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    Aym(エイム)

    @Aym1659_aucr

    描きたいものを描いているだけのアカです。
    エログロありそれ以外もあり

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    Aym(エイム)

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    精神的に弱って自暴自棄になるSFBFとそれを必死に止めるCurseの話

    自AU兄弟世界線でのお話(HTBFは出ない)。割とまだ出してないCurseやSFの設定とかが知れるっちゃ知れます。
    ※ちょっとだけ自傷行為の描写アリ
    文章を書く練習も兼ねてで半分勢いで書いたものなので、文面おかしい所がもしあったらさりげなく流しといてください。

    「…」
    暗い部屋の中でベッドに横になり、腕をじっと見つめるSFBF。それを掴む右手はぐっと強く握られ、震えていた。
    「SF~?」
    「ッ…!?」
    部屋に義理の兄であるCurseが入ってくる。咄嗟に腕を隠すSF。その様子を察していながらも、気にせずに彼に近付きベッドの端に座る。付近にはいつでも外出できるよう、彼がいつも着ているコートと武器の装着されたベルトが置いてあった。そこに装備されているはずのナイフが見当たらなかった事を、Curseはすぐに気が付いたが、いつも通りSFに接する。
    「今日はどうも体調が悪いみたいだな~?腹でも壊したか?」
    「…そう、だな。最近生活リズムが乱れてるからかもな。」
    「なら、ちゃんと寝ないとな。」
    そう言ってさりげなくSFが常につけている機器に手を近づけるが、彼はCurseの手を咄嗟に叩き取り外す事を拒否した。険しい顔をしこちらに鋭い目を向ける彼の姿にCurseは少し圧倒される。無意識に兄を拒絶した事に気が付きSFは一瞬驚き目を見開くがすぐに背けた。
    「わ、悪い兄貴…この機器は外して欲しくないんだ。」
    「いや、俺も悪かった。」
    先程の行動に驚くものの、自分も少し踏み入り過ぎたかと反省し近くにあった椅子を持って来てそこに座る。SFは布団にくるまり、Curseから背を向ける形で横になっていた。今日のSFはやけに様子がおかしいように見えた。いつもより苛立っているように見える。今まで機器を取り外そうとしてあそこまで必死に拒絶したことは無かった。彼自身の体調の事も懸念した末睡眠時はできる限り外すようにはしていたのだが、今日は一段と外す気配が無い。まるで外される事で何か都合の悪い事でもあるかのようだった。
    「怖いのか?」
    「何が。」
    「それを外されるのが。…それとも、その腕か?」
    布団越しに体がびくついたのが見えた。SFのつけている機器は、PHLemonの発明した細胞活性化特殊装置。脳細胞の稼働率を向上させて第六感を発動させるだけでなく、体の損傷の修復を早める効果がある。その機器さえ使えば、たとえ自身の腕に自傷行為を行っていたとしても、いずれすぐに回復して悟られないのだろう。だが、相手をよく見ているCurseには見え透いた隠し事だった。
