恋と知るまであと、 真っ昼間からリビングのソファに押し倒され、アルバーンはまずいことになったと笑顔の仮面を貼り付ける。正直なところ、こんな状況下でも身の危険は感じていなかった。危害を加えられることはないだろうし、貞操の心配もまあない。では何がまずいかというと、
「よくもまあ俺とひとつ屋根の下に暮らしててそんな雑な扱いしてくれたものだね」
美容に人一倍気を使っている相手に己のスキンケア事情がバレてしまったことだ。
実のところ、アルバーンは自分の行動はごくごく普通のことだと思っていた。ベッドから這い出して、寝ぼけた頭で洗面台に向かい、冷たい水でワシャワシャと顔を洗ってようやく目を覚ます。その後はフェイスタオルでごしごしと拭いてはいおしまい。ルーティンとも言えない起床後の行動。だが、それが少数派なのだと気付いたのは阿鼻叫喚とも言えるコメント欄の反応を見てのことだった。
2002