Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    krgntl

    @krgntl

    すきなものをかく

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 15

    krgntl

    ☆quiet follow

    magnetロジェD
    書きかけを晒す

    『』「いつまで、この道は続くのだろうな」
    まだらに赤くなった指を小川に浸しながら、Dがぽつりと呟いた。
    ロジェールの手から逃げ出した蝶はDの手を止り木として選び、彼は小さな火傷を負った。幸い今宵の彼らは小川の傍らに腰をすえており、そのせせらぎによって滞りなく応急措置を済ませることができたのだが。
    祝福は遠くなく、聖杯瓶も十分な水量を残している。だが、Dはその小さな傷を癒したくないと考えているようだった。
    空が白み始める頃になるとDは時折、共に歩む道行きに対して不安をこぼしてみせた。
    ロジェールは知っている。二人で歩む時は遠からず終わりを告げ、彼らはそれぞれ違う道を歩むことになるのだと。
    それは互いに譲れぬものがあるからこその別離であり、恐らく二度と歩みを共にすることはない。
    けれど、一度惹かれあった魂はその奥底に繋がりを残す。ロジェールはそう確信していた。
    たとえ遠からず道を別けたとしても、Dと繋いだ絆は……共に歩んだ時間は、消えてなくなりはしない。
    ロジェールは流水に冷えた彼の手を取り、大丈夫だよと囁いた。
    「大した傷じゃない。朝には癒えて、剣を振るえるようになるさ」
    「そんなことは分かっている。俺は」
    Dは白い肩を怒らせ、荒々しく振り向いた。そうしてそのまま、口を噤む。
    ロジェールの頬は乾いていた。褪せ人は涙を流さない。情動から来る涙は溢れることなく、虚空に消えてしまうのが常だった。
    それでも、ロジェールのこころが泣いているのをDは感じ取ってくれたようだった。
    ロジェールはDを抱き寄せ、唇に笑みを乗せる。
    「大丈夫だよ、D。だいじょうぶ」
    「でも、ロジェール」
    「僕たちは繋がっている、それで良いじゃないか」
    微笑むロジェールに気圧されたようにDは息を飲み、瞳を揺らしてみせた。
    彼はきっと泣いていて、こちらが抱くそれよりもずっと強い不安を抱いている。
    その不安を緩和してやることだけが、自分に許された特権であるとロジェールは信じていた。


    *書けたら足します
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤❤❤☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works