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    まつり

    @matsuri_92865

    落書きか加筆予定の小説しか上げないと思います。雑多。ワートリ、呪術、金カムあたり。
    金カムは夢が多い。
    アイコンはいらすとやから。

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    まつり

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    #金カ夢
    knkm誘拐組で豆iとiわパロの続き
    とにかく早く書き終わりたいので、色々と雑ではあるけど上げてしまう
    後で加筆修正予定

    ##豆パロ

    元夫全員集合 それから時は少し経ち、リビングにて。
     奇跡的に大集合してしまった元夫三人と、丁度帰宅してきた息子は、ソファを背もたれにして、ローテーブルの前に座っていた。月島は正座、菊田は胡坐、尾形はクッションを抱きながら体育座りをしている。そして私は一人寝室に籠り、ローテーブルの中央に置かれたスマホから、ビデオ通話で四人の様子を見ていた。サイドテーブルには麦茶と菊田作の卵粥、尾形作の崩し豆腐の和風炒め、それに味噌汁が盆の上に鎮座している。
     リビングにいる男達の反応は、四者四様であった。
    「すげえ、父親三人ともそろったの初めてじゃん」と息子は能天気にもわくわく興奮し、尾形と菊田は険悪な雰囲気をまとい、そして月島は一人何を考えているのだか分からない無表情で静かに座っているだけだった。
     とりあえず「自己紹介はしたの」と尋ねると、尾形が黙って首を振ったので、ここに揃った面々の紹介をすることにする。
    「まず坊主で鼻が低いヒゲ。それが一番目の元夫、月島基」
     月島は黙って会釈だけした。
    「それで、七三分けのスーツ着たヒゲ。それが二番目の元夫、菊田杢太郎」
    『菊田です』
    「最後、オールバックツーブロの目が死んでるヒゲ。それが三番目の元夫、尾形百之助」
    『……どうも』
    「それで、みなさんご存じ……かな。私の息子、樹」
     言い切ることをためらった理由は月島にある。彼とは息子が歩き始めたばかりの時に離婚しており、高校生にまで成長した姿を、彼は見ていないはずだと思ったからである。しかしそれは杞憂であったことが息子によって明かされた。
    『基さん俺のこと知ってるから。紹介しなくて大丈夫だよ』
    「え、月島と連絡とってたの?」
    『時々ね』
     これには驚かされた。
     私の記憶上、同居する父親とは別に生物学上の父親がいるとは伝えたことはあるが、連絡先や勤務先など、月島の所在に関係する情報を息子に教えたことは無かった。私も離婚後彼がどこにいて何をしているかなどは全く知らなかった。
     一通り紹介し終えたところで、私はとりあえず彼らにお礼を言った。何だかんだ言っても、食糧難のところに助けの手を差し伸べてくれたことには変わりがない事実なのだ。
    「皆様、突然のことにも関わらず厚いご支援誠にありがとうございました。心から感謝いたします」
    『いえ、とんでもない』
     ここで初めて月島が口を開いた。その言い方はぎこちない。未だ不貞腐れた顔つきの尾形は、他二人の元夫を指さした。
    『何でこの人たち、ここに来たんだよ』
    「菊田さんは会社の同僚から私がインフルだってこと、ここの住所聞いて押しかけてきた。月島は、私の友達が勝手に呼んだ」
     先ほど電話をかけてきた友人とその旦那は、月島と同じ場所で働いていて、特に旦那の方は同じ部署だという。
     今日は偶然にも彼が非番で、私がインフルエンザに罹り、息子が家事を回している状態だと知った友人夫妻は、ならば様子だけでも見に行ってあげたら?と月島に言ったそうだ。しかしそれで拒否せず来るところが、真面目な彼らしいと思う。普通、元嫁の家になど行きたくないだろうに。
     彼とは離婚してから十五年以上経つが、一度も会ったり話したりしたことはなかった。もうこのまま一生会うことはないと思っていたのだが、人生とはよく分からんものである。
