おもいいし特殊設定有り!
当たり前のようにシェアハウスしてるラ
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「申し訳ないが、俺の呪いにお前たちを巻き込んでしまったようだ。」
VOXは手に持つ赤い宝石を僕達に見せながら、事情を説明しはじめた。
「俺が鬼になった経緯は長くなるから省くが、この石はその鬼になった際に発生する副産物だ。」
かつて彼がいた日本では悪いものも良いものも、人智及ばぬイキモノのことを神や仏、そして鬼と呼んだという。
「どうやら、俺のことを富や名誉をはこぶ物だと信仰された時期があったようでな。定期的にこうやって勝手に宝石が湧いてくるんだ。」
手に持つ赤い宝石はVOX曰く、ガーネットの原石らしい。テラテラと照明に反射する光が落ち着かなさを冗長させる。
本来ならVOXの周りだけに石が発生するのだが…
luxiemメンバーが、自分の仕事を放って朝からVOXの説明を聞く羽目になったのは、朝起きてすぐ目に飛び込んできた大量の宝石のせいである。
つまり、VOX以外のluxiemメンバーも宝石が発生するようになった。
「この宝石は他人に抱く感情にもよる。
ガーネットが持つ宝石言葉は、「真実」「情熱」「友愛」「繁栄」「実り」。変わらない愛情を誓うという意味だそうだ。」
VOXにピッタリだと全員が思った。
彼は普段の行いからわかるように、luxiemメンバーがやりたいことがあれば率先して協力してくれる。
いつも見守ってくれているような、そんな温かな存在だ。
「だが裏を返せば自分の感情がそのまま相手に伝わりかねない。外出は控えた方が賢明だな。」
顎に手を当てながら僕達を心配そうに見ていたが、相変わらずガーネットは彼のポッケからポコポコと生まれて…?て話に集中できない。というかさっきからポッケから落ちてゴトン!ゴトン!と重たいものが落ちる音がずっと聞こえてる。
「この呪い?っていつまでに終わる?俺来週依頼が何件かあるんだよね」
「俺の経験上でしかアドバイスができないが、持って明後日までだな。…ああ、宝石はお前たちの自由にしてもいいぞ」
そんなこと言われても…
突然の幸運に誰もが何も言えなくなった。
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「ねえ!シュウ!」
朝から大騒ぎになった宝石騒動およびVOXによる説明会がひとまず終わった。
そのあと各自部屋に大量にある宝石をどうにかしようということで、各々部屋に戻ろうとした時だった。
「?ルカどうしたの?」
「俺とシュウの宝石、交換しない?」
彼が手に持っていたのは、蜂蜜を固めたような黄金の輝きを持つ宝石。ルカの太陽のような髪色にぴったりだ。
「…いいけど、僕のやつ黒だよ?」
巾着にしまっていた石を取り出す。つるりと手に馴染む肌触りだが、ルカの持つ宝石よりも輝きは鈍い。
「全然大丈夫だよ!俺、シュウの宝石が好きだ。」
どきりと心が跳ね上がる。このルカという男は何も考えず、自分の好意をストレートに伝えるものだから、時折驚いてしまうのだ。
「…ルカがそういうならいいよ。僕もルカの宝石もらってもいい?」
「もちろん!POGだよ!シュウ!」
雑なPOGを受け取りながら彼の手のひらにある宝石を摘もうとしたその時、
ーポロリ
ルカの顔あたりから煌めく何かが僕に降りかかった。咄嗟に手を差し出して、その光るものを掴み上げる。そこには、朱色のような美しい赤色の宝石があった。
「「え?」」
お互い何が起きたか分からずゆっくりと顔を上げる。そこには顔を真っ赤にしたルカがいた。
「あ、えーっと、急にだったね?!」
大袈裟に身振り手振りをしながら、どこか期待するようにシュウを見つめるルカ。一方シュウは宝石を照明がある方へとかざして色の違いをしばらく分析していた。
「え、あ、うん。ちょっとびっくりしちゃった。すごい綺麗だね。さっきVOXから出てた宝石よりオレンジ?っぽい色が入っててとてもきれい。僕はこっちの石も好きだな。」
ンヘヘと笑った瞬間、またころんころんと宝石がルカから落ちてくる。僕が近寄ると石が出てる…?そう思い、彼にごめん僕のせい?とストレートに聞く。
「…ごめん!シュウの、せいじゃないよ」
「いや、そんな苦しそうな顔してたら流石にわかるよ」
顔を桃色に染め上げて、熱っぽい視線を僕に向けているルカ。
ー…まさか。赤い色って、そういうー
今までの彼の行動を思い出したかったが、今は考える時間が欲しかった。彼の持つ赤い輝きの意味を理解したくなった。
「…宝石、とりあえず黄色の方だけ貰っとくね。」
このまま彼といたら、何かが変わる気がして。
彼の顔を見ずにそそくさと行動を起こす。
地肌の温度のような心地よい関係を変えたくなくて、気づかないふりをした、かったはずなのに。
「待って!」
彼の掌にあった黄色い輝きを素早くとって自分の持つ黒い石を代わりに乗せて、自室にむけて走り出したのだが。
気づいた時には背中に温かい温もりがあった。肩越しに彼の熱と息、そして震えを感じる。
「…俺の赤い宝石、シュウが持ってて欲しい」
僕の背中に額を向けて、まるで懺悔のように伝えたその言葉と共に、彼のタトゥーが入ってて腕が視界に入る。いつもは付けている黒い手袋はなくて、素肌の手のひら。そこに朱色の輝きが静かにあった。
「…意味はシュウが調べて。もし、その意味を分かったら俺のところに来て一緒に答え合わせさせて。」
ーお願い。
いつものようにふざけた笑い声や、冗談を言っている時のルカとは違う真剣な声色。
「…今は俺の顔、見ないで。このまま振り返らず部屋に行ってほしい。」
トンと背中を押された僕はそのまま彼のいう通り部屋の方向へすすむ。振り返ることなんてできなかった。
頭が先ほどのルカの顔でいっぱいになる。
切なくて、僕のことが、
ほしい、って
顔が火を吹くように真っ赤になっているだろう。
誰にも顔を見られたくなくて、袖で口元を覆いながら自室へと足を向けた。
一方残されたルカの顔は苦しいようで切ないようで、
それでも手に入れたくて、ほしくてたまらないナニカの顔をしていた。
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パパラチアサファイア
石言葉 運命的な恋 一途な愛