    「あんまり自分の身体を雑に扱うなよ?まだまだ人生これからだし、できる事、やりたい事は沢山あるんだからな。」
    「…」
    「だから…な。もう少し、自分の命を——」
    手を伸ばしSFの方に触れようとした瞬間、SFは右手でその手を強く掴みずっと布団の中に隠されていた左手を出して殴り掛かった。顔面寸前の所でCurseはその手を押さえる。
    「…やっぱりそうか。」
    彼の左腕は血塗れだった。大量に作られた切り傷から血が滴り落ち、シーツを真っ赤に染め上げていた。その上に、見当たらなかったナイフが血に塗れて置かれている。
    「…このまま、知らずにいられたのにな。」
    睨みつけるSFの瞳には怒りも悲しみも、まるで何も無かった。ただそこには、隠し続けていた事がバレてしまった事による恥が滲み出ているように見えた。ナイフに目が行く。腕を振り払って取りに行きたいのだろうが、Curseは放すつもりはない。何度も振り払おうと試みるが、悪魔との根本的な筋力の差がそれを阻止した。
    「くそ、離せ…離せよ…!!」
    「今のアンタが何するか分からないからな。」
    ベッドにSFを仰向けに無理やり寝かし上に跨る。視界の端に入ったナイフや付近に置かれた刀を尻尾で持ち、できる限り離した所に置いた。動きを完全に封じられた後も必死にもがき放せと訴える彼の姿に、Curseは胸が苦しくなる。何が彼をこうさせたのか、それはもう知っている。肩で息をしながら、SFは睨みつけた。
    「いつまでこうして俺を拘束してる気なんだよ…今更弟扱いでもしてどうにかなると思うなよ。」
    「SF、何度も言ってるだろ。あれはお前の所為じゃない。今までGFもPicoも言ってくれてただろ。」
    押さえつけられた手がぐっと握られる。まだ塞がっていない傷口から血が滲み出た。
    「お前に何が分かる…」
    機器がバチリと音を立て、電気が弾けて光った。一瞬機器の様子がおかしい事に目が行ったCurseの隙を突いてSFは両足を曲げ、腹に蹴りを入れた。呻いて腕を押さえる力が弱まった事を知ると振り払い、ベッドから転がり落ちてナイフを取りに行く。ハッと気付きCurseは尻尾をSFの足に巻き付けナイフを取らせまいと抵抗する。尻尾で彼を引き摺りながら必死に押さえようとするが、SFはCurseの頭を蹴りながら這いつくばってナイフを手に取ろうとする。流石に少しイラついたCurseは、SFの足を掴み、思い切り振り上げて床に叩きつけた。
    「あがっ…!」
    床にうずくまり悶えるSFの姿を見下ろす。何が彼をここまで変えたのか、いや、追い詰めたのか。
    「…分かるかよ。」
    「?」
    呻き声を上げながらぽつりと呟く。
    「好きで、人を殺してる訳…あるかよ…っ」
    何となく、彼が追い詰められている原因が分かった気がしていた。
    彼は、自分で決断した事に追い詰められているのだ。