    『ちなみに、お仕事って何されているんですか』
     菊田が月島に尋ねた。
    『警察官をしております』
    『へえ、そりゃあガタイがいいわけだ』
     菊田は顎の髭を撫でながら呟いた。感心したような口ぶりだが、身長や体格としては明らかに菊田の方が大柄なのだ。ともすれば嫌味に聞こえかねない言葉も、『恐縮です』の一言で月島は流した。しかし、今度は尾形がねちっこい言い方で絡んでくる。
    『何で十五年も前に別れた妻のところに、今更わざわざ来たんです?まさか、復縁でも狙ってらっしゃるんですか?』
     復縁、という言葉に菊田もピクリと反応して横の月島の顔を見た。彼は表情を全く動かさず、菊田と尾形の方を向いて淡々と返答した。
    『私は、単に同僚の頼みで来ただけです。やるべきことを終えたら帰ります』
    『基さん帰っちゃうの。ご飯くらい食べていけばいいのに』
     息子が寂しそうに言う。流石に実の息子からの言葉には揺らいだらしく、表情を微細に動かした。
    『明日仕事だから』
     注意深く見て聞いていないと、この変化には気づけなかっただろう。しかし、このあまりにも動かなさすぎる仏頂面には、どことなく見覚えがある。私は十数年前に閉じたきり、ほとんど開けることのなかった記憶の引き出しを探り当てる。
    「月島、夜勤明けか徹夜だった?明らかにまともな睡眠とれてない話し方だけど」
     彼は一瞬目を見開いた。よく分かったな、とでも言いたげだ。
    『ああ……ちょっとな』
    「じゃあもう帰って寝なよ。どうせまた明日も早くに仕事行くんでしょ」
    『いや、でも、大丈夫なのか』
    「医者にも診てもらったし、あとは寝て薬飲めば治るから。そんなわけなので、菊田さんと尾形も、帰っていただいて結構です。今日はありがとうございました」
     そういった瞬間に、ほかの夫二人が威勢よく抗議の声を上げた。
    『オイオイオイ』
    『病人ほったらかして帰れるかよ』
    「病人でも、もう四十路のいい大人だからね。子供でも年寄りでもないんだから、かいがいしく看病しなくていいって」
     菊田が画面を覗き込んで言う。
    『熱三十九度あるくせに強がってんじゃねえよ、黙って大人しく看病されとけ』
    「それ解熱剤飲む前の話でしょ」
    『冷蔵庫もガラガラだったくせに?』
    「それはあなた達三人が色々買い物してくれたから解消した。夕飯も作ってくれたし、掃除もしてくれた。もうこれ以上何もしなくていい」
    『でも、お前が死んだら嫌だ』
     尾形が不安混じりの声を出す。
    「予防接種したし、インフルエンザごときで死にはしない。あなた達、全員まずは自分のこと心配しなさいよ」
     それからもしばらく言い争いは続いたが、三人とも我が家まで電車で来ていたらしく、さすがに終電の時間が近づいていたので、今日のところは夫達が折れた。しかし、看病するしないの論争が、一向に決着鵜がつかない。
    『だけど、お前が治るまで毎日通うからな』
    「だからもう来なくていいって」
     互いの意見が対立したまま膠着しかけた時、話を動かしたのは息子だった。
    『でも、俺的には毎日誰かが来て家事手伝ってくれたほうが助かる。そうしたら、学校にも部活にも集中できるし』
     息子という強力な味方を手に入れた元夫たちは、「樹もこう言ってるが?」という無言の圧力を画面越しにかけてきた。確かに負担が大きすぎる。そう言われると、私は何も言えなくなった。
     結局、渋々ではあるが元夫たちの提案を飲み、彼らには私の熱が下がるまで家事手伝いをしてもらうことになった。
     尾形が朝洗濯物を干し、昼食と夕食をまとめて作ってから自分の経営するレストランへ向かう。そのあと、夕方に定時で退社してきた菊田が必要なものの買い出しをして、風呂を掃除し、洗濯物を畳む。夜には店を早めに閉めてきた尾形が再び来て、菊田と息子の三人で夕食を食べる。二人は毎回ついでに泊まろうとしていったが、それは断固として許さなかった。
     月島は最初の夜以降我が家に訪れることは無く、一日に一回安否確認の電話をかけてくるだけだった。
     とにかく、実に予想外のところからの支援者のおかげで、この一連の狂乱は終結したのだった。


