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    keo_2434_oldguy

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    keo_2434_oldguy

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    ラクシエムでギャグです🧡💛❤️💙💜全員!
    ヴォックスがゴリラになる話🦍
    全年齢向け〜!!!!

    ゴリラにも選ぶ理由がある今日はラクシエムの五人でオフコラボ。ただ先にメンバーだけで集まってミーティングの予定だ。VOXとシュウは今日はスケジュールが空いていたので先にスタジオ入り。僕とミスタ、ルカは他の仕事を終わらせてから合流することになっていた。

    「思いの外早く終わってよかった!」

    元からあったスケジュールが早めに片付け終わり、早々に地下鉄を使ってスタジオに向かう。ふとディスコードを見ると、すでにスタジオ入りしている2人から到着した、という連絡が一時間前ほどに来ていた。
    駅を降りて、もらっていたマップを頼りに現場を目指す。

    ─ここかな?

    地下にあるらしいその場所への階段を降りる。今日は久々のオフコラボだからすごく楽しみだ。リスナーに披露されるのはだいぶ先だろうから、配信でうっかり言ってしまわないか不安だ。

    「Hi〜〜〜シュウ!ヴォックス!」

    階段の終わりにあった重たい扉を開けて、先にいるであろう2人に声をかける。
    だが、予想に反して室内はシーンとしていた。

    「あれ…?2人とも、いない…」

    近くにあった椅子に荷物を置く。上着を置いて誰かいないか探そうとしたその時。

    ─キィ

    後ろからドアが開く音が聞こえて、2人のどちらかと思い振り向く。そこには、顔色が悪いシュウがいた。

    「シュウ!よかった!誰もいないかと思ったよ〜!…えと、顔色悪くない…?」

    黒のスキニージーンズに黒のパーカーを着ていた彼に近寄る。
    心配になって、彼の肩を掴む。

    「いや、その…。扉、閉めちゃった?」
    「?うん、でも開いてるよ。何か買い物?」
    「…ううん、違うよ。ありがとう。」

    終始僕の後ろにある扉を気にするシュウ。外に出ると思ってドアノブに手を伸ばそうとすると、シュウは大丈夫と言って静止させた。

    「ところで、アイク。スタジオの、さ。扉開けて見てほしいものがあって…。」

    彼が指し示すのはいかにも重たそうな鉄扉。
    脳内になぜ?が浮かぶが、彼の不安げで顔色の悪さを省みるとこの先に何かあるらしい。

    「…クモじゃないよね?」
    「蜘蛛の方が全然よかったよ。今回に限って」

    僕の言葉にカッと目を見開いてシュウは冷静に答えていた。
    いや、それ僕にとっての悪夢なんだけど。
    彼にグイグイ背中を押されて、扉の前に行かされる。
    どうしても見てほしいモノがあるらしい。

    収録部屋には、配信器具が一式あるらしい。シュウは機材の配置準備。
    ヴォックスは機材の手配などでスタッフさんを手伝ったそうだ。
    無機質な鉄のドアノブをゆっくり開く。

    開けた部屋は明かりがついておらず、真っ暗だと思っていた。だが、部屋の中央あたりにモニターのうっすらブルー寄りの人工的な光が見える。それ以外には電源タップ、ケーブル、機材…いたっていつも見る風景というか、そんな違和感は、

    違和感、…?

    今夜自分達が座るであろう、ゲーミングチェアが5つ。
    誰も座っているわけがないその椅子には、大きくてずんぐりとした何か動いていた。
    目を少し細めて、それをしっかり見る。

    黒くて、毛があって、鼻が大きくて、特徴的な頭のカタチ、、、、?

    バァン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

    勢いに任せて鉄扉を速攻で閉める。
    なんだあれ!!!!!!!あれは!!!!!!あの動物は!!!!!!!

    「ゴリラ!!!????!!!!???」

    扉に背を向けて、憐れむように僕を見つめていたシュウに真っ先に近寄る。

    「シュウ!!!!何あれ!!!僕にはゴリラにしか見えなかったんだけど!!!!??????」
    「そうだよね!?!?あれ、ゴリラだよね?!?」
    「いつからいるの?!?え?ここジャングル?!ここ、もしかして、ヨーロッパだと思っていたけど、実はジャングルでインディジョーンズなの!?ナショナルディスカバリーチャンネルなの!!??!」
    「僕が聞きたいよ!誰もいないと思ってた配信部屋を開けてすぐ見たらアレがいたんだ!!!!!」

    ゼェゼェ…
    2人で肩を動かすほど息をする。
    脳と心臓がドラミングしている。ウホウホしてしまっている。
    は?何?ウホウホって
    混乱しすぎて、目の前のシュウの前髪がバナナに見えてしまった。クッ!!!正気に戻って!アイク・イーヴランド!まだ狂うには早い!!!
    教えて欲しいことがたくさんあるのに、スマホで検索しようにもなんて調べればいいのかわからない。

    検索履歴
    スタジオ ゴリラ なぜ
    ゴリラ 配信
    ゴリラ 出会ってしまったら

    こんな検索履歴をスマホに残したくない。
    それに多分何も解決しないし、もし警察に通報したら動物保護局が来て、密輸入者として僕らが檻の中に入ることになる。なるほどね、監獄は動物園ってわけ?
    意味不明すぎて脳内で異界の扉が開かれた。
    ハッ!とする。
    そうだ!日本のライバーには、お犬様とコアラの悪魔がいるってシュウから聞いたことがある。これは、まさか!!!

