雪は懇々と降り駸々と積もる。
いつか訪れたノースメイアの雪景色と比べれば見劣りするものの、例年の東京の積雪量を遥かに超えた雪はあっという間に街中を白く染めていく。慣れない雪道に足を取られながら、悠は待ち合わせに遅れぬようにと急ぎ足でトウマの自宅へと向かっていた。
チャイムを押せば、十数秒後に扉は開かれる。悠と大差ない時間に室内へ招かれたのか、家主であるトウマの代わりに鼻先が赤く染まっている虎於に迎え入れられて玄関に足を踏み入れた。瞬間、ふわっと食欲を唆る香りが鼻を掠める。
「ごめん、もう始めちゃってた?」
「 いいや、まだだよ。ミナからちょっと遅れそうだって連絡きたからさ、鍋はもう煮込んでる最中だったし今のうちに簡単なつまみでも作っちまおうかと思って。腹減ってるなら先につまんどくか?」
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