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    エヌ原

    @ns_64_ggg

    SideMの朱玄のオタク 旗レジェアルテと猪狩礼生くんも好きです 字と絵とまんがをやる

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    エヌ原

    DONEアイドルマスターSideM古論クリスに感情があるモブシリーズ4/5
    図書館の女 玄関に山と積まれた新聞の束を回収して、一番最初に開くのはスポーツ新聞だ。うちの館ではニッカンとスポニチをとっている。プロ野球も釣りも競馬も関係ない、後ろから開いて、芸能欄のほんの小さな四角形。そこにあの人はいる。
     最初に出会ったのはこの図書館でだった。私は時給980円で働いている。図書館司書になるためには実務経験が三年必要で、高卒で働いていた書店を思い切ってやめて司書補になり、前より安い給料で派遣として働き始めたのは本をめぐる資本主義に飽き飽きしてしまったからだ。
     べつに司書になったからって明るい未来が約束されているわけではない。いま公共の図書館スタッフはほとんどが今のわたしと同じ派遣で、司書資格があるからといって、いいことといえば時給が20円上がる程度だ。わたしはたまたま大学図書館に派遣されて、そこから2年、働いている。大学図書館というのは普通の図書館とはちょっと違うらしい。ここが一館目のわたしにはよくわからないけれど、まあ当然エプロンシアターとか絵本の選書なんかはないし、代わりに専門書とか外国の学術誌の整理がある。でもそれらの多くは正職員がきめることで、わたしはブックカバーをどれだけ速くかけられるかとか、学生の延滞にたいしてなるべく穏当なメールを書けるかとか、たまにあるレファレンス業務を国会図書館データベースと首ったけでこなすとか、そういうところだけを見られている。わたしもとにかく3年を過ごせればよかった。最初はほんとうにそう思っていた。
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    エヌ原

    DONEアイドルマスターSideM古論クリスへ感情があるモブシリーズ3/5
    大学職員の男 秋は忙しい。学祭があるからでもあるが、うちの大学では建前上は学生が運営しているので、せいぜいセキュリティに口を出す程度でいい。まず九月入学、卒業、編入の手続きがある。それから院試まわりの諸々、教科書販売のテントの手配、それに夏休みボケで学生証をなくしただとか履修登録を忘れただとかいう学生どもの対応、研究にかかりっきりで第一回の講義の準備ができてないから休講にしたいという教授の言い訳、ひたすらどうでもいいことの処理、エトセトラエトセトラ。おれはもちうるかぎりの愛校精神を発揮して手続きにあたるが、古いWindowsはかりかりと音を立てるばかりでちっとも前に進まない。すみませんねえ、今印刷出ますから。言いながらおれは笑顔を浮かべるのにいいかげん飽きている。おまえら、もうガッコ来なくていいよ。そんなにつらいなら。いやなら。おれはそう思いながら学割証明書を発行するためのパスワードを忘れたという学生に、いまだペーパーベースのパスワード再発行申請書を差し出す。本人確認は学生証でするが、受験の時に撮ったらしい詰襟黒髪の証明写真と、目の前でぐちぐち言いながらきたねえ字で名前を書いているピンク頭が同一人物かどうかはおれにはわからん。
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    エヌ原

    DONEスチパン時空朱玄の3話目の前半。相変わらず酒とか煙草とか違法薬物がある
    酩酊(上) その夜紅井は静まった庁内でひとりで仕事を片付けていた。例の爆発騒ぎから一週間。黒野の要請に応えて庁内のかなりの人数を動かした紅井は、薬物流通の大元を断てたと、本来黒野が受け取るべきのぶんの賞賛と、相応の紙仕事を受け取った。昼間は別の仕事で外を駆けずり回っているので、自然と机に向かうのは夜になる。冷え込む時期ではないからいいものの、机の下の足はじわじわ冷えて固まりつつある。紅井は行儀の悪さは承知で靴紐を解き、足をブーツから引っこ抜く。強張った指を動かしてほぐしながら、空いた左手でくるぶしの辺りをさする。質の悪い綿の靴下が摩擦でじんわり温まってようやく人心地がつく。
     黒野が決めた解決法は衛生局にも消防庁にも良くは思われない筋書きで、その煽りをモロに受けたのが紅井だ。日々損壊した建物の賠償をどうするだ、煤煙で真っ黒になった周囲の清掃をどうするだ、おおよそ警察官とは思えない書類に向き合い、相棒が起こした爆発をヤクの売人どものせいにする物語を書き続けている。齟齬があれば上長からすぐに書き直しを命じられるので、今書いている書類ももう三度目になる。冒頭は諳んじられるくらいには書き飽きた。紅井はがりがりとペン先で紙の表面を削りながら書き進める。容疑者乙は、爆発物を、捜査の妨害のために、倉庫に保管しており。時計がぼーんと半時を知らせて、凝り固まった肩に手をやりながら仰ぎ見ると二二時半を回っている。朝から歩き通し、昼飯もろくに食わずにこの時間まで粘った。集中力が全身から失せるのを感じ、今日はもう無理だと自分に言い訳をする。書き途中の文章を句点まで終えて、紅井はペン先を拭った。
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    エヌ原

    DONE成立してる315時空の朱玄
    聖ヴァレンティヌスの祝福 朱雀は憂鬱な気持ちで眼を開ける。静まった二月の朝はキンと冷えていて本当なら気持ちの良い目覚めのはずだ。布団の中にしまいこんでいた手を出すと寒さに肌が総毛立つ。この澄んだ温度の中でする筋トレが朱雀は好きだった。だが今日は話は別だ。待ち構えるものを考えるほどベッドから降りるのが億劫で寝返りを打つと足が掛け布団から飛び出したので、慌てて膝を曲げて温もりの中にしまい込む。蹴り溜めた毛布が足首に絡んでその中にいたらしいにゃこが抗議の声を上げる。朱雀は情けない気持ちになって、枕元に置いた携帯に手を伸ばす。
     二月十四日。バレンタインデー。少し前までは自分と無縁だったイベントは今や恐怖の対象だ。事務所にはすでにダンボール数箱ものチョコレートが届いている。先月末のサイン会でもたくさんの可愛らしい紙袋を差し入れてもらった。プロデューサーからはチョコレートは校外では絶対に受け取るなと釘を刺されているが、英雄や誠司に道で急に女にチョコを突きつけられる恐ろしさを滔々と語られた後ではあまり意味がない。少し前には冬馬からデビューすると高校ですら大変な目にあうのだと脅された。ガチ恋と呼びなされる女たちの良識に期待するなと真顔で言う彼の顔は間違いなく歴戦の勇士のそれだった。だから朱雀は昨日の夜起きたら十五日になっているように祈ったのだが、残念ながらそんな幸運には恵まれなかった。
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