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    wamanaua

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    骨を食べるグエぴのオルグエ

     俺はオルコットを見つけ出し、口説き倒して、SPとして起用した。俺が信頼することで、弟ともなんとかうまくやれるようになっていた。ただ、彼が頑丈であるということを変に過信してしまっていた。彼が「自分で人間ドックに行く」という言葉、「大丈夫だった」という言葉を鵜呑みにし、彼がひとつも病院なんかにいっていないということに気がつかなかった。むしろ知りたくなかったのかもしれない。誰かの体が悪いという事に、ずっと苦しんでいたから。
     彼は旧式のガンドを長年使っていた。メンテナンスもうまくやれておらず、劣悪な環境で生きることで順当に寿命を削っていた。今から最新型のガンドに交換しようが意味がない。オルコットは諦めて死ぬという。その先に息子達がいるという。
     俺よりあとに死んで欲しいと喚く俺の頭を撫でて、「年寄りから先に死ぬものだ。親もそうだ。子供が先に死んじまう方がおかしいんだよ」と彼は言った。俺は父の手のひらを思い出そうとした。あれよりも今のオルコットの手はとてもかさついて、細く軽い。
     オルコットは地球で死にたいと言っていたので、俺も長期の休暇をとって、ついていった。いつまでたっても元気なので休暇がたりないと笑いたかった。それでも誠実すぎるオルコットは、俺の休みの間に事をすませようとでもいうのか、転げ落ちるように衰弱していった。そしてオルコットはあっけなく死んでしまった。少し苦しんで。
     その体の殆どはガンドだ。頭と首、右肩から腕、それだけが生身。内臓系もほとんどガンドだという。この体でオルコットは大勢を殺し、また助け、俺を救ってくれた。ガンドは人殺しの機械ではなく、人の命を生むものである。俺は一つ確信をした。
     どれだけ旧式だったとしても、ガンドはリサイクルのために引き取られる。今の世の中、循環が全てだ。オルコットだったものは本当に少なくなってしまった。遺体も通常通りの埋葬……分解葬を行うべきだが、俺はどうしても、彼を火に焼べたかった。
     彼の息子は焼かれて死んだという。しかし、人の魂はその煙で天に昇るのだとも聞いた。オルコットも同じところに昇って欲しかった。
     今どき遺体をわざわざ焼くなんて馬鹿のすることだ。環境にも悪い。そもそもオルコットの主義に反するかもしれない。それでも俺はそうしたかった。
     彼の知り合いに連絡を取ろうとしたが、オルコットは最後まで連絡先を教えてくれなかったし、死んでからも誰も来なかった。別れはすんでいたのだろうか。
     数少ない遺体の焼き場をなんとか探して、処理してもらう。煙は天高く昇っていった。先で家族や仲間に会えただろうか。あとには生き残った俺と魂の抜けた体が残る。
     俺を救って、俺を撫でてくれた部分だけを焼いた。分かっていた。それでもあまりにも小さくなった体に驚いてしまった。
     俺は衝動で、焼かれて残った灰を指で掬い、舐めた。灰の味がする。これがオルコットだった。今はもうただの灰だった。
     俺は、父の灰すら目にすることはなかったと思い出した。
     灰を集めて小さい小さい壺に詰める。この壺は本来なら墓に詰めるらしいが、今の地球に墓などない。俺は家に持ち帰ると決めた。
     業者が俺に語りかけた。「昔、ここら辺では骨を食べる風習があったらしいですよ。死者を悼み共にいるため」
     俺はオルコットを縛り付けたいだけだろうか。
     宇宙に戻り、俺が壺を持ち帰ったのを見たラウダは、悲しそうな顔をして言った。
    「オルコットさんはご家族のところに帰れたのかな」
     俺は、そんなの嫌だと泣いてしまいたかったが、「きっとな」と少し笑むことしかできなかった。
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