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    さわら

    @sawaragomu
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    さわら

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    いのちゃんとカカイル。書き途中
    ※いのはイルカ先生が片想いしていると思っている

    イルカ先生を応援したい! 思っていたよりのんびりと過ぎた一月が終わる頃、一週間だけ火影室の仕事を手伝って欲しいとアカデミー経由でイルカに依頼があった。火影室では年末に溜め込んだ書類の処理が追い付いていないらしく、年度末を迎える前になんとかしたい、ということだった。
     アカデミーではこれから卒業試験、入学試験、卒業式に、下忍となる卒業生の引き継ぎ、そして新年度……と行事が続く忙しく、生徒たちにとっては大事な時期だった。その為職員室では結構な顰蹙を買ったが、火影命令を突っぱねる訳にもいかず、イルカは二月に入ってから一週間、アカデミーの授業以外の時間は火影室付きとして働くことになった。
    「イルカ先生、アカデミーも忙しいのにごめんね……」
     イルカが手伝い初日に火影室へ顔を出すと、カカシは書類に囲まれた席で申し訳なさそうにそう言った。因みに隣の事務室にはそれ以上に書類が積まれていた。
    「カカシさんが謝ることじゃないですよ。どの道誰かが手伝わなきゃいけないんだし」
     それなら過去に手伝ったことのあるイルカが選ばれるのは当然の人選だった。火影補佐のシカマルや火影室付きの事務員とも知り合いなので話が早い。それにイルカとしては、カカシの側で働けることは純粋に嬉しかった。
    「カカシさんに頼ってもらえて嬉しいです」
    「イルカ先生……」
     もう少し傍に来て、とカカシの目が訴える。書斎机の正面に立っていたイルカは、前に出て机のすぐ側に立った。手を伸ばせば席に座っているカカシにも届く。
     カカシがイルカに手を伸ばして触れようとした時、火影室の扉がノックされた。イルカが咄嗟に一歩下がると、カカシの手が残念そうに引っ込められた。
    「どうぞ」
     カカシが部屋の外へ声を掛けると、火影室の扉が静かに開いた。入って来たのはまだ若いくノ一で、イルカもよく知っている人物だった。
    「失礼します……あれっ、イルカ先生!? 久しぶり! なにしてるの?」
     いのは火影室に入るなりイルカの姿を見て驚いていた。アカデミーの頃と変わらず元気に挨拶してくれる。
    「今週だけ火影室の仕事手伝ってるんだよ」
    「へー! あ、ごめんなさい! 火影様、何のお話ですか?」
     いのはお喋りしたそうだったが、すぐに火影の方を向いて改まった。
    「じゃあ俺は失礼します」
    「あ。イルカ先生も居て」
     退室しようとしたイルカをカカシが呼び止める。イルカはカカシの思惑は分からなかったが、壁際まで下がって控えた。
     差し迫った用件では無いようで、カカシの声は始終穏やかだった。
    「来月アカデミーの卒業式だから、君のところで花を頼みたくて」
    「あー! なんだ、お花のご用命ですね! 毎度ありがとうございます!」
     いのは両手を胸の前辺りで組んで、急に営業スマイルになった。彼女の家は花屋で、里で式典などがあると火影から仕事を請けていた。毎年あるアカデミーの卒業式や入学式もそのひとつだ。
    「入学式の方も一緒に頼んでいい?」
    「もちろんです。色とか種類とか、ご要望はありますか?」
    「予算内で任せるよ。大きさとかはイルカ先生と相談して」
     カカシはイルカに顔を向けて「よろしく」と言った。その為にイルカを退室させず火影室に残したらしい。
     ぼんやりと話を聞いていたイルカは、突然カカシに声を掛けられてハッとなった。カカシが咎めるような視線を向けている。
    「……はい。わかりました」
    「用件はそれだけ。わざわざ呼びつけてごめんね」
    「いえ。お花の注文ならいつでもどうぞ! 個人的な花束もお届けしますよ」
    「んー。今のところ花を贈る予定はないかな」
     火影がダメと分かると、いのはイルカの方を向いた。看板娘と評判の営業スマイルを見せる。
    「イルカ先生は?」
    「俺も間に合ってるよ」
    「だと思った!」
    「オイ」
     イルカは火影の前だということを忘れて生徒を相手にするノリで突っ込んでから、慌てて咳払いした。カカシは、多分マスクの下で笑っていた。
    「すみません、六代目。いの、隣で詳しく話そう」
    「はーい!」
     火影室の隣には事務室があって、そこで詳しい話をすることにした。二人で火影室を退室する。
     廊下に出て火影室の扉を閉め、すぐ右手へ向かおうとすると、突然いのがイルカの腕を抱えるように掴んだ。イルカが驚いて顔を向けると、いのはイルカを見上げてニヤッと笑った。
    「イルカ先生ってさあ、六代目のこと好きでしょ?」
    「っ!?」
     思いもしなかったことを言われて、イルカはつい大声を出してしまった。慌てて声を潜める。カカシとの関係は一応隠しているので、バレたと思って気が動転した。心臓がばくばく言っている。
    「な、なに言ってるんだ、とつぜん……」
    「イルカ先生わかり易いんだもん。あーんな熱視線、カカシ先生に向けちゃってさあ! 見ててドキドキしちゃった~!」
    「……!」
     そんな目でカカシを見ていた自覚は、イルカには全く無かった。でも彼女がそう言うならそうだったのだろう。いのは一人で楽しそうにはしゃいでいる。
    「そ、そんなにわかり易かったか?」
     イルカが不安になって訊ねると、いのはパッと笑顔になった。彼女の大きな目がイルカを見上げてキラキラ輝いた。
    「え~、やっぱり! イルカ先生、カカシ先生のどこが好きなの?」
     どうやらいのは半分鎌をかけていただけだったようだ。イルカは自分の軽率な反応を後悔したが、もう誤魔化せない。
    「どこって……。……いいだろ、別に」
    「いいじゃん、教えてよ~! 私、協力するよ!? イルカ先生には幸せになって欲しいし!」
     教えてと言われて話せる訳がない。ひとつ答えたら絶対もっと訊いてくるだろうし……イルカが一向に答えないでいると、いのはちょっと拗ねた顔をしてイルカを睨んだ。
    「じゃあ私の話聞いてよ! 可愛い教え子の話なら聞いてくれるよねー?」
     いのは自分の話をしながらイルカに誘導尋問でもするつもりだろう。彼女の話に付き合ったらイルカは話してしまいそうだった。この勢いで根掘り葉掘り聞かれたら黙っていられる自信がない。
     イルカは可愛い教え子を見ながら、女子ってこわい……と思った。
     強引に話題を変える。
    「その前に仕事の話!」
    「え~。はーい……」
     いのは渋々ではあったが、返事をしてイルカから離れた。事務室へと先に向かおうとする。火影室のすぐ隣なので何歩も掛からない。
     いのが事務室の扉を開ける前に、イルカは彼女を呼び止めた。
    「なあに、イルカ先生?」
    「……人に言い触らさないでくれよ。あの人に迷惑が掛かったら困る」
     イルカが照れながら言ったからか、それを見ていたいのは顔を赤くさせた。イルカの言葉は、彼女にとっては燃料にしかならなかったらしい。
    「イルカ先生! あとで一楽行こ!? 絶対話聞くから! 誰にも喋らないからあ~!」
     イルカはあわよくば彼女の追及から逃げられるかと考えていたが、もう断ることが出来なかった。
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