ドロシー 赤毛の少女はある日ポートマフィアに殺された。訳もわからないまま銃を腹に三発と足に一発を撃ち込まれ、コンクリートに倒れ頭を強かに打ち付け死んだ。
その少女は癖のある赤毛を耳の後ろで左右にくくり、水色のワンピースを着て、真っ赤な靴を履いていた。
わたし死んじゃうのかしら、とぼんやりと空を見上げると、彼女の仲間が顔を覗き込み何事か話しかけている。何も聞こえない。やっぱりわたし死ぬんじゃないかしら、と思った。
仲間の後ろに広がる空は青かった。
かつての仲間であり、少女が恋していた少年の瞳と同じ青だった。
その少年の名前は中原中也という。
魔法使いのような不思議な力を遣う彼はとても強かった。だから恋をしていた。
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