「手を出せ」
唐突にそう言われて、ジークフリートは不思議に思いながらも両手を顔の前に出し、左右とも五指を拡げた。
「こうか?」
ろくに説明も無いまま何かを求めるなど、パーシヴァルにしては珍しい。彼に限って悪さをすることは無いであろうが、どういうつもりなのだろう。
「そうではない。こっちだ」
パーシヴァルは斜め向かいからジークフリートの両手を見遣りつつ、瞳を細めた。その手には何か小さな箱がある。表情は読みにくい。敢えて言えば、冷静そうに澄ました真顔だ。
「それと、片手でいい」
「ほう。なら、こうかな」
左手をパーシヴァルのほうへと差し出す。ここまで言われてようやく、彼はジークフリートの手に何かを施したいのだと言うことに気がついた。彼らしくもなく言葉足らずなその求めの真相を楽しみに思い、ジークフリートは大人しく腕を出したまま静かに待つ。
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