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    wamanaua

    @wamanaua

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    wamanaua

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    「今日のお前は一段と可愛いな」とかいうお題のオルグエ。SP時空。アホ話

    「お前に言っておかなきゃいけないことがある」
     あっ別れ話だ、と確信した。周囲の音が全て遠く感じる。俺はさっぱり動けなくなってしまった。
     たまのたまにある休日、男二人で『そういうこと』をするために買った馬鹿でかいソファで、さぁヤろうか……と愛人を押し倒そうとしたその時、んなことを言われてしまった。
     俺を軌道エレベーターのふもとまで送ってくれ、そのまま別れたオルコットをなんとか探し出してSPに無理やりしてからはや数年。これまたなんとかねじ伏せて(無理だ、俺のほうが制圧される)説き伏せて(無理だ、あっちの方が弁が立つ)暴れ倒して(これが正しい、俺が無茶苦茶を言った)肉体関係にもつれ込んで、次は心の関係まで……と思っていた矢先にこれ。もうダメかもしれない。弟よ、骨は拾ってほしい。
    「おい、……何か勘違いしてないか」
     そりゃまぁ最初から無理な関係ではある。俺はお前の父親じゃない〜だの、普段からうだうだ言われちゃいるが、俺のことは息子のようにみているのがひしひしと伝わってくる。歳の差だとか性別だとか、立場の違いだとか、多分この人が恋愛として見るにはちょっと『違い』過ぎるのだろう。お情けで抱いてもらってるようなものだ。
    「聞け」
     そもそも『俺が』親父として見ているのだろう、とこの人は思っている。まぁそういうところもあるっちゃあるとは思う。でも俺は親父とセックスしようなんて思ったことはない。下卑た目で俺を見てくる融資元の部屋に喜び勇んで行くこともないので、年上好きでもない。初恋は女の子だったし……。抜きネタは……なんだっけ……巨乳の淫乱教師モノだっけ……あれは後輩が持ってきたAVだっけ……。
     俺を抱こうとシャツを脱ぐ……その時に見える肌とガンドの境目、縫合痕に舌を這わせて捩じ込ませようとか、明日は休みじゃグフフと思いながら尻にローションを詰めてプラグで栓をして、シャワーを浴びようとしているところに押しかけようとか、そんなんこの人にしか思わないしやらない。いつも冷静で乱れない彼が、この時だけは息荒くのしかかってくれるのが大好きで嬉しくてたまらないから、もっと興奮させたい、抱き潰されたいと硬い太ももに爪を立てるのもこの人にしかやれない。
     どう考えても俺は性的にオルコットを見ているのだ。そりゃまぁ頭撫でられて嬉しかったり抱きしめられて嬉しかったり褒められて嬉しかったりもするが、それは父子でもできるスキンシップってだけで誰でもやるはずだ。俺はちゃんとこの人自身を好きに……待ってくれそういう俺の態度が別れ話に繋がるんじゃないのか。あっ待って。
    「おい、話を聞けと」
    「えっちだからか」
    「ハァ?」
    「俺がえっちでつつしみないからダメか!?」
    「何言ってんだお前」
     毎晩毎晩尻の穴が縦に割れてぐじゅぐじゅ鳴るまで抱いてもらえるようになるため、どれだけ苦労したと思っていやがる。と身振り手振りで伝えて、チョップでだまらされた。この人のチョップは脳が抉られるので辛い。
    「でも俺は別れないからな。絶対別れない。どうしたらいい? えっち我慢したらいいのか? それともさらにえっちになったらいいのか? もうなんでもいいよ。とにかく別れたくない。愛人のままでいい! 恋人なんて高望み言わないからともかく俺を捨てなモガ」
    「……お前……ハァ……これだから……」
     大きな手で口を塞がれて数十秒。窒息しかけで暴れられなくなってようやく離された。酸素を求めるばかりで喋れやしない俺の頭を撫でながら、どこか遠くを見ながら……話し始めた。
    「俺が話しておかなきゃいけなかったのは……お前のそのパーカーのことだ」
    「……返さないぞ!」
    「今更いい」
     俺が着ているのはもちろん、オルコットから貰った黒いパーカーだ。今でもブカブカで、ずっと着続けているから穴も増えてズタボロになってきてはいるが、だからなんだと言うのだ。
     軌道エレベーターまで送り届けてくれる……となった際に、血やらなにやらで作業着がベトベトの俺に、投げ渡すようにくれたのがこれだった。これしか着れるようなものがない、と言われて、あの時は申し訳なさばかりだった。しかし旅の間に、オルコットへの気持ちが大きくなるのと同時に、パーカーもまた俺の支えとなっていった。
