無題 おげんさん 努力が実るとは限らない。
僕は美大に受かるために必死に努力した。人の顔を描きすぎて、人の顔が見れなくなるくらい必死だった。
受かった先ではどうだ、自分は基礎力ではその中でも平均かもしれない。でも、努力ではどうにもならない才能の壁がそこにはあった。
色盲の学生が書く絵には彼の夢があり、文字から色が滲み出て見える学生は文学を美術に変換する力があった。
僕はなんだ。基礎を磨いたところで何も無いじゃないか。僕は僕として生まれたことを強く後悔した。
歪んだ気持ちを絵にぶつけて、なんとか歪んでいる自分を維持し続けた事で僕は僕としての価値が生まれていくと信じていた。そんな中出会ったのが、特殊な目を持つ2人だった。
僕が憧れるもので、とてつもなく憎いものを持つ2人を、僕は認められなかった。でも、皮肉を言って、思いっきり嫌われたところで、何故か心の隙間を埋めるような、僕の存在を本気で見ているとわかる人間になってしまった。
もっと憎んで欲しい。もっとこっちを見てほしい。なんならこれ以上この世に絶望しないために殺してしまっていいのにと、日々願う僕はもう才能と言ってもいいのではないか。僕が特別になっていく実感が少し嬉しかった。