    「シュウ、あの、彼?もライバー、だったり…?!」

    知性ある生命であって欲しい。
    お願いバナナあげるから。
    一縷の望みを託してずっと黙っているシュウに問いかける。僕もシュウもまるで明日が終わるような顔をしていた。たらりとこめかみから汗が伝ってゆく。間違ったら終わりのクイズ番組のよう。
    だが、彼はゆっくりと首を振る。

    「僕も、そう思いたかったんだ。でも、アイク。僕は、君より前に遭遇してて、ずっと扉のアレの声を聞いてたんだけど」

    ウホホって声、めちゃめちゃヴォックスに似てたんだよ。
    呆然と、また悟ったような彼の言葉は僕にとっての絶望そのままだった。


    🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍


    あらすじ
    【悲報】同期がゴリラになったかもしれない件について【有識者求む】

    2秒でクソスレと断じられそうなタイトルで大体僕らの10分間の混乱が伝わったと思う。ともかく、あの、推定ヴォックス・ゴリラをどうにかしなくてはならない。
    ちなみに早々に逃げようとしたが、なぜか扉が開かなかった。まるで施錠されているかのように固く閉ざされていたのである。あのシュウがいくらヴォックスの貴重品があるとはいえ外に出れなかったのは、このせいだった。

    ─だから、あの時のドアを気にしてたのか…

    何はどうあれあの扉の先の特級アニマルに立ち向かわないといけない事実は変わらない。
    哀れな毛深き僕らの同期を救済しなくては…
    そんな聖職者の心持ちで気持ちを持ち直す。まずは、ゴリラについて二人で調べることとなった。
    ネットでゴリラを調べると、腕がポパイのように筋肉隆々で、見るものを圧倒する顔。それは守るべきものを見つけた漢の顔だった。

    ゴリラの特徴は、
    ・広い胸
    ・太い首と手足
    ・黒い体色

    あれ、ヴォックスの特徴…

    ・広い胸
    ・細めに見えるが案外太めの手足
    ・黒い…髪…

    数学の証明だったら確実に点数が取れない共通項で、僕とシュウは顔を真っ青に染めてゆく。

    「…シュウ、ヴォックスは?」
    「それが、連絡しても何も返ってこなくて…彼の荷物がそこにあるし、なんだったら財布もそこにあったんだ。だから、すぐ近くにいると思ったんだけど…。」

    まさか、本当に?
    脳裏に浮かんだのは、艶やかな黒髪とふさふさの体毛に覆われた力強き顔。その名は
     

    NIJISANJI EN VOX・GORILLA


    嘘だよ、彼は、鬼で、霊長類じゃなかったはずだ!
    誇り高き、クランを背負った、いい声の鬼(おに)いさんだ!
    がんばえ!おに○ゅあ!
    脳内に生息している5歳児女児が持たされた魔法少女ステッキ(鈍器及びモーニングスターのような形状)を振り回していた。おっと、脱線した。
    またオタクくんさぁ…とコメントで言われてしまう。
    ドッと疲れた僕は、スタジオ内のソファーにどさりと体を沈める。シュウもずっとあんなのの近くにいて疲れてしまったんだろう。となりにドサリと座った。
    きっと逃げることも出来ず、かといって僕らに言っても理解できない考えたに違いない。
    だって意味わからないもの。

    「アイク、これ見て…」

    シュウに見せられたスマホにはとんでもない事実が書いてあった。

    教えて博士くん!
    ゴリラの能力について教えてください!
    ・ゴリラは両手両足を利用して時速40キロで走る。100メートルを11秒で走り切る能力があるので盗塁走者としてのポテンシャルが高い。
    また全体的な筋肉量を人間と比べた場合、チンパンジーは4〜7倍。オラウータンは人間の5〜8倍、そしてゴリラは─

    「12、倍…」

    もうダメかもしれない。
    ダークソウルでの「YOU DIED」が僕ら2人の目の前を襲った。

    🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍

    ドウシテ、ドウシテ、
    人類代表の僕ら2人にできることなんて、あの鉄扉を押さえつけて屍鬼封尽(しきふうじん-NARUTO-より)するしかない。火影になれるかな。知らないけど。どうせなら螺旋玉打って死にたい。ほら、花火みたいでしょ。

    ゴリラになるほど彼は思い悩んでいたのか。
    それとも野生に…帰りたくなってしまったのか…。

    お互いできることがなくて沈黙してしまう。いや、だって僕らの死神があそこにいるんだもの。どうしようもない。時間だけが過ぎてゆく、そう思っていたその時

    ポコン!