    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


     熱が下がった日の朝。
     起床した直後から体の動きが異なった。倦怠感がない。視界のふらつきがない。関節の動きもスムーズだ。カーテンを開けた先に見える外の景色も、いつもより鮮やかに見える。体温計で測った結果は三十六度五分。完治だ。
     私は大きく伸びをして、台所へ向かった。午前七時過ぎだが、朝練のために息子はもう家を出ていた。
    『平熱に戻ったので、もう家事手伝いは不要です。ご協力ありがとうございました』
     朝食を食べながら元夫三人にメールを送信する。すると、真っ先に尾形から『よかった』と、十分後に菊田から『体調が戻ってよかった。快気祝いに、食事にでも行かないか。樹も一緒に』と返信が来た。菊田の誘いは断った。
     もうこれで、彼らと関わることは恐らく二度とない。そう考えると、気分もいくばくか晴れやかになった。離婚した夫と会うというのは、想像以上に心的負担が大きい。
     熱が下がれば、外出できないことと仕事ができない以外は普段通りの生活だった。洗濯機を回して洗濯物を干す。家の掃除をして、足りないものを近所のスーパーに買いに行く。しかし体調がすこぶる良いとは、何と快適なことか。
     今日の昼食は少し贅沢をすることにした。いつもは行かない、近所のイタリアンレストランに行った。快気祝いだと思えば丁度いい。調子に乗って、ワインも飲んだ。運ばれてくるもの全てが五臓六腑に染みわたる程に美味しい。
     上機嫌で帰宅した後は、昼寝をした。途中月島からの電話で起こされた。内容は、いつもの体調確認ともう一つ報告事。寝起きのぼんやりとした頭で、最適な応答が出来たのか自信がない。
     その後再放送のドラマを見ていたら、いつの間にか再び眠っていたらしい。はっと起きたらまさかの夜六時。そこから慌てて夕食に取り掛かる。
     あと米が炊けたら夕食完成、というところで息子が帰ってきた。
    「体調治ったっぽいね」
    「お陰様で」
    「この四日間、大変だったー」
    「普段の母の苦労が分かったかね?」
    「身に染みるほど理解しました。本当、いつもありがとうございます」
     大げさなほどに拝み倒してくるので、思わず笑ってしまった。
     手洗いうがいの後、夕飯を食卓に並べるのを手伝ってもらう。
    「トーナメント表見たけど、明日の会場結構遠くない?しかも試合午前中でしょう。車で送っていこうか?」
    「病み上がりで無理しない方が良いと思うけど。別に電車でいけないことないし、杢さんあたりに言えば車出してくれると思うな」
    「まあねえ」
     嬉々として息子を後部座席に乗せ、颯爽と車を走らせる菊田の姿が容易に想像できる。血の繋がりがないにも関わらず、離婚相手の息子を未だに可愛がってくれるのはありがたい。
    「杢さんから、母さんの快気祝いってことで、三人で食事行かない?って話来たんだけど」
    「あなたのところにも連絡してたの。私はもう断ったから、二人で行って来れば?」
    「主役不在で、男二人でいいとこのレストラン行くの意味ないだろ。そんなに元夫に会うの嫌?」
    「いやだねえ」
    「何で。みんな優しいし、いい人なのに」
    「そりゃあ、あなたから見たら可愛がってくれて、元々一緒に住んでたおじさん達でしょ。元妻としては、三人それぞれと色々あるのよ」
    「ふーん」
    「それに、樹だって元カノ三人が同時に集結したらどんな気分になる?」
     ミネストローネを器に並々よそいながら、息子は「ああ」と苦い顔をした。
    「今よーく分かった」
    「理解していただけたようで何より」
    「三人とはもう会わないの?」
    「私はね。多分二度と会わないと思う」
     今日の夕食は、ハヤシライスにミネストローネ、それにレタスとハムのサラダ。一人で贅沢なランチをした分、あまり手の込んでいないもので悪いな、と心の中で息子に謝罪する。
