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    付き合ってない黒夜久がコンビニで待ち合わせ

    理由がないと会いたいも言えない 『きさまの古典のノートは預かった。返して欲しければやっくんちの最寄り駅のコンビニ集合』


    風呂上がり、何気なく見たスマホには通知が一件。
    いやいや、古典て。明日提出の課題あるじゃねえか、なんで俺のノート誘拐されてんだ、と首を傾げて、思い出す。そう言えば今日の古典の授業のあと、ノート写させてって言われて貸したままだった。あのやろう……! と夜久衛輔は黒いトサカ頭を思い浮かべて舌を打った。
    送信時間をみると現在の時刻より45分前。飛び上がって、濡れている頭もそのままに、家を飛び出した。衛輔こんな時間にどこ行くの、という母親の声に、すぐ帰る! とどなってしまったから、後でこってり怒られること間違いない。それもこれも全部あいつが悪い。
    数時間前に鼻歌まじりに帰ってきた道を、全速力で戻る。つっかけただけの靴がふっとびそうになるが、履き直すのももどかしい。乾きかけていた頭が、汗でまた濡れて行く。せっかく風呂入ったのに、と本日2度目の舌打ちをする。

    「てか、コンビニ、……って、どっ、この!」

     息苦しさを紛らわせたくて、声に出して叫ぶ。するとまるで返事をするようにタイミングよく、手に握りしめたままの端末がピュイッと軽快な口笛の音で通知を知らせた。


    『ローンソのほうで』

     今目の前に見えてきているのは、眩しい赤と緑と白。
    ばかやろう!

    「駅の、反対側っ、じゃねえか……!」

     ◇◆◇◆

    「やっくん走るの好きなの? 部活であんなに走ったのに」
    「はっ、だ、れの……せいで!」

     結局駅を大きく迂回したせいで、相当な距離を走った。盛大に上がった息をそのままに、飄々と缶コーヒー片手に笑う目の前の男を睨む。そして大きく息をついてその場にしゃがみ込んだ。目の前のトサカ……黒尾がその様子を見て声をあげて笑う。

    「こら、ヤンキー座りしないの」
    「うるせえ俺は疲れた」
    「そんな夜久サンに、ほら」

     カサ、とビニールが擦れる音がして、目の前に水滴のついたペットボトルとアイスの入った袋が差し出される。ひったくるようにして袋ごと奪い取ると、中のスポーツドリンクを一気に煽った。渇いてひりつく喉に染み渡る。それを見てまた黒尾が笑った。

    「よく考えたら課題だって明日の朝お前の写せばよかった……俺めっちゃ走り損じゃん……」

     ぼやいてアイスの蓋を開ける。お、ダッツ、と高級アイスに夜久の目が輝いた。散々走らされたし、当然の報酬だろう。遠慮なく口にする。

    「課題は自分でやらないと意味がないんですよォ~」
    「そもそもてめえが借りパクしたんだろうが!」
    「ばれたか。さっき気づいてさ」
    「そん時に電話しろよな! あったかくなってきたとは言え、体冷えんだろ」

     風邪ひいたらどうすんだ、と憤りながら夜久はアイスを口に運ぶ。意識がアイスに向いているせいか、怒る論点がずれてきていることに、彼は気づかない。
     やだもうこの子……と呟いて黒尾は額を手で覆った。やだもう、はこっちのせりふだよばか、と夜久からすかさず答えが返る。はあ、と黒尾はため息をついた。

     「ねえやっくん、アイス一口ちょうだい」
    「ん」

     溶けかけているアイスをスプーンで一口すくい、黒尾に差し出す。口を半開きにした黒尾の顔が近づいて、しかしスプーンを素通りしていく。
     は? と思う間も無く、夜久の視界いっぱいに黒い前髪が広がる。ぼたり、とスプーンから滑り落ちたアイスが地面に落ちる音がした。続いて、ちゅ、と謎の音。最後にダッツうま、という黒尾の声が聞こえて、視界にいつものニヤニヤ顔が戻ってきた。

    「あ、やっべ終電くる。じゃあまた明日の朝練で」

     何事もなかったかのように黒尾が言い、猫背で駅へと遠ざかっていく。スプーンを差し出したままの無様な姿勢で夜久はそれを見送り、黒尾の背中が見えなくなる頃、明日の朝ぜってー蹴る、とじわじわと赤くなる顔をうつむかせた。