     ズボンの方は膝が大きく擦り切れ、靴下も穴が空いてしまったが、補修して大事に持っている。だけどやっぱりパーカーがいい。もう俺の臭いばかりがついてしまったが、袖あたりを嗅いだりすると、埃くささの中にある彼の匂いを感じたりして、オルコットに守られているのだ……と思える。
     これがなくちゃ頑張れてこれなかったのだ、俺は。
    「……お前がそれを気に入ってくれたのは、まぁいい。だが臭いを嗅ぐのは」
    「だってあんたの匂いがする気がして」
    「それだよ」
     またため息を付きやがる。オルコットは呆れたように頭を抱えた。
     睨むように俺を見て、言う。
    「……それが『俺の』服だと思ってるのか」
    「…………えっ」
     え?
    「だって、あんたがくれたんだから」
    「着られそうな服を備品からあさって来たんだ。……それは俺のじゃない」
    「だ、誰の」
    「ナジのだ」
     ナジ?
    「あんたの彼氏!?」
    「違う!」
     聞くに、これはオルコットの戦友の、テロリストのリーダーの私服で、ズボンもそうで、靴下とブーツと鞄までそうで、つまり、全部、俺は、ナジっていうおっさんの臭いに興奮して、こう、自慰までしていたと。
    「詐欺だ!」
    「お前が勝手に勘違いして盛り上がってただけだろ」
    「俺はつまりナジって奴に包まれて……抱かれてたも同義じゃないか!?」
    「やめろ気持ち悪い!」
     もうびっくりしてしまって、俺はパーカーをスポーンと脱いでしまった。あんなに大好きな第2の彼氏だったパーカーがいまやナジ? とかいうなんか知らん大柄のおっさんになってしまった。地球にはこんな服を着るでかい奴が大勢いるのか!? 
     泣きそう。これまで俺が縋り付いてきたものって何?
    「……最初に言っておけばよかった」
     俺の頭を撫でるその手がもう信じられない。振り払っても、また撫でてくる。愛情に満ちた優しい手つきだ。畜生信じられなくても俺はやっぱりオルコットが好きだ。
    「お前だけが微妙な気分になってると思うな……お前がそのパーカーに縋り付いて、ボロッボロになるまで着ているのを見て、俺がどんな気持ちだったと思う?」
     涙まじりの視界で見上げてみれば、オルコットが珍しいぐらいの苦々しい顔で、俺を見ている。どんな気持ちだったかって、そりゃ……。
    「滑稽?」
    「お前俺をなんだと……だから、嫉妬だよ」
     思わず目を見開く。涙が溢れる。オルコットは右手の親指で涙を拭ってくれた。
     ええ? まさか。
    「嫉妬だ、嫉妬。こんなおっさんが、着ている服と元の持ち主に嫉妬だぞ。俺の方が滑稽だろうが」
     これまでで一番でかくて深くて長いため息をついて、オルコットは左手で顔を覆っていた。頭はまた右手で撫でられている。器用だな。
     嫉妬。オルコットが。まさかそんな気持ちになる人だとは思わなかった。いつも余裕があって、俺を支え導いてくれる人だと思った。俺が勝手に懸想して七転八倒しているだけだと。
     それが、何だ。俺がその……知らん……ナジとかいう知らんおっさんの臭いを嗅いでへへへと笑っているのに、俺に気づかれないところで、嫉妬していたと。それは。
    「あんた……可愛いな」
    「お前の! そういう! 調子に乗った態度が! 俺は!」
    「ごめん! ごめんなさい!」
     頭を片手とはいえ締め上げないでほしい。
     ああ、涙もすっとひき、もう笑顔しかない。なんだ、そうか、そっか! いや〜なんだ〜! 俺のこと結構好きじゃ〜ん!
    「もうそんなパーカー捨てろ、流石に見苦しい。プライベートとはいえCEOが着るような状態じゃない」
    「嫉妬か!?」
    「ああそうだ嫉妬だ! 嫉妬でいい! いいからもうそれは捨てろ! イライラするんだよそれ着てたナジを思い出して!」
    「なんだ〜! はやく言えよ〜!」
    「いつかは捨てるだろうと思ってたのに捨てないお前が悪い!」
    「だってあんたからのもの、全部捨てたくないだろ!? あはは」
     安心して大笑いしていると、オルコットもちょっと笑った。はあよかった。絶対別れてやらねえ。万事解決。腹が痛い。
    「おい、笑いすぎだ」
    「はは、いやあ、だって、ははは」
    「ああもう、ほら、黙れ」
     軽いキスまでしてくれる。そうしたらもう笑ってられなくなるもので、一度、二度と触れて、唇を開いて舌を触れさせれば、あとはもうなし崩しだ。
     脱いで腹の上に置いていたパーカーを払い落とされて、また笑ってしまった。ありがとうパーカー。お前は確かに俺を守ってくれてたんだけど。

