天蓋の烏輪 物音がした気がして瞼を開ける。眩しいまでの陽光が見慣れない瀟洒な部屋を包んでいる。その要因はどうやらいつも通りカーテンを開ける恋人らしかった。ぼくのスケジュールをよく覚えていて、こうやって起こしたり昼まで寝かせたりしてくれる。もう少し昔は逆だったのに。そういえば、昨日は日付を超えるまで起きてようとしていたんだった。でも旅先の疲れが出ていたらしい。
「……寝ちゃったんだね」
「疲れてたしな。もう少し寝かせてやりたかったけど、朝食があるから」
と、言いながら当の蔵内もベッドに戻って来るのが何だかおかしかった。髪はいつも通りセットされてるから、二度寝に耽るつもりはないのだろうけど。
「誕生日おめでとう」
「ありがとう」
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