書け/描けイントロクイズこは藍杯の捧げ物ボツ夢ノ咲文化祭。
おれのクラスの出し物は和カフェ。
作務衣風のユニフォームに身を包んだクラスメイトが半分。おれを含めたもう半分は華やかな彩りの袴――女装をして、いそいそと軽食や飲み物を運ぶ。
女装させているのは男だけでむさ苦しいから、少しでも華やかにしたいという理由らしい。アイドル科なだけあって、クラスメイトたちの顔立ちは誰も彼もが良い。女装してもむさ苦しさを感じず、そこら辺の女子に見劣りしない見映えになっている。
仕事の忙しさでHRにほぼ出席できていなかったら、給仕を――それも女装してすることになっていた。
(きわどいメイド服とかじゃないだけいいけどさァ……。
昨年度の飼育当番といい、おれのいない間に決まってるんだろう。
誰か連絡をくれたっていいじゃん……)
と、内心でぶうぶうと不満を垂れる。
(それも仕方ないんだけどさァ。今年もクラスに仲良い人いないし)
『ALKALOID』として忙しく活動している合間に、新学期も始まっていて、新しいクラスに馴染むことなく気が付くと初夏になっていた。
そうして、今に至る。
「はぁ……」
決まってしまったものは仕方ないと思いつつも、人知れず肩を落としておれはため息を吐いた。
「白鳥、一名さま入ったぞー!」
とクラスメイトの声に、おれは諦めて「はァい」と返していそいそとお客のほうへ向かう。
「いらっしゃいま――」
「コッコッコ♪ よう似合ってるやないか」
お客はおれの姿を見ると楽しげに笑う。
ん? その笑い声って――
「ふぎゃん!? ええ、こはくっち!? なんでここに?」
聞き覚えのある独特な笑い声にお客に視線を向けるとそこには、見慣れた桜色の髪。
その桜色は水色のジャケットとタータンチェックのパンツを身に付けている。そして、Yシャツにはおれとお揃いの2学年を示す青のネクタイを締めていた。
――夢ノ咲の制服を纏ったこはくっちが立っていた。
「その制服どうしたの!?」
「制服はひなたはんに借りたんや」
似合ってる?と菫色の瞳が訴えてくる。
それはもうここにスマホがあったら、今すぐにでも撮影したいくらいに似合ってる。
(夢ノ咲の制服を着たこはくっちラブーい!! い、いや! そうじゃなくて……!)
今日の文化祭は非公開日だ。夢ノ咲の生徒ではないこはくっちは入校できないはず。
「でも、今日は入るのに身分証明が必要じゃ……」
こはくっちへその疑問を投げ掛ける。
「それもひなたはんに抜け道教えてもろて」
(ひなた先輩ーーーー!? こはくっちにわるいこと教えないでください!)
おれは何処かにいるひなた先輩へ心のなかで叫んだ。
「けど、わし明日は仕事で行けへんし。学園祭っちいうもんを一度体験してみたかったんよ……」
だめ? とこてんと首をかしげる。
大人っぽいこはくっちが時より見せる子どもみたいな仕草に、おれはときめきで胸を押さえそうになる。
(そんなこと言われたら怒るに怒れない……って怒ってるわけじゃないんだけど。いきなりこんな姿見られて恥ずかしいっていうか。う~~!)
「……い、一名さまご案内しま~す」
「おおきに!」
澄んだ瞳に根負けしたおれはこはくっちを座席に案内した。