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    さわら

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    さわら

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    ミライが校長室に行く話。カカイル前提
    前の話 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20474336

    「困ったことがあったら、アカデミーの校長室へおいで」
     それは湯の国への任務を終えて、木ノ葉隠れの里へと帰って来た時のことだった。任務の打ち上げと称して食事をしたあと、その別れ際に六代目火影がミライにそう言ったのだ。
     しかもウインク付きで言われ、見た目に似合わずお茶目な人だとミライは思った。ミライの父とは歳が近く友人だったらしいが、自分の父もこんな感じだったのだろうかと勝手に想像する。
     その時ミライは、六代目火影に授けられた〝将棋で師に勝つための策〟を手にして意気揚々としていた為、火影の発言を何も疑いもせずに「わかりました!」と元気よく答えたのだが、あとになって首を傾げることになった。
     なぜ、アカデミーの校長室なのだろうと。
     今の忍者アカデミーの校長は、うみのイルカが務めている。ミライも散々お世話になった、アカデミーの先生だ。以前まではアカデミー校長は火影が兼任していたのだが、七代目火影になってからはイルカが校長に任命された。
     イルカが最後に担任をしたのがミライの代だった。それも低学年の時だけだったが、ミライには思い出の先生の一人だった。厳しくも楽しかったアカデミー時代を思い出して、ミライは懐かしくなった。
     以前までは火影が兼任していたので、先代のアカデミー校長は先代の火影ということになる。つまり六代目火影、はたけカカシだ。
     しかし、先代の校長が「困ったら校長室へおいで」と言うものだろうか。校長室には現職のイルカが居るだけのはずである。でも「おいで」と言ったのだから、カカシもそこに居るのだろう……居るのだろうか? 困ったことがあったらアカデミーの校長に相談しろ、という意味だったのかも知れない。
     もしかして言葉裏で邪険にされたのだろうかとミライは思った。しかし、そんなことはないはずだ。それなら最初からミライの相談を親身になって聞いてくれる訳がないし、師に勝つための策を授けてくれるはずがない。
     ミライは師であるシカマルに将棋を挑んだあと、その結果をカカシに報告しようと思っていた。結果は最初の一戦だけは勝てたが、あとは惨敗だった。やったことのない変則将棋でもシカマルはすぐに対応策を講じて、ただでさえ弱いミライはあっけなく負けたのだった。
     やはり将棋でも忍びらしく地道に修行をするしかないのだと、ミライは思い知ったわけである。そこで六代目火影に改めて相談して、将棋の稽古を付けてもらえないかとお願いするつもりだった。流石にミライも悔しかったのだ。
     六代目火影には困ったら校長室に来るようにと言われていたが、校長室に行ってもイルカが居るだけで火影には会えないと思い、どこへ行ったら六代目火影に会えるのか、ミライは知っていそうな人に尋ねることにした。
     まずは七代目火影。ミライは普段、七代目火影の付き人をしていた。火影補佐見習い、だと自分では思っている。里の長である火影に聞けば分からないことなどないはずだ。
    「え、六代目に会いたい? カカシ先生かあ……たまに火影室に来るけど、あの人結構ふらふらしてるからなぁ」
     現火影に聞いても結局分からず、次は火影補佐を務めている自分の師、シカマルに尋ねた。なぜミライが六代目火影に用があるのか、師には知られたくなかったからどうにかして誤魔化したが、わざわざ聞いた甲斐もなく六代目火影の居場所は分からなかった。
     他にも七代目火影と同世代の大人何人かに聞いてみたが、六代目火影の居場所を知ることはできなかった。ただ、彼らはみな口を揃えてこう言った。「アカデミーの校長室に行ったらいいんじゃない?」と。
     数日かけて尋ねて回り、ミライはどっと疲れてしまった。アカデミーには居ないと思ったから聞いて回っていたのに、結局アカデミーへ行けと言われることになるとは思ってもいなかった。しかも、困り果てて家で母に聞いたら、母まで同じことを言うのでミライはビックリした。
    「アカデミーの校長室に行ったら会えるんじゃない?」
    「なんで!? みんなそう言うんだけど!」
    「なんでって……六代目にもそう言われたんでしょ? 人に聞かないで最初から行けばよかったじゃない」
     あんたなんでも考えすぎなのよ、と母は呆れたように言った。父さんとそっくりね、と。母の言い方にはちょっとむかついたが、父にそっくりと言われると悪い気はしなかった。
     拗ねたミライに向かって、母はこうも言った。
    「行ったら分かるわよ」
     そう言われても納得はいっていなかったが、翌週の平日に非番があったので、ミライはその午前中に母校である忍者アカデミーを訪れた。懐かしの学び舎に入り、ちょうど休み時間だった職員室に顔を出して知っている先生に挨拶をしてから校長室へと向かった。
     何も考えずにアポ無しで来てしまったことを、ミライは少し後悔していた。せめて今日行くと事前に話を通しておくべきだったかもしれない。七代目火影に大丈夫でしょと言われたのを真に受けて来てしまったが、七代目火影はアポ無しで行っても大丈夫だろうが、ミライはただの火影補佐見習いである。突然押しかけて大丈夫なはずがない。しかし来てしまった以上今更帰るわけにもいかないと、なぜかミライは意固地になっていた。