    2人のスマホから通知音が流れた。バッとスマホを起動させてメッセージを確認する。そこにはミスタとルカから到着した!という連絡とバタン!と扉を開く音

    「ハイ!ヴォックス〜〜!シュウ〜〜〜!!アイキーワイキー〜〜!!!」
    「DADDY〜〜〜〜〜!!!アイク〜〜〜!シュウ〜〜〜!」

    元気なPOGベイビーボーイこと、ルカとニヘラと笑ったミスタがにこやかに入園する。

    「二人共!扉開けといて(そのままに)!!!!!」

    シュウと僕が2人が入ってきた扉(脱出口)を、抑えるよう指示を出す。だが、扉は不自然な動きでバタン!と無情にも閉まってしまった。ホラゲーなら頼りになれる扉先輩が、今日は地獄の蓋にしか見えない。
    僕とシュウのいつも見れない焦った表情に2人はびっくりしていた。後できちんと理由を言わなくては。

    今ならシュウの深刻な顔の理由がわかる。きっと僕が扉を開けたのなら外に出れるかもと思ったのだろう。この絶対野生ゴリラ監獄24時から逃れられるなら、誰だって必死になる。人間だもの。

    僕らは収録に来たんじゃない。
    ここに入園してしまったのだ。

    ─飼育員として。

    頭に?が浮かぶ2人には大変申し訳ないが、きっと扉の先にいるバジリスク(毛深いすがた)を見たらわかるはずだ。背筋も凍る、悲しき事実に。
    歴戦の戦場を生き抜いた戦士が如く、立ち上がる。
    こうなったら、この4人+1匹で進むしかない。
    せめて、12倍の暴力に負けないように。
    四人が3倍になったら計算上は12倍になる。
    うん、きっと。

    「ミスタ、ルカ。いいかい。僕たちは包囲されている。」

    そこから僕らの説明が始まる。半信半疑で彼らは聞いていたようだが、僕が扉の先を見るよう指示を出す。

    ミスタとルカが身をしゃがませて扉をそっと開けて、中を見る。だが、予想に反してそこには黒いモノがあった。

    「…何にも見えない…?なんか、ふさふさしてる…」
    「アイク、何にも見えな、い」

    ふさふさした毛にはなぜか赤とグレーが混ざっていて、呼吸するかのように動いている。しかも自分達の頭上では、フス、フスとなにかの呼吸のような鼻息。2人が恐る恐る上を見ると、鼻を膨らませて、黒い肌に影のある深い顔立ち、何より人間にはない、大きなキバ─


    バァン!!!!!!!!!!

    「ルカァ!!!!なんか塞げるものないか!??!!!?!」

    「イスぅぅぅぅぅぅ!!!!怖いよ!!!!!!!!!!!あれ何あれ何あれ何!!!!!!」

    扉の前で鎮座していた僕らの同期(ゴリラ)に、2人共飛び上がり、混乱している。僕らが座っていたソファを持っていきたいらしい。やめなさい、きっと無駄よ。
    僕もシュウも動く気はないので、2人がワタワタしてるのを諦観者よろしく見つめていた。

    ─わあ、僕とおんなじリアクションだぁ…

    野生の前では、人間など無力。
    2人共なんでそんなに冷静なの!!!と言われましても。

    「だって、もう僕ら出れないし…」
    「一応、みんなで食べれる用のお菓子はあるし…」

    バックからチョコやら、ビスケットを取り出す。シュウは2リットルの水を出していた。

    「ダメだって!!籠城しようとすんな!!!!生きるんだって!!!!!そんで逃げる!!!!」
    「そうだよ!?!?シュウ、シュウ!しっかりして!アイク!いつも賢い君らしくないよ!、!!!」

    悟って死を待つばかりのサバイバー(飼育員)へ、太陽系からやってきたサバイバー2人が一生懸命励ましてくれる。明るいなァ…

    大声と恐怖で座り込むルカ、ミスタ。幸いスマホからの通知は問題ないようだった。ミスタは現実逃避を兼ねて、配信スケジュールを確認しようとメンバーのチャンネルを確認する。そこで驚きの事実が発覚した。

    「おい!!!!これ…!!!!!」

    ミスタは真っ青な顔で、スマホをメンバーに向ける。そこには

    ヴォックス・アクマ
    19:00 gorilla asmr

    という衝撃的な配信予定が記載されていた。
    まさか、いや、そんな。
    彼はロールプレイを大切にするきらいはあったが、だからといって人間卒業することなんてあり得ない。
    巷ではあまりにもトンチキ設定すぎて、シチュエーションで心躍るか、口角が笑いすぎて天井に刺さると噂の…アレだとしても…!!!

    「嘘だ…!信じないぞ!!」
    「オレだって信じたくねーよッ!!!!でも、配信部屋にいて、モニター見てたんだろ!?そんなのッ!ヴォックスじゃん!!!!!」

    ダァン!!!
    床パンするミスタ。絶望する僕ら。
    マジでゴリラになっちゃったの?本当に?

    脳内で数々の思い出がゴリラに侵食されてゆく。
    キラキラした全てが、バナナのエフェクトで侵されてゆく。四者とも、顔を歪ませて沈黙する。

    そこへぽこん!という全員のスマホにディスコードの通知がくる。4人はスマホをすぐさま確認した。

    「スタッフさん、渋滞してて三時間ほどかかる…か。」

    それまで耐えなくてはならない。4人は沈痛な面持ちでその意味を理解する。

    天を見上げるルカ
    wtf…と呟くミスタ
    ッスーーーーと静かに息を吸うシュウ
    フ、と笑ってしまった僕

    扉の先からは、

    ウホ、ホッホッホッホァッ!!!!

