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    Asalli_

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    Asalli_

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    熱出すひめる
    珍しく吐いてない

    未定冷房の効いた室内で冷えた腕に、肩に寄りかかってきた体温が温かくて心地いい。
    いつもプライベートでさえつんつんしている恋人が珍しく素直に甘えてくるものだから驚いた。こちらの肩に頭を預けていただけの姿勢から、そのままずるずると体制を崩して、俺が膝に置いていたクッションを巻き込んで膝の上に寝転がってくる。

    珍しくオフが重なった平日の今日は、朝から生憎の雨模様だった。出かける予定をキャンセルして家で過ごそうと言うことになったが、見たがっていた映画はもうどうでも良くなったようだ。
    ふかふかのクッションに顔を伏せたままの恋人のサラサラした髪を撫でる。

    「…眠くなっちゃった?」
    触れた体温がいつもよりほんのり温かい気がして、映画の音量を落として尋ねてみる。
    「うん……」
    体を捩ってこちらを向いた瞳がやけに潤んで見えた。予想が外れることを願って白い額に触れる。良くない予想は当たってしまった。
    「メルメル、熱あるじゃん。」
    「……」
    ふい、と顔を背けられた。もはや誰にも見向きもされていない映画の再生を停止して、そっと恋人の額に口付けてみる。
    「…なに」
    普段彼が装う人格らしからぬ、不機嫌そうな返事が返ってきた。自分の前でかなり素を見せるようになったのは喜ばしいことだ。甘えてくるようになったのになんだか素っ気なくて、それがどうしようもなく可愛いのだ。
    端正な顏を見つめて黙り込んでいると、そのまま数度瞬きした瞳はゆっくりと伏せられる。
    「なぁメルメル〜、寝るなら布団行こうぜ〜」
    まるで自分も眠いですと言わんばかりの間延びした声で呼びかけると、彼は目を閉じたままこちらに腕を伸ばしてきた。ハイハイ、抱っこしろって事ね。
    膝の上に横になった体勢のまま、所謂お姫様抱っこで抱き上げる。
    「メルメルは相変わらず羽みてぇに軽いなァ」
    軽口を叩くも返事はなく、蜂蜜を溶かしたみたいな瞳は長い睫毛に縁取られた瞼に隠れたままだった。さっき額に触れた感じ熱は微熱だろうけど、眠いのは本当なのかも知れない。

    できるだけ揺らさないように気をつけて、壊れ物を扱うようにベッドに下ろす。夏用の薄手の布団を足元から引っ張り出して被せた。重力に従って放り出された腕も、そっと掛け布団の中にしまう。抱き上げていた時から、首の辺りに回されていた腕に一切力が入ってないのは感じていた。俺が思っているより具合が悪いのかも知れない。外出をやめたがったのも、体調が悪かったせいか。だとしたら朝から体調がおかしかったのか。言ってくれよ、と思うことしかできないけど今更何を考えても後の祭りだ。

    未だごちゃごちゃと考えようとする思考を振り払って、ベッドサイドの引き出しから体温計を取り出す。
    「熱計れる?俺やっていい?」
    ぐったりしたままだが意識はあるらしい彼が少し頷いたのを確認して、シャツの隙間から手を入れて腋に体温計を挟む。
    ピピピ、と電子音が鳴って抜き取ったそれが示すのは37度後半の発熱だった。高熱という程でもないが、これ以上上がるとキツイだろう。彼は元より平熱の低い方でもある。
    苦しいのか、呼吸が浅いのが気になってワイシャツの胸元はそのまま緩めておくことにした。冷えないように布団を掛けて覆う。
    「…他どっかつらいとこある?」
    「…さむい、頭いたい」
    「毛布持ってくるわ。」
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