わかるわかるわかる。機嫌が良いか悪いか、その理由が何かまで、大体わかる。決して表情に出やすい訳ではないのに尾形の顔と態度で何となく察しがついてしまうのだ。
「おい」
背中に押し付けられた顔。こちらの腰にやんわりと巻き付けてくる腕。それからあからさまにぐりぐりと、擦り付けてくる奴の股間。
多分あまり機嫌は良くない。だから一発やりたい。けれども完全な欲情までには至っていないからどうにか興奮できないかと材料を探している。そんなところだろう。
呆れと憐れみが混ざった曖昧な感情を抱き、宇佐美は宥めるように尾形の腕を数回叩いた。
「おい。やめろ」
「……んだよ」
「何だよはこっちの台詞だ百之助」
言いたいことは山ほどあったがそれすら面倒くさい。
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