    と僕らの仲間の声が聞こえていた。

    🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍

    「審議!!!!!!!!!!!!」

    アイクの声で俺たちは、ハッとする。
    3時間。この時間を出ることもできず、あの扉だけが隔てる状態で生き残らないといけない。

    「一番先にいたシュウ、まずはたくさん説明して」

    嘘、多分アイクも混乱してる。なんだよたくさん説明してって。

    「僕は、多分2番目に来たと思う。本当は一番乗りだったんだけど、乗り換え間違っちゃって…それで3人と同じくスタジオに来て、そこにあるヴォックスの荷物があったから、もしかしてと思って扉の先を見たら、その…」

    「いたんだ…」

    「ウン…みんなとあんまり状況はかわらないよ。ヴォックスに連絡したけど、返事ないし。式神を使って観察しようにも、すぐにちぎられちゃって…多分鬼の力が、こう、ゴリラよりに精神が近いから…?気になっちゃうのかな…?」

    虫を嫌う的な…?
    やはり、暴力…暴力こそ全てを解決する…それを体現するようなエピソードだ。
    いま切実にほしいのはGoogl⚪︎翻訳(ゴリラ語)。
    言いたいことはただ一つ。

    (野生に)帰れ!!!バナナあげるから!!!!!!!!

    だが悲しいかな状況的にはこう着状態で、あるのは3時間は持つであろう食糧と水分。
    そして、一つ致命的に足りていないものがあった。

    食べたら出すものを処理するところ、そう、つまりトイレである。

    今回の収録部屋は、トイレが直通で頻尿の方必見の物件なのである。
    今はアレとオレらを隔てている目の扉しかドアはないが、収録部屋内の奥にトイレ口があるのである。なお予定ではスタッフさんたちは地上にあるトイレを利用するとのことで、僕らはわざわざ地上に出なくてよかったのだ。
    だが、それが仇となった。
    前門のゴリラ、肛門のトイレが今ここで我々4人を襲う。ああでも…オレは言わなくてはならない。先程からずっと気のせいだって思いたかった。
    でも、もうこれは確実に─

    「…あのさ、先に言っとくわ。ごめん。」
    「まってまって、ミスタ、まさか」

    「俺…トイレ行きたいんだ。」

    気持ちはとても穏やかで水面のように静か。
    だが俺は散るなら、戦いの中で散りたい。
    この悲しき争いに勝てなかった場合、確かに傷(社会的な死)を残すのだ。

    あの時のミスタの顔は、戦場に行って命散らす覚悟を持った戦士だったよ。あとでシュウにそう言われるとは露知らず。

    🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍

    作戦会議が始まった。まずは課題解決から。

    ・ヴォックス(ゴリラ)を救済すること
    ・ミスタ危機一髪!

    スタジオ内にあったホワイトボードに羅列したキーワードはどれもこれも困難なものである。

    「まずあの、ヴォックス?をどうにかしないとダメじゃない…?」

    こういう時はなぜか冷静なルカ・(精神)ツヨシロ。そう、彼の言葉は正しい。
    赤毛のメッシュが混ざったオシャンティーゴリラに勝たねば、我々の勝利は得られない。

    「ゴリラならフルーツじゃない?それこそバナナとか。それで気をひかせてその隙に入る…」

    作戦としてはこうだ。
    シュウ及びルカがバナナ(に見立てたシュウの呪術)でゴリヴォックスの興味を引く。その間にミスタはトイレを済ませる。扉を開放しておく役割はアイク。

    なおこの作戦を説明すべく、シュウがいつもマウスで書いてるかわいい絵をちまちま書いていた。
    楽しくなってだんだん話し合いよりそっちに気をそそられてる気がする。
    子どもが描く絵は時に真実をありのままに描くというが、年齢不詳成人済み男性が描く絵にもその概念は適応されるようである。ちなみに作戦を説明し終わって、すでにうんちを書いていた。
    ばっちいからやめなさい!

    「でもそれだとミスタが閉じ込められちゃうんじゃ…」

    心優しき赤ちゃん、ルカ・バブシロは親友のピンチにすぐ気がついた。そう、構造的に誰かが犠牲になる可能性が高い、犠牲ありきの使い捨て作戦なのだ。
    しかも、ミスタはかなりキテいる。

    「………アイク。」
    「まって!僕イヤな予感がするな!!!!」
    「オレの、トイレ、見守ってクダサイ…」

    恐怖と緊張感による過水分摂取により、ミスタの膀胱はダムの放水の如く決壊寸前だったのだ。ましてや薄暗い空間の中では、ミスタのネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲がうまく発射出来ないという。
    完成度たけーなオイ。

    「ミスタ!お気を確かに!」
    「だって怖いもん!!!!!暗いし!!!!!しかもヴォックスいるんだぜ!?!!」

    ミスタ・リアス26歳。友人にトイレを見守られながら行う決意をした男よ。
    君はヴォックスという名前が恐怖になってしまっているのか。彼は優しき鬼の男。幾多の思い出を共に過ごした美丈夫ぞ。

