ナイショ話 雨彦さんの家でレポートの宿題と戦っていた。なぜここでやっているかと言うと、世間では夏休みが始まったのだ。図書館も事務所も常に人が溢れている。その若々しいオーラが眩しく感じつつも、ひとりで静かに課題に向き合いたい僕は、逃げるようにして雨彦さんの家へと流れ着いたのだった。
「自宅では捗らないかい?」
「兄さんが早めの夏休みでねー。ゆっくり寝かせてあげたくて」
「なるほど。兄貴想いだな」
「近所のカフェも満員で騒がしくて」
街が賑やかになることはいいことだ、活気にあふれて物流が回る。この世界が華やいでいくのだから。ただちょっと、いつも木陰にいたかった僕にとって、木陰まで陽気な雰囲気が流れてくると、息苦しくなってしまうのだ。
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