ひとりぼっち(今までのこと) 彼に会うまでは、俺はひとりぼっちだった。友人は離れていったし、親戚も離れていったし、父と付き合いがあった人々は軒並み自分たちは違うと主張して俺から離れていった。別にそれが悲しいのじゃあない。俺は子どもで、まだ人が離れていくことの意味がわかっていなかった。学校でいじめられてもそうか、としか思わなかった。それよりも母の病状が心配で、学校でぼろぼろにされたかばんを担いで、チューブと繋がった母の病室を訪れた。彼女のユーストレス欠乏症がそれほど進んでいなかった頃、母は時折俺の勉強をみてくれ、それが終われば歌を歌い、遊んでくれた。身体は動かしにくかったから、今までのように一緒にかけっこはしてくれなかったけれど、俺はそれで充分だった。でも、それもある日突然終わってしまった。母がついに意識を手放し、ユーストレス欠乏症患者がそうであるように、現実を捨てた日に、俺は正真正銘のひとりぼっちになってしまったのだった。
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