    「オレだって!!こんなことしてほしくないけどさ!!!!怖いんだ!!!!!!」

    魂の慟哭は彼ら3人を強く動かす。
    屈辱だろう、羞恥だろう。
    それでも彼は人間卒業(おもらし)だけはしたくないというのだ。

    やろう。
    友達の窮地を救うべく立ち上がる。
    トイレでやることを成し遂げよう。

    恐怖に打ち勝とう!
    なお、ここまでがヴォックスゴリラゴリラに出会ってから、すでに1時間はかかろうとしていた出来事である。

    🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍🦍

    「いいかい、僕のマジックバナナは触られたら終わり。つまり何らかの形であれを物理的に封じる必要がある。…断言するけど僕の式神じゃあれを封じるのは無理かな。」

    マジックバナナが何かはもうこの3人はわかってしまう。そう、対ヴォックス用の呪術で作った幻覚バナナ(囮)のことだ。なんだろう、ちょっとイヤなフレーズだ。

    「それはどうして?」
    「ルカ、魔法使いとアメフト選手どっちがフィジカル強そう?」
    「アメフト選手!アッ!」

    賢いルカくん!大正解だ!
    万能だと思ってたシュウの呪術は対化け物(非常識な存在)には有効だが、常識(ごりらはにんげんよりつよい)ではそこらへんの紙と変わらない存在になってしまう。

    「そう、僕の式は彼の前ではちり紙…せいぜいトイレットペーパーだよ…ンフw」
    「シュウ、うまいこと言ったつもりだろうけど、今はちょっとイラっとしたかも!!!!」

    耐久戦を強いられているミスタ・リアス選手にとって彼のお茶目さは時に焦りを生む。小刻みに足を揺らして、ビートを組む様はトイレ我慢戦における常套手段だ。

    「じゃあ、誰が抑えるの…?」

    フィジカルが強くて
    ガタイが良くて
    ゴリラが好きな黄色…

    ルカの一言に3人の視線がじっと彼を見つめる。

    「…え、俺…?」

    カネシロファミリーボス
    ルカ・オッパイその人であった。

    やったね!ボス!ハンターへのジョブチェンジだ!

    🍌

    「ルカ、僕が君に力を強化させる呪いをかける。ただ呪いだから代償はある。そこは、ごめん」

    「ちなみに、どんな代償なの…?」

    「術が解かれて一週間くらいバナナが食べたくて仕方ないのに、食べるとあまりの不味さに吐く呪い」

    「ええ…?」

    足の小指にぶつかる呪いより地味にイヤな呪いだ。陰湿極まりない。ルカは顔をしょぼくれさせて、それを甘んじて受ける。というか、ルカがどうにかしてくれないとヴォックスゴリラは止まらない。陰湿でも我慢してもらうしかないのだ。

    「ルカ、そこを動かないで。2人はちょっと離れててね。そうでないとバナナの呪いにかかるから。」

    流石に好きなフルーツがゲテモノ味に変わるのは嫌だったようで、瞬時に2人は離れる。ルカは頭上???が浮かんだ状態で言われたまま立っていた。

    そしてシュウが儀式のため?にパーカーを脱ぎ始める。あまりの突然の行動に三人はギョッとしていたが、彼は気にせず脱ぎ終わり、そのたくましい腕としなやかな体を現せる。なお脱いだパーカーは腰に巻いていた。

    「ちょっと変な術だから笑わないでね。」

    集中するから、と無言になるシュウ。
    周りの2人も何が起こるのかわからないが、興味深そうにそれを見ていた。
    一方シュウは拳を作り、そのまま腕を引くようなポーズをする。(カラテのポーズに近い)気のせいだろうか、いつもシュウの周りにある紫色の炎がシュウの拳に集まりはじめた。ゆっくり、手を拳から手を当てるポーズに切り替わる。そしてカッと目を見開き、ルカの背中に手が触れた。

    「破ァ!!!!!!!!!!!!!!!」

    ボッ!!!!!!!!!!!

    ルカの体に紫と黄色の炎が纏う。炎の輝きに合わせてルカの髪は若干逆上がりしている。それ姿はまさに─

    「ルカが、サイヤ人になった…」

    掴もうぜ🎶ドラゴンボール🎶
    寺生まれのSさんとマフィアのボスが融合し、
    ルカ・サイヤ人・カネシロが爆誕したのである。

    🔥🍌🔥

    「今までやってきた中で、一番うまくいった…。」

    シュウは腰に巻いていたパーカーを再び着衣し、ルカの体を目視で検分する。どうやら自分で感嘆してしまうほどうまく術(呪い)がかかったようだ。その顔は一仕事終えやりきった満足いくものだった。

    「ルカ、ためしにこれを潰して」

    シュウが袋から取り出したのは、リンゴ。
    艶々して、緑の美味しそうなリンゴだ。シュウ曰く、お昼に食べるつもりだったけど時間がなくてそのまま持ってきたとのこと。

    「え、あ、ウン…。」

    恐る恐るリンゴを持ち、そのままぎゅっとリンゴをつかむ。

    グチャ

    本人は大した力を入れたつもりはなかったのだが、
    リンゴは原型がなくなり、掴んだ指の間からボトリとつぶれたリンゴだったものが床に落ちる。神妙な顔でそれを見ていたルカ、アイク、ミスタ。

    「………………………………………………。」

    「イケる。」

    深く、深く頷くシュウ。真剣なそれに俺たちもコクリと頷くしかない。
    これでパワー面はなんとかなった。
    さすがJUJUTHUSHIだ。
    呪術の力ってスゲー!!!!!
    本人は呆然とリンゴを見ていたので、アイクがそっとタオルを渡していた。

