07【ぬくもり】肌を刺す冷気を帯びた朝。どれだけ暖かな布団に包まって眠っていたとしても、ふと己の脚先が冷えた感覚に微睡みを邪魔される。
だが、一度覚醒してしまえば了見が再び意識を手放して眠りに落ちることは難しい。布団の中で冷えたつま先を擦り合わせながら、薄目で時計を確認する。
部屋の中が薄暗いのでそうとは分かっていたものの、見ればやはり、起床予定時間にはまだ随分と余裕がある。隣人の恋人からはすうすうと規則正しい寝息が聞こえていて、当たり前のように眠っていられる相手が少しだけ恨めしくも思えた。
「……」
最低限の衣擦れの音に留めたつもりだったが、静かな室内には思いのほか大きく響いた。隣人──尊は、ほんのうっすらとだが口を緩ませながら、「んん……」とむずがるような声を上げる。
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