仕事を終えて、自宅に戻ったふたり。
アオイは静かだった。いつもより少し。けれどその沈黙には、どこか火照ったような気配が混じっている。
帰宅してからずっと、アオイはマスミに口をきかない。
視線も合わせない。ソファに座っても微妙な距離を保ったまま、スマホをいじるふり。
「……怒ってるの?」
マスミの問いに、返事はない。
だが肩がぴくりと揺れたのを見逃すほど、彼は鈍くない。
「アオイちゃん」
何も言わずに、彼女の手首を掴んで、するりと自分の脚の間に収めた。
抵抗しようとしたのは最初の数秒だけで、体勢を作られるまま、アオイは背中を預けさせられる。
マスミの両腕が、彼女のウエストを優しく、でも逃がさないように抱きしめた。
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