     よく考えれば恩師に会いに来ただけだ。さっき職員室に顔を出した時のように、イルカは立派になった卒業生の訪問を喜んでくれるはず。ミライは自分にそう言い聞かせて、校長室の扉を慎重に叩いた。
     慎重になりすぎたのか、ノックの音はやけに小さかった。もしかして部屋の中に聞こえていないかも知れないと一瞬不安になったが、すぐに部屋の中から声が返ってきた。イルカの穏やかな声だった。
     ミライは扉を静かに開けて、校長室に入った。
    「失礼します。こんにちは、校長先生……ご無沙汰しています」
     扉を閉めて姿勢よく立ち、少し緊張しながら挨拶をした。イルカに会うのは久しぶりだった。
     校長室は火影室の半分の広さもなく、やや手狭に感じられた。手前に応接セットがあり、奥の窓際を背にして机が置かれている。忍者アカデミーの校長、イルカは机に向かって書類仕事をしていたようだった。
    「誰かと思えば……久しぶりだね。どうしたんだい、こんなところに。あ、七代目のお遣いかな?」
     イルカはミライを見ると、落ち着いた声でそう言った。ミライは応接セットの椅子のうしろを通って、イルカの前まで進んだ。
    「あっ、いえ! 七代目のお遣いではないんですけど、ここへ来るようにと言われまして……」
     ミライは慌てて答えてから、イルカの表情を見てこれだけでは伝わらなかったと気づき、余計に慌てた。イルカは黙って聞いているが、落ち着いて話しなさい、と穏やかな目が言っている。
     ミライは一呼吸置いてから、改めて事情を話し始めた。
    「実は、先日六代目の任務にご一緒しまして……」
     六代目火影に悩みを聞いてもらったこと、シカマルに勝つための策を授けてもらったこと、シカマルとの対局を終えて六代目に報告と相談に来たこと……ミライはイルカにかいつまんで伝えた。
     ようやく事情が分かったイルカは、なるほどと納得してから短く溜め息をついた。
    「仕方ないな、あの人は」
     イルカは確かにそう呟いた。あの人とは六代目火影のことだろうか。アカデミーの校長先生がそんなことを言うとは、ミライには少し意外だった。
    「ここに来るよう言われたので、何も考えずに来てしまったのですが、やっぱり六代目はいませんよね……」
     校長室にはイルカしか居なかった。みんながこぞって校長室へ行けと言うので、アカデミーの校長室に六代目火影の席があるのかと思ったが、そんなことは無かった。
     イルカはミライの様子を憐れむように見ていたが、やがてやさしく声をかけた。
    「ミライ、今日はまだ時間あるかな?」
    「えっ。はい。今日は非番なので大丈夫です」
     ミライが不思議に思いながら答えると、イルカはそれはよかったと笑みを見せた。ミライはよく分からないまま、イルカのやさしい笑みを見て自然と期待を覚えた。
    「六代目はしばらく待ってれば来るから、ここでお茶でも飲んで待ってなさい」
    「えっ! ほんとですか!?」
     ミライは嬉しさから思わず笑顔になった。イルカは笑いながら席から立ち、ミライに応接用の椅子を勧めた。すると机の陰から子犬が現れ、イルカの足元にまとわりついた。
     ミライはまるっこい子犬を見て、抗いがたいモフモフの可愛さに心を鷲掴みにされ、だらしなく顔を緩めた。
    「わあ、かわいい! 校長先生の忍犬ですか?」
    「ああ、この子はね……ここの番犬」
     イルカは腰を屈めて忍犬を抱き上げ、ミライの前に連れて来てくれた。子犬はイルカにだっこされて、ふわふわのしっぽをぶんぶん振っている。
    「触ってもいいですか?」
     ミライがイルカに尋ねると、子犬は自ら身を乗り出してそこにあったミライの手のにおいを嗅ぎ、それからぴんと立っていた耳を少し横に寝かせた。触っていいぞ、と言っているようだった。ミライが撫でると、子犬は目を閉じて嬉しそうにする。そんな表情をされると、ミライも嬉しくなった。
     イルカはそんなミライと子犬のやり取りを微笑ましそうに見ていたが、何か思いついたのか「そうだ」と呟いた。
    「この子に六代目を呼んできてもらおう」
    「えっ?」
     イルカはミライに視線を向けて笑みを浮かべると、子犬を窓辺へと連れて行った。机の奥にある大きな窓を開ける。
    「いいかい。カカシさんを連れてくるんだよ」
    「アン!」
     小さな忍犬は元気に吠えて返事をすると、イルカの手を離れ、窓から外へ飛び出して行った。
     校長室は校舎の一階で、ミライが窓辺に近づくと、転がるように駆けていく子犬の姿が見えた。その姿はすぐに茂みの中に隠れてしまい、ミライは少し心配になった。忍犬とはいえ、子犬はまだ幼く見えた。あの子犬が、本当に六代目火影を呼んできてくれるのだろうか。
     しかしイルカは子犬が六代目火影を連れて来てくれると信じているようで、窓を閉めると改めてミライに座るように勧めた。
     ミライは促されるまま応接用の椅子に座った。立派な革張りのソファで少し緊張する。イルカは二人分のお茶を用意して、ミライの向かいの席に腰を下ろした。
    「さて……それじゃあ、待ってる間にさっきの話を詳しく聞かせてくれるかな」
     それはつまり、ミライの相談を六代目火影だけではなくイルカも聞いてくれるということだった。ミライは一気に心強くなり、イルカに事の詳細を話し始めた。
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