震える指が掴むもの手が震える。
慣れ親しんだ操縦桿はすでにこの世になく、代わりに握るようになったそれを握る手が震える。
視線を周囲に向ける。
誰も気付いていない。
手を握りしめ、ゆっくりと開く。
見詰める先、白んだ指先が赤みを取り戻していく。
手は震えていた。
******
「ノイマン?」
異変に一番に気付くのはチャンドラだろうという確信があった。
見上げた先、眉を寄せたチャンドラがノイマンを見下ろしていた。唇を横に結び、何も言わずにノイマンをただ見下ろしている。
「肩、貸してくれ」
「俺を見上げて言うことじゃないと思うんですけど?」
言いながら、チャンドラはノイマンの前に椅子を引っ張ってきて腰掛ける。背をノイマンに向けて。
「悪い」
「少しも思ってないくせに」
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