     夕食を食べ始めても、息子は話題を変えようとはしなかった。
    「それにしても、基さんと母さんが並んでるところ初めて見たな」
    「あなたが喋り始める前に別れたから当たり前よ。写真類も全部置いていったし。逆に、私はなんであなたが月島の連絡先知ってるのかを知りたいんだけど」
    「自分で聞きに行った」
    「聞きに行った?」
    「基さんが交番勤務だったときに、交番教えてもらって突撃訪問した」
    「え、本当?」
     思わずハヤシライスを口に運ぼうとした手を止め、向かいに座る息子の顔を穴が開くほど見つめる。
     教えた相手は恐らく、月島に私の様子を見に行くよう指図したあの友人だろう。しかし、その友人からも、もちろん息子からも、今まで月島に会いに行ったとは一度も言われたことがなかった。
    「それって、いつのこと?」
    「小学生の頃」
     どうして教えてくれなかったの、と言いかけてはっと気が付いた。その頃はまだ菊田姓を名乗っている頃だった。喉仏の真下で飲み込み、代わりの言葉を出す。
    「気遣わせたね。ごめん」
     息子は首を横に振った。
    「今はみんなとそれぞれ好き勝手会いに行ったり、ご飯食べに行ったりしてるから。大丈夫」
    「それがいいよ。樹があの人たちを好きなんだったら、いくらだって会いに行けばいい。私は絶対に止めない」
    「……母さん」
     息子はスプーンを置いた。
    「久しぶりに元旦那たちの顔見て、離婚した寂しさ味わってんの?」
    「何馬鹿なこと言ってんのさっ」
     机から身を乗り出し、息子の前髪をかきあげてデコピンを一発くらわす。「痛てえ」と額を抱えてうずくまる息子を見つつ、椅子に座りなおした。
    「あの人たちと、夫婦という関係を辞めたことは後悔してないよ。ただ、あなたから三回も父親を奪ってることに変わりはないから」
     息子が意外そうな目をこちらに向ける。子供の前で、このことについて触れたのは初めてだった。
    「月島の時はともかく、菊田さんの時は相当嫌がってたもんね」
     別々に暮らすだけで一生会えないということではないと何回説明しても、親の離婚とは小学生の息子にとってすぐに受け入れがたい事実であったらしい。離婚し二人暮らしとなってからしばらくは、あからさまに塞ぎ込んでいた。離婚原因に関して息子には何の非もない分、私にはどうしようもなかった。
     その体験があったからだろうか、尾形との離婚の時は逆に「わかった」との一言しか言わなかった。
    「菊田さんや尾形と一緒にいても良かったのに」
     うっかり本音が漏れる。途端、息子は珍しく鋭い目をして私をしかと見た。
    「そんなこと、二度と言うなよ。母親だろ」
     彼は強い語気で言い切ったあと、何事もなかったかのように再びハヤシライスを食べ始めた。
     しかし、唐突に顔を上げて突拍子もないことを言い出した。
    「ねえ、母さん。俺今度の大会優勝するから。決勝戦までに父親達と仲直りして、決勝はみんなで見に来てよ」
    「はあ?」
     優勝宣言、それはいい。なぜそこに元夫達との和解が課題として入ってくるのか。
    「単に見に来てほしいんだったら、あなたから言えばいいじゃない」
    「それじゃあダメなんだって。母さんから言わないと。三人とも、母さんと仲直りしたいんだよ」
    「あのね、あなたが優しいのは分かったから。どうしてもやれっていうなら、明日の試合でスリーポイント十本決めてきなさい」
    「分かった」
     無理難題を吹っ掛けた自覚はあるのだが、息子は平然と頷き返した。返って私の方が狼狽えるくらいだ。
     そして翌日。
     息子のチームは、無事に初戦を突破した。そして昨夜の宣言通り、彼はその試合中でスリーポイントを十本どころか、十三本決めた。
     さて、どうしたものか。
     感嘆の声を上げる他の母親達の中、密かに私は深いため息を吐いた。
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