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    目は口ほどに なマレロロ
    ※ロロがほぼ喋りません
    ※事後表現あり

    #マレウス・ドラコニア
    malleusDraconia
    #ロロ・フランム
    rolloFlamm.
    #マレロロ

    甘え上手 ぎぃ、とベッドの軋む音が荒い呼吸を一瞬だけ掻き消す。
    「はぁっ……」
     それは僕が身体を起こした時になった音で、月明かりの中、僕の下でうつ伏せになり同じく息を切らせている彼を見つめた。

     白い肌は既に蒸気し、しっとり濡れている。襟足から首の麓には花弁が散って色鮮やかに染まっていた。彼を形取る線はしなやかな弧を描き、それを目で追えば先程までシーツを強く握りしめていた手が力無く横たわっている。少し覗く横顔も、やはり虚な表情で息を繰り返していた。

    「フランム、大丈夫か」
     柔らかく頭を撫でても、消えそうな吐息がかろうじて聞こえる程度だった。いつもなら、途切れる事なく文句を言いながら手を叩かれるというのに。
     今宵は仕舞いにしよう、と改めて心うちで頷く。思えば部屋を訪れた時から、明らかに彼は疲弊していた。目の隈は一層濃く、初めに映し出された肌は青白さが勝っていた。想像より鍛えられた身体も、今日は覇気を感じられない。

     彼もまた、儚いヒトの子。
     その身体は労ってやらねば。

     空中に手をかざし、清潔なタオルを現すと大きく広げて細い背中に掛けてやる。後は水分だな、流石に僕も喉が渇いてしまった。
     ベッドから降りて準備をしようとした、その時。

     ———きゅ、と羽織っていたローブの裾を掴まれた。

    「おっと」
     予期していなかったので、引かれるまま姿勢が傾いた。ベッドの端に腰を下ろすと突っ伏した姿勢の、彼の指が確かに僕のローブを摘んでいる。
    「……どうした?」
     覗くように首を傾けると、潤んだ瞳と視線がぶつかった。淡い光がそこに反射して、瞬く星のように見える。

     暗い色の中に、輝く粒が浮かんでは揺れて。それは僕に、真夜中の遥か遠くで燃える炎を思わせた。

     息を潜めてじっと見つめていると、彼は少し戸惑うように瞬きした後に掴む指をもどかしそうに擦り合わせた。それから名残惜しそうに布から離してしまう。行き場を無くした手は僕の手首を滑って下へと落ちた。
    「……」
     それでも何か諦めきれないのだろう、僕の小指を弄びながら恨めしげに彼はその目で睨んできた。
    「黙っていてはわからないぞ」
     何を言いたいのかはとうに見通していたが、わざとらしくとぼけて見せると端正な表情が歪む。ぎり、と爪を立てられても僕は微笑む事をやめずに彼の口が開く時を待つ。

     が、しかし。

    「……ゔぅ」
     何か言おうと息を吸い込んだ唇は、結局低く唸っただけで固く結ばれてしまった。悔しげに弱々しく爪は僕の小指を引っ掻いて、そのままシーツへ戻っていく。ついには耐えきれなかった雫が目尻から、火照った彼の頬をつぅと流れた。

     あぁ、可哀想に。
     こんなにも己が昂ぶろうと、この人間は誰にも縋れず、甘えられないのだ。

    「フランム」
     解放されて自由になった手で涙を拭き、そっと頬を包んでやる。少々抵抗の色を見せた彼だったが、顔を近づければ俯いていた首が持ち上がった。
    「すまない、いじめ過ぎた。……お前の口から聞きたくて」
     親指の腹で温かな、きめ細かい肌をなぞる。揺れる瞳がほんの少しだけ緊張を溶かして僕を写す。
     人の姿をした龍は、今までにない慈愛を孕んだ微笑みを湛えていた。

    「大丈夫、ここには僕しかいない。お前を否定する者も笑う者も、何もいないよ」

     だから———どうか聞かせて。
     お前の望みを、教えておくれ。

    「……!」
     手を伸ばしてきた彼の、その口に耳を寄せる。
     辿々しく伝えられた言葉に、僕は更に顔を綻ばせた。

    「わかった。ではもう少しだけ」

     細い顎に指を添え、既に濡れた唇に再び潤いを与える。
     互いの奥底に、熱が戻るのを感じた。
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