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    エヌ原

    @ns_64_ggg

    SideMの朱玄のオタク 旗レジェアルテと猪狩礼生くんも好きです 字と絵とまんがをやる

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    エヌ原

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    パイレーツの出合いパターンのハギレが出てきたので出しておく

    無題1年に一度か二度、ジーンが舟ッ縁で背中丸めて泣いている日があって、航海士とかも声かけようとすると仕事もどれや!ってどやされて近寄れずにいるんだが、ザックはその理由を知っていて、きょうはブラックのお袋さんが死んだ日くらい冷える朝だ、と言葉には出さずに屈めたブラックの背中を眺める


    カシラはジーンを船に載せる前にジーンと名乗るひょろっとしたガキが今まで何してたかを調べ尽くした それから灯台の記録守りと話をつけてジーンが生まれた日、ジーンの親が死んだ日の記録を探させた。その日の天気を修道士どもに尋ねた。そうして集めた資料を机上に叩きつけて、占星術師にこの切れ味鋭い薄い刃が、うまく折れずに脂ぎった肉をかっ捌けるかきいた。

    占星術師はこの黒くて暗い刃は磨けば光るといった。磨くのは鍛錬ではなく人と潮風だといった。硬質で折れそうな刃は血で糊塗されてしたたかになるだろうと言った。ザックからかっぱいできた宝物や武器弾薬や人の資源、水に食糧の説明を受けていたとき占星術師はただ笑っていたが、ザックがその後ろに身を隠すように座ってたひょろっとした青年未満の若さの男を前に出したとき、占星術師は哄笑して「ああ、おまえ、武器になる気になったかい、それならもう1番いい武器におなりだね。ザックから教わることは何もないよ、この子はこのまま撓めず武器として育てるといいよ」とけらけら笑い、ジーンに「あんたに要るのは甲板で滑らない靴、肩口を守る革の鎧。剣を振るっても破れない手の皮、それからその生っ白い首を焼かないために布でもぶら下げておきな」と笑った。ジーンが言われたことをぶつぶつ復唱する間にザックは占星術師とキャビンに降りる。そこで略取品の酒を好きに選ばせ、新鮮ではないが肉からよく塩をもみ出してスープに旨味だけうつしたものに、別の塩漬け肉をこちらも下処理をしていれて煮る。青みが欲しいけどクズ野菜も貴重品だからすりおろした芋でとろみをつけ、ポタージュ風にしたものが占星術師とザックの前に置かれる。占星術師が適当に選んだ赤ワインを木のマグで煽りながらザックはあいつ、どうだ、と水を向ける。
    「船長あんたいちばんいい品を持って帰ったねえ。こいつは愚鈍に見せかけてるけど、愚鈍じゃないからお前らの船のやり口にイライラしてる。それを抱えるってあんたの判断は気持ちがいい。瀉血が進めば組織はうまくいくはずた。あとあたしが1番気になるのは、このガキが船で180度視点が変わって、陸にいる慎み深いこぢんまりした家で暮らす人たちを見た時に、今まで通り船のほうに怒れるのか、だよね」
    「ジーンは賢い。頭がキレるのもあるが、陸の人間の考え方も海の人間の考え方もどちらもできて使い分けられる。ウチにはそういうやつはいねえ。コウモリ野郎って陰口叩かれるかも知れねえが、ジーンの嗅覚と、もちろん研究結果や腕っ節、クソ度胸、あれは……オレの船にふさわしい」
    「決まってんなら呼ばないでよ」
    「オレの独断で呼んでもあいつは来ない。人々が信奉する小さな星占いに肩を叩かれてなら来る」
    「面倒だねえ」
    「知らなかったのか? あいつ偏屈だぞ」
    ザックが鼻で笑うと占い師は渋そうな顔をして、意趣返しのように一言を放った。
    「偏屈なんだから見張ってないとうっかり死ぬよ」
    その発想はまるでザックになく、しばらく中空を眺めていたが、やがてザックの中にある欲の内炎期間がジーンにはなく、なにもかもを吸収して飲み下すようなジーンのありかたの危うさを、止めるよう頼まれた、いや止められないのであれば手は出すなと、懇願するように釘を刺されたのだと気づいた。
    それでザックの腹は座った。家とは名ばかりの岩陰に棲んでいた男を船に乗せる気になった。
    オレがいればもっと強くなる男が一人船に増える。これほど冒険が愉快になりそうな予兆はない。
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    エヌ原

    DONEアイドルマスターSideM古論クリスに感情があるモブシリーズ4/5
    図書館の女 玄関に山と積まれた新聞の束を回収して、一番最初に開くのはスポーツ新聞だ。うちの館ではニッカンとスポニチをとっている。プロ野球も釣りも競馬も関係ない、後ろから開いて、芸能欄のほんの小さな四角形。そこにあの人はいる。
     最初に出会ったのはこの図書館でだった。私は時給980円で働いている。図書館司書になるためには実務経験が三年必要で、高卒で働いていた書店を思い切ってやめて司書補になり、前より安い給料で派遣として働き始めたのは本をめぐる資本主義に飽き飽きしてしまったからだ。
     べつに司書になったからって明るい未来が約束されているわけではない。いま公共の図書館スタッフはほとんどが今のわたしと同じ派遣で、司書資格があるからといって、いいことといえば時給が20円上がる程度だ。わたしはたまたま大学図書館に派遣されて、そこから2年、働いている。大学図書館というのは普通の図書館とはちょっと違うらしい。ここが一館目のわたしにはよくわからないけれど、まあ当然エプロンシアターとか絵本の選書なんかはないし、代わりに専門書とか外国の学術誌の整理がある。でもそれらの多くは正職員がきめることで、わたしはブックカバーをどれだけ速くかけられるかとか、学生の延滞にたいしてなるべく穏当なメールを書けるかとか、たまにあるレファレンス業務を国会図書館データベースと首ったけでこなすとか、そういうところだけを見られている。わたしもとにかく3年を過ごせればよかった。最初はほんとうにそう思っていた。
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    エヌ原

    DONEアイドルマスターSideM古論クリスへ感情があるモブシリーズ3/5
    大学職員の男 秋は忙しい。学祭があるからでもあるが、うちの大学では建前上は学生が運営しているので、せいぜいセキュリティに口を出す程度でいい。まず九月入学、卒業、編入の手続きがある。それから院試まわりの諸々、教科書販売のテントの手配、それに夏休みボケで学生証をなくしただとか履修登録を忘れただとかいう学生どもの対応、研究にかかりっきりで第一回の講義の準備ができてないから休講にしたいという教授の言い訳、ひたすらどうでもいいことの処理、エトセトラエトセトラ。おれはもちうるかぎりの愛校精神を発揮して手続きにあたるが、古いWindowsはかりかりと音を立てるばかりでちっとも前に進まない。すみませんねえ、今印刷出ますから。言いながらおれは笑顔を浮かべるのにいいかげん飽きている。おまえら、もうガッコ来なくていいよ。そんなにつらいなら。いやなら。おれはそう思いながら学割証明書を発行するためのパスワードを忘れたという学生に、いまだペーパーベースのパスワード再発行申請書を差し出す。本人確認は学生証でするが、受験の時に撮ったらしい詰襟黒髪の証明写真と、目の前でぐちぐち言いながらきたねえ字で名前を書いているピンク頭が同一人物かどうかはおれにはわからん。
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