辞世の言葉〜帰終さんの言葉を魈君が聞いてたver〜
「あなたが魈君ね」
帝君に助けられ、名を与えられてからしばらくのこと。帝君の下に馳せ参じれば、朗らかな声に名を呼ばれた。
「貴方は」
「はじめまして。私は帰終。よろしくね」
差し出された手は温かくて、その温度を忘れることは今後無いのだと思う。
「魈君、久しぶり」
帰終様にお会いするのは、帝君にお呼びだてされた時か、留雲借風真君に呼ばれた時が多かった。彼女は留雲借風真君とは友人のような間柄らしく、よく我には理解し得ないカラクリで競っては、帝君の頭を悩ませているようだった。
「お久しぶりです、帰終様」
「そんなに畏まらなくて良いのよ。私は貴方の主ではないのだから」
手招きをしながら笑う彼女は、いつでも楽しそうだった。表情がコロコロと変わる彼女はいつでも皆の中心にいて、彼女の朗らかさは周りを笑顔にしていたのだと思う。
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