    「よし作戦を立てよう。」

    希望への活路が見えてきた。
    つまり最難関ミッション「ミスタのトイレを敢行せよ!」が発令される瞬間である。四人で円陣を組み、突貫の作戦会議が始まる。

    「まずシュウがヴォックスにバナナに見立てた幻覚を見せるんだよね」
    「うん。たださっきもいったと思うけど触られたら幻覚は解ける。紙だからね。なのでバナナに触らせないようにルカがヴォックスを取り押さえてね。」
    「わかった。俺、ガンバル」
    「なんか力がありすぎて小鳥に触れられない心優しき巨人みたいになってない?ルカ?」
    「今のルカはゴリラと同格くらいだと思って。でもその術持って15分だから時間管理しないと」
    「シュウ????そういう大切なことは早くいって?????」
    「ごめん、オレも…もう、無理かも」

    情報量が東南アジアのバイク量と同じくらい多い。速攻で決めないと、サイヤ人パワーとミスタの人権が失われる。

    「シュウが幻覚!ルカがバーサーカー!僕がミスタのトイレを見守る!ミスタは僕に見守られる!これでOK?!」

    雑な作戦だが、一番役割がわかる。
    OK!!!!!!
    三者から力強い返答が聞こえた。健闘を祈ろう。
    IKZOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO

    作戦の幕開けだ。

    🍄🍌 🦍💥💪🦁👟 🖋🚪🦊🚽

    「開けるよ」

    一番前に幻覚バナナ担当のシュウ、次にゴリラとプロレスするルカ、次にトイレ見守りサービス担当アイク、最後にトイレで用を足すミスタという最強の布陣である。
    シュウの合図で重い鉄扉がゆっくりと開かれた。誰かが、いや全員がごくりと唾を飲み込んだ。
    先ほどは扉のど真ん中に鎮座していたが、今はもうその姿はない。移動したようだった。一番の懸念点であるこちらの領域進行という危険は無さそうだ。
    唯一の光源である相変わらずモニターはつけっぱなしで、余計な恐怖心を煽る。
    その薄らあかりを頼りに周囲を見渡すも、気配はない。

    「時間がない、罠(トラップ)カード発動!マジックバナナ展開!」

    シュウが手持ちの式神を開かれたドアからサッと投げ飛ばす。
    すると

    ホッホッホッホッホッハッハッハッハッホゥッホァッ!!!!!

    大きな黒い影が展開されたバナナへ向かう。

    「ルカ!」
    「う、うん!」

    シュウの合図でルカが動いた。ふさふさしていて、なぜか本物のヴォックスのように赤とグレーのメッシュと跳ね返りのクセがあるキューティクルロングヘアを持つそのゴリラを羽交締めにする。人間の12倍あると言われているゴリラと1分でも持てば上々だと思っていたが、奇跡的にルカの本来のフィジカルとラクシエムの✝️最強✝️呪術師パゥワーにより、同格の力をもちその獣を押さえつけることに成功したのである。

    「グッ!!!!すごい強いよ!!!ミスタ!早くトイレへ!!!」

    ふさふさの黒髪の君をあすなろ抱き(羽交締め)しながら必死に叫ぶルカ。
    その言葉に半分怖じけていたアイクとミスタは互いに見つめ合い頷く。

    「ミスタ、行こう!ルカとシュウが足止めしてくれる!」
    「待ってって!あんまり急ぐともれそうなんだって!」

    若干の内股でトイレ(セーブポイント)へ向かう2人と、獣が夢に描くであろうパラダイスを作り出しているシュウ、そしてその獣を愛を込めて抱きしめるルカ。
    アイクはトイレのドアをすばやく開き、ミスタを誘導する。本当は電気を付けたかったがもし明かりに反応してヴォックスがこちらに来てしまったらこの作戦は失敗に終わる。
    だから、見守る必要があった。

    「よし、よし、ここが便器で、便座を上げて…」
    「ミスタ、ミスタ、別に実況してなんていってないからね。」
    「違うって、声出し確認!ア、でもこんなに暗いと便器の蓋上げられるかな…暗くてわからない」
    「座ってしなよ〜〜!!!!!」

    シュウがミスタへアドバイスをする。普段からトイレを座ってする男のアドバイスは確かに正しい。
    ちなみに術を展開しているシュウはゴリラ部屋から脱出できるドアを抑える役割も担っていた。基本的に同時に術を使うとゴリゴリ呪力が削られる。なのでそれ以外のことに体力が使えないからである。

    「綺麗かな、ここ」
    「いやでも、もれる。」
    「ごめんアイク、オレのブツあんまり見ないでね。恥ずかしいから」
    「ヒャ!!!?????便器めっちゃ冷たい!!!!!」

    ドキドキミスタのトイレASMRが始まった。ミスタはアイクに見ないでねといったものの、便器自体がこちらに向かった方向に設定されていたし、ドアを開いてすぐのところに便器があるもんだから、何もかもがしっかり見えてしまっていた。

    ─シャーーーーーーーーーー

    目をつぶってきけば滝の音かもしれないそれは、今回の作戦が成功したことへの勝利BGMかもしれな…くもない。なんで、僕見守ることに…?

    「よし、終わった…パンツ履いてと…」
    「ミスタ、おしりこっちに向けないで」

    ─ジャーーーーーーーー!

    水が流れる音の後に水道で手を洗う音が聞こえた。つまり!

