さみしいプルルプルル。
ギンタは携帯を鳴らす。
相手は同居してる義理の兄のアルヴィス。
『どうした、ギンタ?』
今日はアルヴィスは大学の飲み会だ。
高校生のギンタは大人しくしてるほかない。
「別に」
『ダンナさんは今日は出張だろう?本当に一人で大丈夫なのか?』
「高校生だよ。留守番ぐらいできるさ!」
さみしい。
その言葉の飲み込んで、ギンタは強がる。
アルヴィスはダンナの友人の子だ。
親を亡くして天涯孤独になった彼を、ダンナが引き取った。
初めて兄が出来ると聞いたギンタは拗ねたものだ。
一人っ子のギンタに取っては、兄貴なんか欲しくない。
母親が居ないのもあって父親の愛情は独占していたい。
だがその思いはアルヴィスを見て瞬時に変わった。
綺麗な人、だった。
親の遺産もあり、大学進学コースだったアルヴィスは公立の大学に進んだ。
そして初めての飲み会。
何か面白くない。
だから何となく電話したのだが、かと言って話すことがある訳ではない。
結局切ることになって、ギンタは不貞腐れた。
好き。
その想いが膨れ上がってる。
アルヴィスを独占したいのだ。
彼を独り占めしたい。
父親にも邪魔されたくない。
二人だけになりたい。
その時だった。
カチャリ。
鍵が開く音がした。
「ギンタ」
アルヴィスがそこにいた。
手には惣菜が幾つかあった。
「アルヴィス」
「抜けてきた」
彼は端的に言った。
「ギンタは一人はつまらないだろう?」
ダンナさんが留守なの忘れてた。
そう言って彼は綺麗に笑う。
ギンタの大好きな笑顔。
「焼き鳥とちょっとした小料理作ってもらってきた」
「いいのかよ、抜けて」
睨まれるぞ。
そう言ったギンタにアルヴィスは困ったように笑いながらも言った。
「ギンタにさみしい思いさせるよりはいい」
食べるから皿を持ってこい。
アルヴィスが台を拭きながら言う。
ギンタは食器棚から皿を出すと、彼に尋ねた。
「オレ、お前のこと好きだぞ!」
「わかったわかった」
そういう彼はきっとわかってない。
手のかかる弟としか見られてない。
悔しいけど、それが現実。
でもいつか。
いつかは追い抜いて振り返らせてみせるから。
ギンタはそう誓いながら、食卓に皿を並べて箸をアルヴィスに手渡した。
「いただきます」