Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    渡田辺

    @oh_zin_zi

    Xに棲息している

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 11

    渡田辺

    ☆quiet follow

    擬イライサがモブおじさんをダシに急接近する話です。

    擬イライサがモブおじさんをダシに急接近する話部屋になにかがいる。

    玄関のドアを開け、半身を住処に入れていたイサミは開けたソレを閉じる事も出来ず立ち往生した。
    広くもない住処だ。玄関から廊下が伸びて、左右にそれぞれトイレと風呂場のドア、真っ直ぐ進むと居間に通じるドアがある。二つのドアは閉じているが、真ん中のドアが開いている。
    朝、全てのドアを閉めて住処を出るのがイサミのルーティンだ。
    開いたドアの向こう側の明かりは付いておらず、既に日が沈みかけている外界の暗さも拍車をかけて、居間は暗闇を抱いている。
    明かりがついていない住処に上がるのは常である筈なのに、ドアが一つ開いているだけで違和感が容赦無く背筋を冷やす。暗闇の中で何かが蠢いている気すらして来る。

    ここで居間を睨んでいても何も解決しないと、覚悟を決めて音を立てないよう身体を住処の中へ滑り込ませた。玄関の扉に履いていたスニーカーの一足を挟む。もう一足も脱ぎ、フローリングに一歩踏み出した。ギッだかミシッだか、普段なら鳴った事にも気が付かない様な小さな音が廊下に響いた。気がした。
    どうしてこんな気持ちにならなければいけないのか。イサミは玄関の扉を開けた数十秒前の自分を叱責した。気が付かずにドカドカと上がり込んでしまえば。出る時にドアを閉め忘れただけかもしれないのに。それにすら気が付かずに日常を日常のまま過ごす事が出来ていたかもしれないのに!
    背後の玄関から差し込む細い夕焼けだけをどうにか手繰り寄せる。
    自分の心臓の音も廊下に響いている気すらして来る。
    壁に沿わせた手が電灯のスイッチに触れた。

    「なにしてんの」
    「ゴッッお」

    頭上から不意打ちでかけられた声に飛び上がり、頭頂部が固いものにぶつかった。
    振り向くと声も無く顎を抑えるイーラがいた。

    「イーラ!?すまん、が、お前も悪いな!両成敗だ!!」
    「はあ!?明かりもつけずに玄関でウロウロしてる不審者が居たから声かけたんだけど!?」

    ドンッと鈍い音がして廊下と居間の電気が点いた。イーラが殴る勢いでスイッチを押していた。

    「それは本当にすまない。閉めた筈のドアが開いていて、誰かが侵入したんじゃないかと警戒していたんだ」
    「ドア?…ああ、それ僕だね。はい解決。こんなくっだらない事で騒いでないでよ腹立たしいな」
    「もう一度お願いします」

    イーラと話しながら明るくなった居間の方を振り向く。

    知らない男と目が合った。

    実際には居間の床に横たわった男の見開いたままの目をイサミが視認した。

    「4時間前くらいかなあ。部屋入ったら知らないオッサンが居たから………まあ、いいじゃん。美味いラーメン屋教えてよ」
    「なにもよくないんだ」
    「は?じゃあ面倒だけどあとでポーパルチープム呼ぶよ」
    「いやそういう」
    「そういう事なんだよ」

    「鍵を買い換えるか、僕と一緒に住むか。どうすんの?」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👏❤❤❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    さばを

    DOODLE弟かわいい!って信じ込む兄と下心の弟の裏腹感が書きたくて暇つぶしに書いていたやつ 兄が弟バカすぎるし、弟がかわいすぎるな と思った。
    泥酔「にいさん、すき。」
    幼い顔で、顔を綻ばせて笑う。初めてラウダと出会ってから、もう十年以上は経つが、ラウダの笑顔は、あの時のままなように見えた。あの時からずっと、俺の弟は、世界で一番かわいい。俺たちはもう、二十一才になるけれど、ラウダがかわいい弟なのは変わらないし、好きだと言われたら、照れくささよりも愛おしさが勝ってしまう。でも、こんなふうに笑ったり、素直に俺への好意を伝えてくれたりするのは、今日が久しぶりだった。学生時代のラウダは、俺に対して尊敬してくれていたのは分かるが、小さな頃よりも素直な言葉をぶつけてくれることは少なかった。それも年頃の男だし、仕方のないことだが、やはり少し寂しかったのだ。俺自身も、ラウダに対して、甘えたり、可愛がったりを率先するのは、思春期もあって恥ずかしかった。お互いそう言う態度だったのだから、俺たちが昔のように、近い距離で触れ合うのは難しかったし、諦めてもいたのだ。だけど、今日のラウダはどうだろう。初めてのお酒を飲んだら、すぐに酔っ払ってしまった。その上、俺の肩に頭を乗せて、控えめに俺の手を握りながら、可愛く微笑んでいる。お酒を飲んで、酔っ払った時が本性だという話を間に受けるとするならば、こんなに嬉しいことはないだろう。まだ、俺のことをこんなふうに好きだと思ってくれている弟が、かわいくないわけがない。ただ、酔っ払っているという状況は、あまり良くはない。一杯でこの調子なのだから、かなり酒に弱いし、体調にも響いてしまうだろう。こんな風に、喜んでばかりでは、兄失格である。
    2269