炎の熱を識る者よどこで紡がれた物語だったか。神に背いて天界の火を盗み人類へと与えた者がいたらしい。
ならば炎は罪の象徴である。神の意思は絶対で、逆らうなんて以ての外だ。それが私の正義であり、誰もが従うべき規範だとずっと信じている。
かつて、もっとも主の寵愛を受けた天使がいた。輝くような3対の翼は誰をも魅了し包むもので、この方の大きな翼は主の声を届け、我らを統べるためのものだと信じて疑わなかった。
少しだけ不満だったのはいつもどこか遠くを見ていたこと。どれだけ近くにいても視線が交わらない時が、確かにあった。だけど、だけど。私には想像できないような大きなものを背負っているような気がして、声をかけることができなかったの。
ある日のこと。あの方は悪魔にも手を差し伸べたという。主のお怒りを受けるだろうに何故そんなことをしたのか。
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