    GFから彼の過去の話は聞いた事がある。
    およそ2年前、SFは当時街中では人気のある歌手だった。ギターも弾く事の出来る彼は、ステージの上でどれだけ輝いていただろう。そんなある日、彼のライブ中にとあるテロ組織の連中が攻撃を仕掛け、観客は大パニックになった。SF達は辛うじて避難できたが、避難する直前、SFは目の前で観客達が皆殺しにされていく様子を目の当たりにした。大人も子供も関係無く無差別に襲われ、殺される姿に彼は恐怖した。
    その事件から、SFは変わった。あの光景をトラウマに思いながらも、もう二度とこのような事件は起こさせない。二度と自分の様にトラウマを抱える被害者が現れないように、彼は裏の道へと進んだ。GFもPicoもそんな彼の決意に応え、共に同じ道を進む事にしたのだ。
    だがその決断によって数多くの人間を殺していく度に良心の呵責に苛まれ、徐々に積み重なる罪悪感が彼の心を蝕んでいった。

    それが今、限界に達して自らの命に手を出そうとしている。必死に止めようとしても諦める気がしない。床に叩きつけ体への強い衝撃でしばらく動けないと思っていたCurseの判断は甘かった。ふっと体の力を抜いた瞬間を見ていたのか、SFは無理矢理体を起こし低い体勢でCurseの足元をすり抜け、ナイフを手に取る。振り向いた時には彼の持つナイフは首の近くにまで当てられていた。
    「…!!!」
    瞬間的に自分の悪魔としての身体能力を開放させ、目にも止まらぬ速さでSFの目の前に接近しナイフを叩き落とす。そして一発彼の頬に平手打ちをした。大きな音が部屋に響き、直後静寂が辺りを満たす。あまりの事に衝撃を受けたのかSFはしばらく固まっていたが、やがて頬にゆっくりと手を触れた。赤く腫れあがり痛みがじんわりと現れてくる。自分はどうして兄にぶたれたのか全く理解出来ていない様子で彼の表情を見て目を大きく開く。Curseは、ひどく怒っていた。いつもの優しい眼差しは無く、ただ怒りに満ちた目をSFに向けていた。その黒い瞳の中に、少し赤く光るものがあったかのように見える。
    「…馬鹿野郎!!!」
    あり得ないくらい大声で怒鳴るCurseにSFは圧倒され体をびくつかせる。それは悪魔としての迫力があったから震えたのではない。一人の兄として、家族として必死に怒って怒鳴り声をあげている事に対する震えだった。強く握りしめる彼の拳から血が滴っていた。
    「お前が決めたやるべき事を、何もやり遂げないまま適当に放って、お前の決意に応えてここまで一緒に付いてきてくれたアイツらの優しさを、信頼を…何より自分の命を無下にする馬鹿がどこにいるんだ!!」
    SFは隈の濃くなった目で彼を見つめる。放り出されたナイフに目が行かず、何故かCurseから目が離せない、いや目を離してはいけないようなそんな気がした。
    「いいか。この際お前に言ってやる。…お前の決意した事は、そう簡単には上手くいかない。例えGFやPicoやレモン頭らと協力して全力で犯罪者共をぶちのめそうが、だ。お前はそんな世界に足を踏み入れてるんだ。それにお前1人が今ここで死んだところで、何も状況なんて良くならない。何の解決にも、プラスにもならない。むしろ無駄にアイツらに精神的なダメージを与えて追い詰めるだけだ。」
    少し深く息を吸う。あまりに必死に言葉を発したようで呼吸を忘れていたのだろう。一呼吸おいて続ける。
    「死んだら迷惑がかからなくなるとか、楽になるとか思ってたら大間違いだ。…世の中、残念な事にそう都合良くはいかないもんでな。」
    そう言って後はしばらく沈黙が続いた。SFの方は震えているようで、拳を少しづつ握りしめていく。その度に、床を僅かにひっかく音が小さく鳴り響いた。SFがようやく口を開いたのはそれから数十秒した後だった。震えた声でCurseに投げかけた言葉は、疑問だった。
    「…なんで。生まれて数年しか生きてないお前が。俺よりもずっと幼いはずのお前が…!なんで、こんな…っ違うんだよ…」
    半べそをかきながら訴えかける彼の姿は惨めにも哀れにも見えた。その様子を見降ろしながら、Curseは溜息をつく。
    「…まず涙を拭け。一旦落ち着いてからだ。」

