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    さわら

    @sawaragomu
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    さわら

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    9月に書きました…まだ書いてます…
    カカイル+忍犬

     頼みがあるとカカシの忍犬たちがイルカの家にやって来たのは、九月十四日の早朝のことだった。まだ寝ていたところに玄関の呼び鈴が一回だけ鳴らされ、イルカが目をこすりながらドアを開けてみると、そこには見慣れた忍犬が八頭、大人しく座ってイルカが出てくるのを待っていた。
     外はようやく白み始めた頃だった。いつもならイルカもまだ寝ている時間だ。そんな時間にカカシの忍犬たちが何の用かとイルカは疑問に思った。彼らが早朝に散歩していることは知っていたのでそのお誘いかとも思ったが、肝心のカカシの姿は見当たらない。まさかカカシの身に何かあったのかと一瞬嫌な思考が過ぎったが、彼らの雰囲気からするとそんな切羽詰まった状況でも無さそうだった。
     でもイルカに用があって来たことは確かだった。
    「おはよう。こんな早くにどうしたんだ?」
     イルカは玄関を出た所でしゃがんで忍犬たちに挨拶をし、傍に寄って来た子を順番に撫でた。すると撫でられてはしゃいでいる子たちの後ろにいた一匹が、イルカの方を見上げて「頼みがあって来た」と言った。
    「頼み?」
    「そうなの。おれたち、イルカにお願いがあって来たの」
     ちょうどイルカの手に撫でられていた人懐っこい忍犬が、潤んだ目でイルカを見上げてそう言った。
     カカシの忍犬たちが揃って自分に頼みとは、イルカは一層不思議に思った。カカシと付き合い始めてから忍犬を家に泊めることも多かったが、こんなことは初めてだった。
     イルカは彼らを家に上げて話を聞くことにした。
     カカシとの交際は春の終わり頃から始まり、イルカはカカシと親しくなると同時に彼の忍犬たちとも仲良くなった。一緒に散歩に行くこともあるし、カカシからの伝言を届けて貰うこともある。忍犬が家にやってくるとそのまま泊まっていくのが常で、イルカの家には忍犬の為の物が増えた。いつ来てもいいように犬用の食糧も常備してある。
     そんな状態なのでカカシは迷惑を掛けていると思っているようだが、イルカはそんなふうに思ったことはなかった。動物は好きだし子供の頃から忍犬や忍犬使いにそこはかとない憧れを持っていた為、彼らと触れ合ったり一緒に過ごせるのは楽しかった。それに、彼らはカカシとの仲をより深めてくれる。
     カカシは任務で里にいないことも多いが、その間まめに忍犬を寄越した。イルカのところに忍犬が来るのは、きっと火影への報告のついでだろう。伝令の任務を終えた忍犬はイルカの元でのんびり休んでいく。
     カカシと一緒に過ごせなくても、彼の忍犬と過ごす時間が何故かカカシとの距離を縮めてくれた。付き合って数ヶ月、カカシと共に過ごした時間は僅かだが、そうとは思えないほど親密になった。イルカは既に心も体もカカシに許しているし、カカシも他人には見せない顔をイルカには見せてくれる。カカシの忍びとしての二つ名だけを知っていた頃とは印象が全く違った。
     カカシがイルカの家に来て二人きりになると、決まって時間をかけて体を求め合った。それは忍犬たちと過ごした時間があるからだとイルカは勝手に思っていた。
     忍犬たちと仲良くなっただけカカシとも仲良くなりたいし、それ以上に深い仲になりたい。そうなれると思っていたし、実際に触れ合う前から「なれた」と思っていたくらいだった。
     忍犬がいなくても付き合うことになれば今と同じように体は繋げただろうが、そこまで親密にはならなかったと思う。なっても時間が掛かっただろう。イルカは忍犬を通してカカシを知り、親しみを覚えて、より好きになったのだった。
     それもあってイルカはこの忍犬たちのことをカカシの一部だと思って接していた。カカシにとって大事な彼らは、イルカにとっても可愛くて大切にしたいものの一つだ。

     イルカは忍犬たちの足をきれいに拭いてやってから家に上げた。飲み水を用意し、お菓子を一粒ずつあげてから改めて話を聞いた。忍犬たちはイルカの部屋で思い思いに座ったり寝そべったりしてすっかり寛いでいる。
     イルカが忍犬たちから話を聞いたところ、「あしたカカシの誕生日だから、おれたちも何かお祝いしたい」ということだった。だからイルカに手伝ってほしくて家までやって来たらしい。
     話を聞いたイルカは、かわいい子達だなと思った。カカシのことが大好きなのだろう。付き合い始めて傍で見ていると、彼らの間にある絆はイルカには羨ましく思うことが多かった。イルカが彼らとどんなに仲良くなっても、彼らの間には割って入れないし、彼らの絆以上のものはイルカには築けないだろう。
     でもイルカはカカシと、カカシの忍犬たちが大好きだったから、彼らの頼みとあれば喜んで引き受けた。それに、イルカにとっても都合が良かった。
     カカシの誕生日が今月の十五日であることはイルカも知っていた。知ったのは付き合う前の何気ない会話の中で、付き合い始めてからはカカシの誕生日が来るのを楽しみにしていた。
     しかし先月の末から任務で忙しいカカシと会う機会が無く、誕生日に一緒に過ごす約束さえちゃんと出来ていなかった。カカシが誕生日に里に戻っているのかも知らなかった。
     だから忍犬たちの申し出はイルカにとってありがたかった。カカシは今日のうちに里に戻るらしい。既に火影にもそう報告をしているようだ。
    「じゃあ、明日みんなでカカシさんのお祝いをしよう」
     早速忍犬たちと作戦会議をして、明日の夜にイルカの家でささやかな誕生日会をすることが決まった。それなら料理を用意しないとな、とイルカが思案していると、傍に居た忍犬が「ごちそう! ごちそう!」と囃し立てた。
    「ごちそうか……キミらの分はどうしようか。いっしょに美味しいもの食べたいよな」
    「肉!」
    「骨ついてるやつ!」
    「おかし〜!」
     更には、一緒に買い物に連れて行ってくれたら自分で選ぶ、と言う子までいる。イルカは困った。彼らが食べていい物はイルカには判断できない。
    「カカシさんに聞く訳にもいかないし……キバに聞いてみよう」
     イルカは教え子の一人を思い浮かべた。忍犬のことなら彼に聞くに限る。本人が留守でも家に行けば誰か教えてくれるだろう。
    「今日、犬塚家に寄ってから買い物に行くけど、誰かついて来てくれる?」
    「はーい! おれ行く!」
    「ぼくも!」
     買い物は大荷物になりそうな予感がしたので、もう一匹選んで一緒に行くことにした。残りの忍犬には別の買い物と留守番をお願いして、明日は忍犬たちにカカシを連れて来てもらうことになった。
    「でも明日急に言って、カカシさんウチに連れて来てくれるかな?」
    「問題ない。おれたちが引きずって来る」
     忍犬たちが物騒なことを言う。八匹で掛かればカカシを文字通り引きずって来れるだろうが、本人の誕生日にしていいことではない。
    「いや……それはどうかと」
    「心配しなくてもカカシなら喜んで来るよ!」
     イルカの傍にいた一匹が笑顔でそう言った。
     そうだろうか。それなら良いのだが……イルカは少し心配になりながら、明日を楽しみにしている忍犬の頭をやさしく撫でたのだった。
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