※ほんのりホラー風味
昼過ぎから私室前の縁側に二人並んで腰かけ、他愛ない会話を楽しんでいた。
暫くして清麿がうとうと船を漕ぎはじめたので、肩を貸して寝かし付けてやった。そのうち、頭が重さに耐えきれずに段々とずり落ちていき、今はもう膝枕の状態である。
すっかり冷めたお茶を啜っていると、何処からか子供遊びの歌が聞こえる。粟田口の短刀らの声にも聞こえるが、それはどこか歪んだ響きで鼓膜を震わせた。
かってうれしい はないちもんめ
まけてくやしい はないちもんめ
耳障りな歌以外には何も聞こえない。先ほどまで美しかったはずの夕日は血に染まったように赤黒く、風情の欠片もなかった。
ずり……ずり……と何かが這う音がする。床下には僅かな光も通さないほどの闇が広がっていた。その暗がりの中から、枯木のようなものが這い出て来る。骨と皮だけの人の手だった。
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