    少し落ち着いたのか、ベッドに深く座るSFの表情は先程よりかは険しさが薄れているように見えた。向かいの椅子に座り、じっと彼の表情を見る。そしてふと思いCurseはSFの左手を持ち腕を確認する。SFは遅れて反応し抵抗しようとするが、体に力が入らないのか拒否する事を諦めた。左腕の傷はある程度塞がっているようだった。PHLemonの作った機器にしては大したものだと思い、そっと手を放す。
    「…大丈夫そうか?」
    「…」
    こくりと頷く。
    「なら、話の続きでもするか。」
    一呼吸おいてCurseは口を開いた。
    「俺には、一応父親って存在はいた。俺を呪いで生み出し、BFに憑りついてGFとPicoを殺すよう命令した張本人だ。」
    「父親…」
    「そして、俺が最初に殺した人間だ。」
    「!!」
    流石にその言葉に驚いたSFは不意に顔を上げCurseの表情を見た。彼の表情はいつもより真剣で、でもそこに悲しみや苦しさといった感情は見えないように感じた。彼の驚きとは反して話を続ける。
    「俺は今までこの町の人達を守る為に裏に潜んでいる多くの犯罪者を殺してきた。皮肉だよな、人を守る為に人を殺さないといけないだなんて。」
    CurseとSFの間にあった圧倒的な差の正体は、自身の決意によって引き起こされる事に立ち向かう覚悟だった。生まれた時から殺しの命令を受けたものの、BF達との関わりを持つ内に彼自身の中に自我が宿っていった。自分で考える力を持ち、自分の意思で彼らと過ごす日々は、恐らく生まれて初めて生きる喜びを感じていただろう。そんな中で命令に背いている事に気が付いた術者、彼の父はCurseを失敗作と呼びエクソシスト達に彼を始末する事を命令した。父に呪いを教えたAnnoyingLemonもまた、BF達を殺そうと手を出し、ある時BFはANLemonによって重傷を負う。あり得ないほどにあふれかえる怒りと憎しみで我を忘れそうになるCurseを、BFはそっと手を添え優しく抑えた。
    「…その時から、俺はBF達の為なら…BFの為なら、この命に賭けても守るとそう決意した。絶対に失う訳にはいかない。絶対にあいつ等を、俺の家族を、誰かの手で失う訳にはいかないってな。だからこの町の犯罪率だけでも下げられるよう色々やってきた。俺が裏社会や悪魔達の世界を行き来して警察に情報提供をしたり、その情報を使って密売人や犯罪集団の奴らの居場所を特定して一網打尽にする事だってあったさ。自分にできる事を全部やって、今の町が少しでも平穏になったんだと思うと、ほっとするよ。」
    そう言って微笑むと、Curseは窓の外をふと見る。SFも振り返り外の様子を見ると、月夜に照らされた住宅街は静寂が漂っていた。この静寂という名の平和が、彼の努力の結果なのかと思うと少し遠い存在の様にも思える。それでも気にせず英雄面もせずに町の人々と分け隔てなく接しているのは、彼の純真で真っ直ぐな心を表しているのだろうと感じた。
    ふと、SFは彼に問うた。
    「その決意は、いつからなんだ?」
    「…術者を殺す、その前から。BFが傷付けられたあの日から、全部決めた。後悔は無いよ。」
    そう言ってSFに笑顔を向けるCurseの姿は、年齢と反してずっと大人に見えた。
    「俺は今まで、目的の為に自分にできる事を見つけてやって来た。今度はお前が自分にできる事をする番だ。」
    差し伸ばす彼の手にSFは戸惑いを見せ、手を取る事に迷いを見せる。
    「何を…したらいいんだ。俺に、できる事なんて…」
    「今のお前にできる事は、過去と向き合う事だ。」
    今できる事、しなければならない事は、彼が彼自身のトラウマと向き合い受け入れる事だった。今のSFは過去に多くの観客達の命を失ってしまった事をずっと悔やんでいる。しかしその悔やみや自身に対する無力感が、今でも彼を追い詰め沈めている重りとなっていた。この重りは、いずれ必ず外さなければならないと以前からCurseは思っていた。
    「どれだけ悔やんでも、彼等の命は戻って来ない。お前が一番分かっている事だろ、SF。今できるのは、それを少しずつでも受け入れていって前を向く事だ。」
    差し伸ばす手をそっとSFの手に当て、そっと握る。
    「…あとは?受け入れて、その後に何が残る?」
    「あるさ。彼らの死を悔やむぐらい、お前には誰かを想う優しさがある。その優しさを、今生きている他の誰かに分けてやってくれ。…まぁ、まずはお前自身の回復からだけどな。」
    「…治るのか?」
    「治るさ。お前が治したいと、そう思うのなら。」
    そう言って、手を少し強く握った。彼の手は赤黒く鋭い爪の生えた、まさしく悪魔というべき手をしているというのに、握る手の感触は温かく心地が良かった。彼の優しさが直接伝わっているかのようで、SFは手を見つめる。
    「俺の知人に、心療内科の医者がいるんだ。そこで彼とカウンセリングをしながら、薬を飲んでゆっくり治していこう。今度連れてくよ。」
    「…どうして」
    「?」
    SFの目からぽろぽろと涙が流れてくる。溢れて止まらない涙は彼の手を濡らし、その手はぐっと強く握っていた。
    「…どうして、血も繋がっていない、赤の他人を…っ。どうして…そこまで…」
    Curseは黙ったまま、SFを抱き寄せ互いの額をこつんと当てた。そして微笑みながらそっと呟く。
    「だって、俺の大事な弟だから。」
    からかう訳でも取り繕った言葉をかけるでもなく、彼の本心そのままの言葉を、弟の自分を愛してくれている事を聴いてSFは声をあげて泣く事しかできなかった。そんなSFをCurseはただ黙って抱き締め頭を優しく撫でていた。
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