    「しかし、愛人か、お前にとって俺はそんなものか」
    「えっ」
     どうしてこのまんま性行為してよかったねってしてくれないのか。両の手で頬を撫でてくれるけれど、いつものように安心なんかできやしない。もう怖い。愛人なんて言いましたっけ。言った気がする。もう終わりだ。
    「俺が息子ぐらいの年頃のお前に手を出すのにどんな覚悟があったか、まぁ、知らんだろうな」
    「ええっ」
    「伝え足りないか、……愛してると」
    「クェッ」
     なんと左の手袋を外しているため、金属の冷たさがダイレクトに伝わってくるが、顔の熱は高まるばかりだ。え!?
     そんなん俺は、全然、いや、俺のことを好きだろうなと少しは思っていたがでもきっと勘違いだろうなと思っていたので、寝屋できく言葉もまぁ言うよなこういう雰囲気だったらという奴だと、そんな、俺を、あい、あ、
     オルコットは色気たっぷりのいい顔をしている。そうだこの人は妻帯者だったんだ。そういう言葉だって言い慣れてんだ。ムカつく! すごいもう、駄目!
    「お前は? ……別れる前に聞いてやるよ」
    「別れたくないが!?」
    「どうして」
    「愛しているからだが!?」
     俺もそうだ、と抱きしめられた。なんかもう……なんか、いいや! ずっと前から付き合ってたらしいが今日から新生お付き合いです! ハッピー! 俺って幸せでもいいんだ! ありがとう世界! ありがとう誰だか知らんおっさんのパーカー! いやそれは嫌だ。あとでオルコットの私服貰おう。というか裸で寒いからはやくヤりたい。CEOの休日は短いのだ。
     
    「……今日のお前は一段と可愛いな。毎日別れ話をしてもいいか」
    「それやったら俺から別れるからな! いいな!?」
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    Replies from the creator

    wamanaua

    DOODLEオルグエ。
    お題「記憶喪失になった恋人に、何も伝えず関係をリセットするべきか悩む話」
    バチクソ人間不信でラウぴとかにすこぶる冷たく当たるグエぴがいます。
    花霞 あなたはいったい誰なのですか? と真顔で聞かれるのはさすがにこたえる。
     オルコットが負傷した。パーティー中、整備不良か恨みか何か、天井から照明が落ちてきて、それから俺を庇ったせいだった。普段ならケガをしようがピンシャンしている男だったが、あたりどころが悪かったらしい。俺に覆い被さって動かなくなったオルコットの背をさすりながら、彼の死んだ息子や妻に祈っていた。どうか彼を救ってください。そして彼を連れて行かないでください、と。
     幸い命は助かった。ただ記憶が無事ではなかった。病院で目を覚ました彼を見て思わず流れた涙は、俺のことなんぞちっとも覚えていません、という態度にすぐ引っ込んでしまった。
     まるでフィクションのような記憶喪失だ。自分のことは覚えていない。過去もよく分からない。ただ身に染み付いた動作がある。フォークは持てる。トイレには行ける。モビルスーツは知らない。ガンドは知らない。ジェタークも知らない。俺のことなんかさっぱり。地球も、テロも、亡くした家族のことも……。
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