四月めも四月歌舞伎座公演に関するいろいろ

〇作品の種類
・古典…役者を見せる、理屈で考えてはいけない
時代物：江戸時代の人にとっての時代劇、源平合戦を題材にしたものなど。
世話物：江戸時代の人にとっての現代劇、町人が活躍、心中物なども。
所作事：舞踊作品。

・新歌舞伎
明治～第二次世界大戦頃までに書かれた作品。
それまでの狂言作者ではなく演劇改良運動に刺激を受けた文学者や小説家の作品。
（例：坪内逍遥『沓手鳥孤城落月（ほととぎすこじょうのらくげつ）』/菊池寛/谷崎潤一郎）
芸術性を求め、西洋演劇のような動きの少ない会話劇。

・松羽目物（所作事に含まれるがあえて別に記載）
能舞台のような老松がバックにある簡素な舞台で行われる能や狂言に由来する作品。

黒猫の眼　ヒミツ、編　ボクはクロネ。大帝国劇場に住み着いている黒猫だ。
　中庭には犬がいることが多いから、ボクは専ら屋根の上での生活だ。
　ここでの生活は面白くて、ボクはとても気に入っているよ。
　
　
　月が綺麗な夜だった。ボクは天から優しい光を与えてくれる満月を見上げ、うん、と伸びをする……と、気配。
　こんな遅い時間に出入りするなんて、心当たりはひとりしかいない。すなわち、白スーツの男、加山だ。
　裏口に滑り込むように姿を消したその影を見やり、ふと思う。
（加山って、何者なんだ……？）
　改めて思うと、ボクは加山のことだけはさっぱり分からない。劇場に出入りするニンゲンは、花組の女優たちに雑用をする大神、事務の三人娘に支配人と副支配人、あとは舞台の裏方たち。たくさんのヒトがいるが、加山だけは何をしているのかさっぱり分からない。