のあと/)入れてます。ご注意ください。
    シリーズと一万字超えた長い物はベッターにあります。https://privatter.net/u/XmGW0hCsfzjyBU3

    ※性癖ごった煮なので、パスついてます。
    ※時々、見直して加筆訂正することがあります。
    ※地味に量が多いらしいので検索避け中。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request
    POIPOI 55

    おーり

    ☆quiet follow

    ◇黒千空という原作にいない架空キャラが出てきます。立ち位置は千空の双子弟で黒髪。
    ◆付き合ってませんが千空→黒千空です。

    蜂腰の下で君に囁く 筒状の中央がくびれた半透明のガラスの筒。三角形の器を上下鏡合わせに二つ足したような形状の特徴的な容器の上には砂が溜まっており、下へとさらさら零れ落ちるように降り積もっていていく。その砂がたまる場所の中から双子の弟が拳で叩いて俺を呼んでいた。

    「おい千空! これ、どうすりゃいいんだ? このままじゃ埋まっちまう」

     血相を変えている弟にそんな必死な顔久しぶりに見たな、と妙な感情を覚えた。

    「ぁ? テメー、何でそんなとこにいやがる」
    「知らねぇ! とにかくどうにかしろ」
     
     早く、早くと中からガラスを叩く黒の拳は真っ赤になっていたがガラスは分厚いようで罅一つ入っていない。身一つで閉じ込められている彼が中から自力で出るのは難しそうである。
     どう考えたってこんな現実的でない場所と展開は夢に違いない。だが、夢とはいえ弟が砂に埋まるのを見過ごせない。弟じゃなくてもきっとそうだったに違いないが。

    「落ち着け。砂が落ちてくるところを塞げば砂は落ちてこねぇよ。いわゆるマリオのポーズしてろ」

     片腕をあげる俺を真似て黒が手をあげて見せる。塞いだ拳の隙間からは零れているものの、落下のスピードは格段に下がる。これで時間は稼げる、そう思ったのが安易だった。

    「手ぇ、きちぃ。砂が重い」

     名案だと喜んだ弟の顔色が変わっていく。
     まだたくさん溜まっている砂を一点で支えるのにはなかなか辛いらしい。重力に従って落ちてくる砂をトサカで受けた黒が下を向く。落下高度と砂の量、何のことはない物理学であるが今は彼の頭に受けている力の計算をするのは無駄だ。命に関わらない問題を切り捨てて、より優先順位の高いものを選択する。

    「ちぃったぁ我慢しやがれ。今、どうするか計算を……ぁ?」

     改めて集中しようと顔面に指を立てた俺の前をはらりと紙が横切る。思わず視線で追って読んだ内容に俺はのどが潰れたような汚い声を漏らした。

    「な、な、なんだ? 急に」

     案の定、砂時計の中にいる黒はわけがわからずしどろもどろになっている。足元に落ちた紙の文面を拾いながら目を通す。そうしてふざけた内容が見間違いでないことをしるやいなや、額を抑え、今までついたことないくらいに深く長い溜息を吐いた。

    『砂時計に囚われた人を思う存分褒めちぎらなければ出られない砂時計です。言えなければ相手が砂に埋まります』

     黒を褒める。考えただけで身体がむずむずと痒くなってくる。漆にかぶれたときのような痒さだ。それでいて心臓がドクドクいう。たぎる脈拍に滝のような汗が心臓から噴き出している気さえしてくる。実際流れているのは真っ赤な血液だが。
     正直、口になんて出せない。出したら一週間は恥で寝込める自信がある。無理だ。ゴールデン番組に出る信用出来ないメンタリストの言葉を借りればジーマーでリームー。あんな変な日本語を使う日が来るとは思わなかったが。

    「お、おい。千空」

     どうする、いうか。言ってみたところで現実の黒には届くはずのない思い。
     顎をグッと引いてじっと弟を見る。大丈夫かと聞く代わりに顔を険しくして睨む。そんな俺のきつい表情に怯えたのか、びくんと身体を震わせるとおろおろと狼狽え始めた。きっと砂時計の中で黒は自分が余計なことを言ったのだろうと心当たりを反省しているのだろう。潤んだ双眸の赤が一際大きく見える。
     人の気も知らないで。
     全く無駄の多い生き方をしているやつだとは思っていたが、そんなところでさえ惚れている自分には魅力に感じて仕方がない。
     呆れと躊躇いの混じった息を長く吐きだして俺は新鮮な空気を吸い込む。
     仕方ない。腹を括るしかないか。
     もう一度黒を見ると、まだ目が潤んでいた。こっちは助けてやろうというのにビビってんじゃねぇよ。そう言いたくなる攻撃的な気持ちを抑えて眉をゆっくり下げる。出来るだけやさしい声、やさしい表情。そうでなければ怯えた彼の耳に入らないだろう。

    「いいか、黒。人生で一度しか言わねぇから耳かっぽじって聞きやがれ」

     意を決して口を開くと、俺は普段口から言わないことを吐き出してやる。その熱量と中身に弟の全身が真っ赤に茹っていく。夢の中とは言え無事に助けてやったのだから現実の黒にお礼してもらおう、そんな悪い考えが過った。


    ・砂時計のくびれに「オリフィス」「蜂の腰」「ノズル」って名前があるのを知って面白いなって思ったのと黒千空を砂に埋めてみたかっただけです。
    Tap to full screen .Repost is prohibited

    recommended works