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    さわら

    @sawaragomu
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    さわら

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    七代目にも息抜きできる場所があったらいいなぁと思って書きましたが、カカイルが書きたくなったのでこうなりました。後半だけカカイル風味です。

    「薬草園を作りたい?」
     カカシは火影室の真ん中に立ったサクラを見て、耳に入って来た言葉をそのまま声に出して聞き返した。ちょうどその場に居て書棚の整理をしていたシカマルとナルトが手を止める。
     サクラはカカシの反応を見て、彼女の師匠のように強気に笑った。
    「そう! 里も落ち着いて来たし、前からやりたいと思ってたの」
     木ノ葉隠れの里は野山に囲まれており、植生は豊かだった。その為薬草といえば自生している物を採取してくれば大抵事足りていた。薬草園もあるにはあるが、規模が小さく少し大きな民家の庭程度のものだった。
    「砂隠れに行った時に見せてもらって、いいな〜って思ってて。温室作れば珍しい薬草も育てられるし、そしたら新しい薬も作れるかも知れないし」
     サクラは他にも利点を並べ立てて力説した。
     カカシは話の後半辺りからぼんやりしてサクラの声を聞いていた。かつてカカシと同班だった子が同じことを言っていたなと懐かしく思ったのだ。大戦の最中に大きな薬草園を作る余裕は無く、大戦が終わったら終わったで他国との交易が盛んになり、大きな薬草園を持つ必要が無くなった。
     結局木ノ葉隠れの里には小さな薬草園しかないまま今に至る。それが今になって彼女の悲願が成就するのだと思うと感慨深かった。
     カカシの前ではサクラが演説をぶっている。
    「賛同者が必要なら……」
    「いや、いいよ。とりあえず調査報告書を作ってくれれば会議で通すから」
     それを聞いてサクラはパッと笑顔になった。
    「流石カカシ先生! そう言うと思って作ってきました! 賛同者の署名もいただいて来てます」
     サクラはそう言って、脇に抱えていたファイルをカカシに差し出した。企画書まできっちり作って、資料も添えてある。賛同者の署名一覧には先代火影である綱手の名前と、後の方にイルカの名前もあった。
    「仕事が早いね……」
     カカシは感心というよりはやや呆れながらサクラを見遣った。でしょ、とサクラが出会った頃と変わらぬ得意気な顔を見せる。
     カカシはファイルを机に置いてサクラに顔を向けた。
    「会議通してからにはなるけど、すぐ取り掛かれるように準備はしといて。責任者はサクラ。ナルトも手伝え。あと、いのにも協力してもらおう。必要な物はシカマルに手配してもらって」
    「はい! やったあ!」
     サクラは真面目に返事をしたあとに、ピョンと飛び上がって喜んだ。師匠と姉弟子に報告しなきゃと浮かれている。
     話がまとまってカカシも書類仕事に戻ろうとすると、それまで書棚の前で黙っていたナルトが声を上げた。
    「ちょーっと待ったあ!」
     カカシとサクラはなんだよと言わんばかりにナルトの方を向き、構わず書棚の整理を続けていたシカマルもナルトに顔を向けた。
    「なんでオレ!? もっとこう……パッとした任務が良いってばよ!」
    「なによ、いいじゃない! 綱手様も賛同してるのよ。これがパッとしないってんなら、どんな任務ならいいのよ」
     ナルトとサクラが言い合っている。ナルトはサクラに言い込められて早速負けそうだった。
    「ナルト、おまえ植物育てるの好きだろ。それに火影になった時の為に今から関わっといた方がいいぞ」
     カカシはそう諭したが、ナルトが文句を言った理由も少しは分かっていた。彼は同期たちより遅れて中忍になっており、現在の里の規定では、上忍になる為に中忍として一定以上の任務をこなした上で上忍の推薦状が必要となる。ナルトは任務の数が足りていなかった。あと少し早く中忍になっていれば、今よりは楽に上忍になれたのに、なんとも運の悪い英雄である。
     カカシは席を立つと、ナルトを側に呼んだ。不満そうに側まで来たナルトの肩を抱いて、書斎机の後ろの窓際へと連れていく。
    「なんだってばよ、カカシ先生?」
    「あのな、これは現火影として次の火影への助言なんだが、仕事の息抜きに逃げ込める場所は作っておいた方が絶対にいいぞ」
     カカシはナルトにだけ聞こえるように、こそこそと話した。喋りながらチラチラ後ろに視線を向ける。さっきまでカカシが座っていた席には、山ほど書類が積まれていた。今日は朝からやってるが減る気がしない。これを息抜き無しでやり続けるなんてどうかしてる。
    「な、なるほど……?」
     ナルトはカカシの視線を辿って書類が溢れている机に目を向け、カカシの言いたいことを理解したようだった。心なしか顔が青くなっている。ナルトが火影になったらこの書類仕事を全部自分がやることになるのだから、それはそうだろう。
     カカシはナルトを放して自分の席に戻った。今度こそ話がまとまったからだ。
    「じゃあこの件はキミたちに任せたから。解散」
     カカシがそう言って話を切り上げると、サクラは意気揚々とナルトを引っ張って行った。いのを加えて早速作戦会議でもするのだろう。
     シカマルは火影室に残っていたが、書棚整理の手伝いが居なくなってしまい、面倒くさそうに溜め息を吐いていた。書棚整理はまだ半分も終わってないようだった。
     シカマルは作業を再開する前にカカシの方に顔を向けた。
    「六代目、あいつになんて吹き込んだんですか?」
    「んー? ひみつ」
     カカシが可愛く装った声で答えると、シカマルは一層面倒くさそうな顔をして「そーすか」と口にし、書棚整理に戻った。
     カカシも書類仕事をするつもりだったが、書棚に向かうシカマルの姿を見ているうちに、ふと思い立って席を立った。あわよくばこっそり出て行こうと思っていたが、背後を通り過ぎた辺りで気づいたシカマルが振り返った。
     どこへ行くのかと問いたげなシカマルに、カカシは軽く笑いかけた。既に扉の前まで来ていたカカシは、外出を阻止される前に腕を伸ばして火影室の分厚い扉を押し開けた。
    「ちょっと出てくるね」
     シカマルは渋い顔はしていたが、別に止めたりはしなかった。サボりに理解のある部下で大変助かる。
    「サボると事務員が泣きますよ。ただでさえ溜まってるのに」
    「あとでやるから」
     カカシは苦笑いしながらそう答えて、そそくさと火影室を出ていった。


