眩と景「ゲン、眠れない?」
「んー、ううん。」
「ウソ。目、揺れてる。」
眼振、生まれつきだが、ストレスがかかると頻度が増える瞳の揺れ。
夜になると考えすぎてしまう眩の体が発する、言わばSOSである。
「言ってごらん。」
「…不安なんだ。漠然とした不安で潰されそう。」
「うん。」
「この不安を消し去るために未来を無くしてしまいたいんだよ。でも死んだところで迷惑ばかりかけてしまう。生きても死んでも居場所がないような気がするんだ。」
揺れるその目をそっと手で覆う。
「…俺の隣はお前のためだけにある席だから。」
「…んふふ、優しいね、ケイ。」
「お前が1人になろうとしたら絶対に追いかけるからな。」
「…そう。」
手のひらにまつ毛がさわさわとあたり、そっと濡れる。
大人のふりをした彼の本性は未だ幼く愛おしい。