お題:いい加減にしてくれ少し前から、上司に添い寝を頼まれている。ひとりだとうまく眠れない、といつになく弱った声で言われて、風見は自分でいいのかの訝しみつつ、了承したのだった。
命令ではない。「今夜、頼めないか」と電話してくるときの降谷の声は、いつも断られることを怖がっているように聞こえて、そんなに遠慮しなくても、と風見は思う。同意の上だし、セクハラにも当たらないだろう。たぶん。
「日付が変わる頃になるかもしれませんが」
『かまわない。待ってる』
通話が切れたスマホをポケットにしまい、目の前の書類仕事に意識を戻した。
深夜、インターフォンを鳴らすのは憚られる。そろそろ着きますと連絡を入れておいて、合鍵でドアを開けた。
「おかえり」
玄関で出迎えられる。降谷は近ごろ、風見にそう声をかける。
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