     そして、両者が肝心な古典のノートが帰ってきてきないと気づくのは、夜久が家に帰り母親に懇々と説教を受ける頃。黒尾は家の鍵を開けた頃。

    『きさまの古典のノートは預かった。返して欲しければやっくんちの最寄り駅のコンビニ集合』


    風呂上がり、何気なく見たスマホには通知が一件。
    いやいや、古典て。明日提出の課題あるじゃねえか、なんで俺のノート誘拐されてんだ、と首を傾げて、思い出す。そう言えば今日の古典の授業のあと、ノート写させてって言われて貸したままだった。あのやろう……! と夜久衛輔は黒いトサカ頭を思い浮かべて舌を打った。
    送信時間をみると現在の時刻より45分前。飛び上がって、濡れている頭もそのままに、家を飛び出した。衛輔こんな時間にどこ行くの、という母親の声に、すぐ帰る! とどなってしまったから、後でこってり怒られること間違いない。それもこれも全部あいつが悪い。
    数時間前に鼻歌まじりに帰ってきた道を、全速力で戻る。つっかけただけの靴がふっとびそうになるが、履き直すのももどかしい。乾きかけていた頭が、汗でまた濡れて行く。せっかく風呂入ったのに、と本日2度目の舌打ちをする。

    「てか、コンビニ、……って、どっ、この!」

     息苦しさを紛らわせたくて、声に出して叫ぶ。するとまるで返事をするようにタイミングよく、手に握りしめたままの端末がピュイッと軽快な口笛の音で通知を知らせた。


    『ローンソのほうで』

     今目の前に見えてきているのは、眩しい赤と緑と白。
    ばかやろう!

    「駅の、反対側っ、じゃねえか……!」

     ◇◆◇◆

    「やっくん走るの好きなの? 部活であんなに走ったのに」
    「はっ、だ、れの……せいで!」

     結局駅を大きく迂回したせいで、相当な距離を走った。盛大に上がった息をそのままに、飄々と缶コーヒー片手に笑う目の前の男を睨む。そして大きく息をついてその場にしゃがみ込んだ。目の前のトサカ……黒尾がその様子を見て声をあげて笑う。

    「こら、ヤンキー座りしないの」
    「うるせえ俺は疲れた」
    「そんな夜久サンに、ほら」

     カサ、とビニールが擦れる音がして、目の前に水滴のついたペットボトルとアイスの入った袋が差し出される。ひったくるようにして袋ごと奪い取ると、中のスポーツドリンクを一気に煽った。渇いてひりつく喉に染み渡る。それを見てまた黒尾が笑った。

    「よく考えたら課題だって明日の朝お前の写せばよかった……俺めっちゃ走り損じゃん……」

     ぼやいてアイスの蓋を開ける。お、ダッツ、と高級アイスに夜久の目が輝いた。散々走らされたし、当然の報酬だろう。遠慮なく口にする。

    「課題は自分でやらないと意味がないんですよォ~」
    「そもそもてめえが借りパクしたんだろうが!」
    「ばれたか。さっき気づいてさ」
    「そん時に電話しろよな! あったかくなってきたとは言え、体冷えんだろ」

     風邪ひいたらどうすんだ、と憤りながら夜久はアイスを口に運ぶ。意識がアイスに向いているせいか、怒る論点がずれてきていることに、彼は気づかない。
     やだもうこの子……と呟いて黒尾は額を手で覆った。やだもう、はこっちのせりふだよばか、と夜久からすかさず答えが返る。はあ、と黒尾はため息をついた。

     「ねえやっくん、アイス一口ちょうだい」
    「ん」

     溶けかけているアイスをスプーンで一口すくい、黒尾に差し出す。口を半開きにした黒尾の顔が近づいて、しかしスプーンを素通りしていく。
     は? と思う間も無く、夜久の視界いっぱいに黒い前髪が広がる。ぼたり、とスプーンから滑り落ちたアイスが地面に落ちる音がした。続いて、ちゅ、と謎の音。最後にダッツうま、という黒尾の声が聞こえて、視界にいつものニヤニヤ顔が戻ってきた。

    「あ、やっべ終電くる。じゃあまた明日の朝練で」

     何事もなかったかのように黒尾が言い、猫背で駅へと遠ざかっていく。スプーンを差し出したままの無様な姿勢で夜久はそれを見送り、黒尾の背中が見えなくなる頃、明日の朝ぜってー蹴る、とじわじわと赤くなる顔をうつむかせた。

     そして、両者が肝心な古典のノートが帰ってきてきないと気づくのは、夜久が家に帰り母親に懇々と説教を受ける頃。黒尾は家の鍵を開けた頃。
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