    「ミッションコンプリート!!退避!!!!!」

    足早にトイレを閉めて、ゴリラ部屋から退散する2人。あとはルカがヴォックスを安全な場所に解き放てば終了だ。
    だが、世の中うまくいきすぎるとなぜか不幸が訪れることをご存知だろうか。

    さてここでの不幸その1
    “ マジックバナナは(幻覚)は物理的攻撃に弱い。“
    不幸その2
    15分持つはずだったルカのサイヤ人パワーは8分しかもたなかった。

    この二つのスパイスが化学変化を起こしついに起きてしまったのである。

    ウホッ!いい声のゴリラがマジックバナナへ触れてしまった。
    それはつまり、幻覚とバレてしまったと同じ。自分の術が解かれたことを瞬時に理解したシュウはすぐさまルカへ連絡する。

    「アッ!まずい!ルカ!離れて!」
    「ゔん!!!!」
    「アイク、シュウを頼む!オレ、ルカを助けるわ!」
    「うん、頼んだ!ミスタ!」

    すでに術が解けかけていて限界に近かったルカをミスタが肩をくみ連れ出す。アイクはシュウをドアに引っかからない範囲まで引っ張り上げる。

    ウホァ!!!!!!!!!!!!

    自分が騙されていたことに気づいたヴォックスは、こちらに向かって猛スピードで突進してくる。その姿を4人はしっかり見ていた。まるでスローモーションのように見える絶望から、もう今日で人生が終わりなんだと言われているようだった。

    ファンのみんなありがとう。
    僕らは一生懸命、立ち向かった。
    でも、12倍の野生には、勝てなかった。
    家族にも感謝を伝えたかった。

    ミスタは悔しさで涙を流し、ルカは意識が朦朧としている。
    アイクは、ドアを閉めようと必死に体を動かし、シュウは最後の力を振り絞り式神を展開しようとしていた。その時

    「これだな!超高級プレミアバナナは!!!!!」

    ─なんて、いい声なんだ。

    いい声の救世主が4人の前に立ち塞がる。その人は、袋一杯のバナナをヴォックスに見せつけた。すると先ほどまで荒ぶる神だったヴォックスは、

    フハッ!!!ホホホホ!!!!!!!!!!

    向かってきた巨体が急停止し、手を大きく叩いて歓喜の表情を見せる。

    「全く、面倒な買い物だった。どこのスーパーに行っても指定の品がなくて仕方なく鬼の力を使う羽目になったんだ。」

    受け取れ!!!!

    床にばら撒かれた黄色い物体。
    それはなんとも美味しそうな形のいいバナナ。
    ヴォックス(?)はそれに手を伸ばし、皮を剥かず貪り食べる。ウホホ、ホァ!歓喜の雄叫びを伴いながら必死に口に運ぶ。
    疲れて、涙でぐちゃぐちゃな僕らはそれを呆然と見つめていた。
    目の前にいる、赤いシャツを着て黒いパンツを履き、黒髪と赤のメッシュが入った男がクルリとこちらを向く。

    「遅くなってすまない。俺だけで解決する予定だったんだが…4人を巻き込んでしまった。」

    我らが同期、ヴォックス・アクマその人であった。

    💗🍌🦍 👹🦊👟✒️🦁

    「俺がこのスタジオに一番に来て配信の準備をしていた時だ。古い知り合いからこのゴリラの地縛霊を救ってほしいと連絡が来てな。俺も仕事があると言って断りたかったんだが、このゴリラはかなり面倒な怨念を持っていて俺しか対処ができなさそうだったんだウホ」

    「なんで最後ウホってゆったの」

    「おっとつい漏れた。あのゴリラの怨念は

    “1ヶ月前以上予約待ちのプレミアムバナナがようやく届いて仕事終わりに食べようとしたら家族によって全部食べられてしまったことで怒り悲しみ、そして足元に捨てられていたバナナの皮で足を滑らせ打ちどころが悪くて死んでしまったゴリラの地縛霊”だ」

    そりゃ恨む。4人はそう思った。
    食べ物の恨みは人それぞれ(ゴリラそれぞれ?)だが、1ヶ月以上待った挙句に食べられてそのゴミで死ぬなんて最悪にも程がある。
    本日の悪夢のゴリラを見つめる。先程までの強面が、今は涙を流しそのバナナを食べている様子はこの世の恨みを晴らしているようだった。

    ところで

    「…あのさ、だとしたらなんであのゴリラは君の特徴を持ってるの…」

    黒髪もさることながら背中もほんの少し赤い毛が混じる。通常のゴリラならあんな毛色はないはずだ。あっても群れのリーダーの証であるシルバーバック(背中に明るいグレーの毛色が現れている)というゴリラだけだ。

    「ああ、それは

    俺が彼と共にドラミングをしたからだな」



    4人の思考は❓で埋まる。
    トモニドラミング?

