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    たぶん男性向け以外はこちらに。予定は未定。

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    上百合/百合の日/ワンドロ的なやつ

    星に手が届く場所上条当麻が小萌先生のありがたいお説教から解放されてひとり教室に戻る頃、傾いた陽の光がダイレクトに教室中をオレンジ色に照らしていた。一緒に職員室を飛び出した悪友たちの姿も側にはなく、静かな教室にはひとつの人影だけが残っていた。
    勝手に人の席に座って勝手に眠っている女の子。うっかり伸ばしかけた右手を触れる寸前で押し留めて、どうやって声をかけようか、迷っているうちに人影が動いた。もたついている間に自力で目覚めてくれたらしい。

    「……ン? どうしたの、上条くン」
    「あ、いや、ええと」
    「ちゅーしたくなった?」
    「違、……うけど、ちゅーはしたい」

    ン、と両手を広げて目を閉じる彼女の求めるがまま、身を屈めて唇に触れる。キスをしてからそういえばここが教室だったことを思い出したが、すぐに誰もいないからいいかと開き直った。先日付き合い始めた彼女より優先すべき事項が今この場にあるとは思えなかった。

    「付き合ってるンだし、勝手にしていいのに」
    「勝手にはしないだろ、付き合ってても」

    理不尽な理由で唇を尖らせている彼女が座る席、つまり上条の席の前の椅子を借用し座る。まだ少し眠たそうな鈴科が瞼を擦りながらちょいちょい、と鈴科が学ランの袖を引くので顔を近付けると、鈴科の方からキスをされた。

    「私は勝手にするけど?」

    唇が離れてから一言、そう言って満足そうに笑っている。俺の彼女がこんなに可愛くて大丈夫なのだろうか。大丈夫だと言えば大丈夫だし、大丈夫じゃないと言えば大丈夫じゃない。なんというか、浮かれているのだと思う。でも仕方ないだろう、彼女がこんなに可愛いのだから。

    「鈴科にされても嬉しいだけじゃん」
    「私だって上条くンにされたら嬉しいよ?」
    「え」

    がしゃん。思わず落とした学生鞄が落ちた弾みで蓋が開き中身が飛び散っていたけれど、あまりにも些事だ。だって今、とんでもないことを言われたのではないか?そんな、男なら誰しもが期待してしまうような、夢みたいなセリフを言われたような。
    あわあわと見るからに慌てた上条を、呆れたような鈴科の視線が貫く。今取り乱している内心をなんとなく悟っているのだろう。

    「言っとくけど、彼氏だから嬉しいンだよ?」
    「あ、ああ、そっか、彼氏、彼氏かあ……」
    「……上条くン、私の彼氏って自覚ある?」
    「なかったけど、今出てきた、自覚……」

    それならいいよ、と鈴科が笑う。遊ぶように机の上で跳ねる細い指にそっと触れると、鈴科も指を重ねてくれる。指を絡めて引き寄せると、鈴科も指を絡めて握り返してくれる。勝手にしているようで、ひとつひとつ鈴科が確認をして許してくれているみたいだった。

    「手、伸ばしていいんだ、彼氏だと」
    「ふふ、いいンじゃない?」

    右手を伸ばす。夕陽の差し込む窓際で、きらきら眩しく光を反射する鈴科の髪に指が届く。毛先が耳を掠めたのか、鈴科はわずかに身を捩って笑っていた。さらさらと流れる髪をかき分けて進み、触れた後頭部を引き寄せるようにしてもう一度キスをする。
    一番星が瞬き始めるより少し前。上条の手の中に確かに輝く星があった。
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