    *


    「それで、あなたはここで息抜きですか?」
     話を聞いていたイルカが、少し呆れたように言った。そこは校庭が見渡せるアカデミーの屋上だった。すっかり立派になった教え子たちの話を聞いたからか、イルカはなんだか機嫌が良さそうだった。
     カカシはイルカの横で、屋上の柵の手すりに腕を乗せてもたれていた。ぽっかり白い雲が浮かんだ空の下で時折風が抜けて、昨日からずっと屋内に居た身には気持ちがよかった。
     校庭からは、きゃあきゃあと楽しそうな子供の声が聞こえて来る。授業の合間の休み時間だった。小さい子らは休み時間の度に外に出てああして遊んでいるらしい。元気が有り余っている。
     カカシがアカデミーに通っていたのは短い期間で特に思い入れも無い場所だったが、火影にってからは何故かお気に入りの場所になった。
     こうして賑やかな生徒の声を聞くのも好きだったし、たまに授業に飛び入り参加するのも楽しかった。それに、ここに来ればイルカに会える。
    「好きなんだよね、アカデミーに来るの」
     カカシは隣に立つイルカに目を向けて答えた。不意に強い風が吹いて、イルカが風下に顔を向ける。イルカの表情は見えなかったが耳の先が赤くなっていて、カカシはこっそり笑った。
     カカシがもう少しからかおうかと思っていると、先制するようにイルカが咳払いをした。
    「休み時間が終わるので、そろそろ戻りますね。……カカシさん、授業見て行かれます?」
     カカシは誘って貰えたと思ってパッと笑顔になった。
    「イルカ先生の授業なら喜んで」
     ところがカカシそう答えると、イルカは嬉しそうな、迷惑そうな、少し複雑な表情になった。
    「なにその顔」
    「えっ。いや……嬉しいんですけど、ちょっと迷惑かなって」
     イルカが苦笑いする。火影相手に率直すぎるが、カカシは別に怒らなかった。
    「ひどいなあ」
    「でも生徒はきっと喜びますよ」
     イルカは先生の顔でニコニコ笑って、行きましょうとカカシを促した。イルカの案内で教室へと向かう。
    「授業終わったら火影室に戻ってくださいね」
    「はぁい、先生」
     カカシはイルカの後について、のんびりと返事をした。
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