    「えと、ドラミングって、こう胸を叩いて威嚇する、ゴリラ特有のアレ?」

    「ああ、彼の恨みを晴らすためには彼に決闘を申し込む必要があった。それで俺がゴリラであるということを示すためにドラミングを行い、お互い同じ種族同士であると彼に認識させる必要があったんだ。その過程で、俺の鬼力(おにぢから)が不安定な地縛霊の彼に入り込んで俺の特徴を受け継いだんだろうな」

    あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

    「僕らは 奴はただ恨みで暴走したゴリラだと
    思ったら 本当はヴォックスの漏れた力を受け継いでバナナが食べれぬまま暴走したゴリラだった…」

    な… 何を言っているのか わからねーと思うが
    僕らも 何なのか わからなかった…
    なんだろう、精神がどっと疲れてしまった。
    床にみんな座り込み、ただただ彼の種明かしを聞くことにした。

    「ちなみに僕らに危害は加える気あったのかな…」

    床に寝転び、その上にミスタがぐでーと乗ったポーズのシュウは虚空を見つめながらヴォックスに問いかける。

    「いや,多分なかったと思う。だが、さっきバナナの幻覚を見せただろう?その時興奮してたからあの時は危険だったかもな」

    敏感なお年頃なんだ、そう締める。
    お年頃ってなに?ゴリラに年頃ってあるの?

    「さて、あのゴリラの地縛霊はバナナを食べた頃には消えるだろう。4人には連絡が遅くなってすまなかった。かなり無茶をしたようだしな。後で俺からお詫びの品を送らせて欲しい」

    ずっと立ちはだかる壁のように立っていたヴォックスが、しゃがみ4人それぞれの頭や頬を撫でる。安全かどうか確認しているようだった。暖かくて優しいいつものヴォックスだった。

    「いや、ヴォックスは最善を尽くしたでしょ。こっちはまあ、勝手に巻き込まれたけどさ…ミスタもトイレいけたし、ゴリラも怨念を晴らせてよかった。」

    シュウの総括にみんながうなづく。
    何はともあれ悪夢はさった。

    「よし、今日の配信の準備をしよう!もう扉開くよね!」
    「ああ、開くと思うぞ。あの扉はゴリラが外に出ないよう俺が結界を張ったからだからな。」
    「いや、ヴォックスのせいだったの?????????」
    「いや、だって出したらまずいだろう」

    ヴォックスの衝撃的な告白に4人は驚いたが、でも仕方ない処置とも言える。あれが解き放たれればそのプレミアムバナナ以外では満足いかず、ただその辺のバナナを食い散らかし、かと言って地縛霊だから銃も効かないという、災厄の獣が街中で大暴れすることになるのだ。
    仕方ない対応に溜飲はあったが飲み込む。

    「ハァ〜マジで疲れた…でもよかった!オレてっきりヴォックスがゴリラになっちゃったかと思ってたからさ〜!!」

    ミスタがシュウの腹からむくりと体を起こし、心で思ってたことを話す。

    「ああ、そうだな?」

    ─?

    今何か引っかかるような。
    アイクはその違和感を持ってはいたが、何に対するものかは知らなかった。

    「今日ゴリラasmrすんの?」
    「まあ、サンプルボイスはたくさん聞いたしな。やるぞ」
    「オレ、チンパンジーで参加しよっか?」
    「もうメンバー全員でやるか。」

    イギリス在住の2人が狂った宴を模索し始める。ルカは一番体力を消費していたから、すでに体が船を漕ぎ始めていた。

    「さてと、あとはあの地縛霊をパッキングしないとな。」
    「パッキング?どこかに届けるの?」
    「ああ、Amaz○nの返品センターにな。」

    !?!??
    いつもお世話になっている買い物サイトの名前が突如現れ、驚く4人。眠そうだったルカは目を見開いていた。

    「ここからジャングルに直接返すなんて非効率的なことはしない。ようは彼に森へ帰ったと思わせればいいんだ。」
    「?でもAma⚪︎onって、買い物サイト…だよね?」
    「名前がアマゾンだろ。」

    そもそもゴリラはアマゾンにはいない。だがそれは常識的なゴリラの生態の話である。
    今回に限ってはそこらへんの判定が緩いらしい。
    とりあえずジャングルに関する名を持つところへ返せば問題ないとのこと。

    Amazonってすげー!!!!!
    そう、Amazonならね。

    謎の感動の渦に巻き込まれ、脳があらゆることが起きすぎて思考放棄する。ただAmazonへの感謝と、同期のこの男へ感謝を伝えた。

    その後パッキングを終え、魂を返し終わった。
    5人はバナナを添えて、安寧を願う。
    次は楽しみが奪われませんように、と。

    その後スタッフが合流し、楽しい配信を行えることになった。もちろん何が起きたかは秘密のまま。5人の思い出でもあり、悪魔でもあったそれは確かに5人の絆を深くしたのである。

    ちなみにゴリラasmrは5人全員で行い、ラクシエム活動の中でも伝説的な動画となった。


    👻 おしまい


















































    ところで、ヴォックスはこう言ったわ。


    「ああ、彼の恨みを晴らすためには彼に決闘を申し込む必要があった。それで俺がゴリラであるということを示すためにドラミングを行い、お互い同じ種族同士であると彼に認識させる必要があったんだ。その過程で、俺の鬼力(おにぢから)が不安定な地縛霊の彼に入り込んで俺の特徴を受け継いだんだろうな」


    同じ種族同士として認識させた。
    ヴォックスの力がゴリラに混入した


    つまり、ヴォックスにもゴリラの力が混入する可能性はあるのではないかしら?

    本当にあのゴリラは、ただのゴリラだったのかしらね。
    ま、私はどうでもいいけど。

    霊夢〜!

    あら、もう行かないと。
    最後に一言。
    好奇心は時に命を縮めるってね。


    じゃあね


    ほんとにおしまい!
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